先日、福岡・天神で次世代型動画ECアプリ「7sGood」の日本初のポップアップイベントが開催され、そこで販売される商品が多数展示された。ケーブルやモバイルバッテリーでは中国では定番の「Pisen(品勝)」の製品、凝りようから一部界隈で話題になった「Robosen(楽森機器人)」のトランスフォーマーのおもちゃ、それにBluetoothスピーカーやキーボードといったガジェットやペット用品や雑貨など、多様な商品が展示されていた。
中国では若い世代に自社デザインでの製品がブームに
光るイヤホンや猫用自動トイレも注目の製品
こうした中国の商品イコール安かろう悪かろうダサかろうばかりだったのは今や昔。中国国内では「国潮」と呼ばれる、近年盛り上がりを見せる中国メーカーによる中国デザインの製品ブームのもとで、気になるデザインの中国製品が多数登場している。気づいたらアマゾンやアリエクスプレスで中国製品を直輸入で購入しているという人が増えてきたように、普通に魅力的な中国ブランドの製品も出てきた。筆者が訪問した時間帯は女性がグッズストアに来たような感じで見ていたが、筆者不在の時間帯には男性客も多数やってきて気になる商品を食い入るように見ていたという。
7sGoodはスマホ向けのショートムービーアプリの要領で、日本向けに7秒でサッと撮られた縦画面の商品説明動画が出てきて、品定めしたうえで購入できるサービスだ。後述するが、”あくまで現状では”中国商品の販売が中心になっている。
その7sGoodで、大きくスペースを割いて紹介される製品が2つあった。ひとつは「HHO Gene」による光る完全ワイヤレスイヤホン(TWS)「GPods」、もうひとつは「HHO LOVE」による猫用自動トイレ「litter box」と留守番中の猫見守りロボット「O Sitter」だ。
ともにクラウドファンディングのindiegogo(GPods)とKickstarter(litter boxとO Sitter)で注目を集めた製品で、特にGPodsはコンパクトサイズな本体ながら、自由な色で発光させることができるという斬新な仕組みで注目を集めた。税制の違いが理由だが、日本の方が中国での販売価格より安いのもうれしい。
GPodsを実際に触ってみると、近年のアリババで売られているハードウェアの出来が及第点以上であるように、Gpodsの作りも”光る”ギミックを搭載しながら、音質やノイズキャンセリングなどの機能においても高いクオリティーだ。発光については直接まぶしく光るのではなく少しぼやけたような光り方をするので、今どきのゲーミング系製品にありがちなバチバチな明るさは抑えられている。
また“映える”製品なので、ただ光るだけでなく、さらに飾れる専用カバー(シェル)もラインアップにあるなど充実している。ちなみにHHOの社員いわく、「(中国でも売り出されたばかりなので)HHO本社(杭州)のオフィス周辺で光るイヤホンを着用している人はだいたい社員」だそうだ。
企業と企業をつないで新しい形のデジタル製品を作る
7sGood自体もHHOがリリースするサービスだ。つまりHHOはECサービスの7sGoodとGpodsなどの「HHO Gene」シリーズ、スマートペット機器の「HHO LOVE」シリーズという3つの柱からなる企業だ。イヤホンも作ればペット用ロボットも作り、おまけに日本でECサイトも運営している。
このHHOという企業は実はアリババのインスタントメッセンジャー「Dingtalk(釘釘)」事業部の元トップの陳航(別名:無招)氏が立ち上げたベンチャー企業だ。アリババといえば中国を代表するネット企業であり、「Taobao(淘宝)」「Tmall(天猫)」をはじめとした中国を代表するECサービスを持ち、アリババクラウドのクラウド事業ではAIを開発し、かつてはアリペイのアントも同社内にあって、フィンテックにも取り組んできた企業だ。
陳航氏は福岡のイベントで来日していたこともあり、HHOについて話を聞くことができた(陳航氏は日本で長く働いていたこともあり、日本語が非常にうまく、ほぼ日本語だけで取材している)。話を聞くと、アリババとの関係はない企業だが、アリババイズムを感じる企業だと感じた。
陳航氏によれば、HHOは企業と企業を繋いでDXを行うデジタル技術の企業とのこと。HHOは長い間モノづくりに取り組んだ前述の「Pisen」、デザイン力の強い「LKK(洛可可)」と手を組み、それをHHOはDXでサポートし開発をより効率化かつより高速化するようバックアップする。
Gpodsを出すにあたり、オーディオ専業のメーカーがTWSを出す中で、そこで競合しないユーザーニーズのある製品を作ろうと考え、これまでにない光るTWSを思いついたという。以前にアリババのインスタントメッセンジャーのトップだということもあり、企業や組織とコンタクトがあることから、これをデザインして製造できるモノづくり力のある企業に声をかけて、試行錯誤を繰り返し製品化にこぎつけた。
陳航氏によれば「Gpodsの出来は60点くらいかな」と辛口評価も、自社製品については「HHO Gene」と「HHO LOVE」の2本柱のみで行く予定だとし、Gpodsの次世代機を作る可能性もあると示唆していた。
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