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電話、チャット、SMS、ビデオ通話、画面共有などを単一Zoomプラットフォームでカバー、AI機能も拡充中

顧客体験(CX)向上にもZoomの力を、「Zoom Contact Center」国内提供開始

2023年07月10日 10時30分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「今まではどちらかというと、Zoomを使って従業員どうしで社内会議をやるイメージが強かった。われわれは今回、“ひとつのプラットフォームで人のつながりを無限に広げる”というビジョンを掲げ、従業員だけでなく顧客ともZoomでつながることを実現し、『顧客体験』という新しいエリアにもZoomを広げていきたいと考えている」(ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏)

 ZVC JAPAN(Zoom)は2023年7月6日、コンタクトセンター向けソリューション「Zoom Contact Center」の国内提供開始と、会話型AIチャットボット「Zoom Virtual Agent」日本語版の順次提供開始を発表した。

 同日の記者発表会では、「顧客体験(CX)」と「従業員体験(EX)」の両方を強化する今回の新製品を紹介したほか、統合UC(ユニファイドコミュニケーション)プラットフォームである「Zoomプラットフォーム」の全体像、さらにAIに対するZoomのアプローチについても説明が行われた。

コンタクトセンターソリューション「Zoom Contact Center」の国内提供開始を発表した

ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏、Zoom Video Communications(ZVC) APJカスタマーエクスペリエンス部門責任者のフィリップ・ザミット氏、ZVC JAPAN ZCX技術営業部の深海健一氏、ZVC Zoom Contact Center セールス・GTM責任者のスコット・ブラウン氏

単一のZoomプラットフォームを通じて優れた顧客体験を提供

 冒頭の下垣氏のコメントにもあるように、ZVCでは新しいビジョンとして「One Platform delivering limitless human connection(ひとつのプラットフォームで無限の人のつながりを)」という言葉を掲げている。企業内、あるいはパートナー企業間でのやり取りにとどまらず、企業と顧客(特に一般消費者)とのつながりもZoomでカバーしていく方針だ。この新しいビジョンに沿った製品の1つが、今回提供開始したZoom Contact Centerである。

 Zoom Contact Centerは、SaaS型で提供されるコンタクトセンターソリューションだ。同製品のセールス/GTM責任者であるスコット・ブラウン氏によると、米国など海外市場では14カ月前から市場展開をスタートしており、現在までにおよそ500社が導入したという。

 Zoom Contact Centerの特徴は、「Zoom Meetings」や「Zoom Phone」などと同じ単一のZoomプラットフォーム上に構築されており、ビデオ通話(Web会議)や音声通話、チャット、SMSなど複数のチャネル(オムニチャネル)をシームレスに横断しながら、シンプルかつ柔軟に顧客とのコミュニケーションが図れる点だ。これにより、顧客体験と従業員の生産性を同時に向上させることができるとする。

単一プラットフォームで「顧客体験の向上」と「従業員の生産性向上」の両方を同時に実現することを狙う

 ZVCでAPJカスタマーエクスペリエンス部門責任者を務めるフィリップ・ザミット氏によると、各種の調査から、優れた顧客体験を提供することで既存顧客のアドボカシー(“忠誠心”)やロイヤルティが高まり、新たな顧客を獲得するよりも低コストで売上を伸ばすことができることがわかっている。ただし、そうした顧客体験を提供できている例は多くないという。

 「多くの調査によると、『過去1年間で顧客体験が向上した』と感じる消費者は全体の3分の1にすぎず、改善の余地がある。その一方、顧客側も企業側もソーシャルメディア/SNSやビデオといった(新たな)デジタルチャネルでつながりたいという意欲が高まっている。そのため顧客体験向上においては、デジタルテクノロジーが非常に重要なパートナーになる」(ザミット氏)

 さらにザミット氏は、優れた顧客体験を実現するために必須の要素として、特に「パーソナライズされたサービス体験」「ストレスのない(利便性の高い)サービス体験」「親密性の高さ」の3つを挙げた。

 「顧客体験の向上においては、特に最後の『親密性』が一番重要だと考えている。単にお客様とのコネクションを結べばよいというわけではなくて、お客様の状況にあったかたちで親身に寄り添う必要がある。たとえば銀行のコンタクトセンターで、個人情報も含まれる複雑なやり取りをSMSでやりたいというお客様はいないだろう。センシティブな内容であればすぐにボイスコールやビデオコールに切り替えて話をうかがう、それによって親身に寄り添う姿勢を示すことができる」(ザミット氏)

KPMGがまとめた「優れた顧客体験の6つの要素」。ザミット氏は特に重要な要素として、このうちの3つを挙げた

 ザミット氏は、Zoomプラットフォームに統合されたZoom Contact Centerによって、そうした顧客体験が低コストかつスムーズに実現できると強調した。たとえばVirtual Agentやビデオコールといった新しいサービスを取り入れたい場合、まずは大きなコストをかけることなく実験的に導入し、顧客満足度が向上するかどうかを試すことが可能だという。

 ちなみに、すでにサービス提供が始まっている海外市場においては、Zoom Contact Centerを導入した顧客の50%以上がビデオコールによる顧客とのエンゲージメントを実施しているという。「これまでコンタクトセンターでビデオを使うことは非常にまれだったが、その活用が進んでいる。ビデオだけでなく、スクリーンシェアやコ・ブラウズ(共同ブラウジング)など、さまざまな形での顧客エンゲージメントが実現している」(ザミット氏)。

AIチャットボットによる顧客の自己解決支援、他の業務SaaSとの機能連携も

 ZVC JAPAN ZCX技術営業部の深海健一氏は、Zoom Contact Centerが備える数多くの機能からポイントとなるものを紹介した。

 まずは、Zoom Virtual Agentとの連携によるインテリジェントなセルフサービスの実現だ。深海氏によると、すでにコンタクトセンターへの問い合わせの50~60%は、有人対応ではなくAIの無人対応で解決できるという。企業側では人手不足の課題解消につながり、また顧客側でもセルフサービスで迅速に解決できる利便性が享受できる。

 一方で、より複雑な問い合わせになると、今度はコンタクトセンターのナレッジだけでは解決できないこともある。深海氏によると、問い合わせの30~50%はコンタクトセンター以外の社内専門部署/担当者のサポートが必要になるという。そうした場合もZoom MeetingsやZoom Phoneを使ってスムーズにやり取りしたり、必要に応じて顧客との会話に直接参加してもらったりすることができる。

Zoom Contact Center/Zoom Virtual Agentが実現する顧客体験/従業員体験の例

 またZoom Contact Centerは、ServiceNow、Salesforce、Zendeskなど幅広いビジネスアプリとの統合/組み込みが可能になっており、エージェントの業務効率化に役立つと紹介した。

 なお深海氏は、Zoom Contact Centerが実現するものを「真のオムニチャネル」と表現した。あえて「真の」と呼ぶ理由、オムニチャネルを標榜する他社ソリューションとの違いとは何かを質問したところ、ブラウン氏が次のように回答した。

 「オムニチャネルというコンセプトは以前から存在するが、他社ソリューションの多くはテクノロジーを寄せ集めて構成したもので、必ずしもシームレスではなかった。一方で、Zoom Contact Centerは、シームレスなカスタマージャーニーの実現を目標として、クラウドファーストで一から構築したものであり、すべてのアプリケーションがシームレスに統合されている」(ブラウン氏)

 またZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏は、日本市場においては、アウトソーシング型コンタクトセンターが主流を占める業界構造がオムニチャネル実現の“壁”になっており、業界のチェンジマネジメントが必要だと指摘する。大手から中小まで規模を問わず、ワンパッケージのソリューションとして提供できるZoom Contact Centerを市場投入することで、業界とともに構造改革に取り組みたいと抱負を述べた。

* * *

 なお下垣氏は、ZoomにおけるAI活用の取り組みについても紹介した。Zoomでは、異なるAIモデルを組み合わせて利用できる「Federated」、AI組み込み済み製品として提供することで従業員の生産性向上や顧客体験向上に直接資する「Empowering」、そしてプライバシーやセキュリティを保護する「Responsible」の3つの方針を原則としている。このうちFederatedについては、OpenAIやAnthropicといった生成AIベンダーとの協業に基づくモデル、Zoomが独自開発したモデル、顧客自身が独自開発したモデルなどを組み合わせて利用できる特徴がある。

 こうしたAI活用により、生産性向上から顧客体験の向上まで幅広い機能進化が実現していると下垣氏は説明した。なお、AIコンパニオン機能「Zoom IQ」にも生成AI技術が組み込まれており、たとえばWeb会議の内容を要約する機能、チャットのスレッド内容の要約機能などが利用できる。

生成AIをはじめとするさまざまなAI技術も取り込んでいる。Zoomや顧客自身が独自開発したモデルも組み合わせて利用できる

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