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グループ約900社のデジタル変革を加速する基盤と基幹システムをSCSKと構築

デジタル基盤とSAP基幹システムでAWS活用 住友商事がクラウドジャーニーを披露

2023年06月23日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年6月22日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンはAWSユーザーである住友商事グループのAWS導入についての記者発表会を開催した。約900社のデジタル変革を加速する基盤の構築とSAP基幹システムの移行について住友商事 理事DX/IT統括責任者 補佐IT企画推進部長 塩谷渉氏が説明した。

住友商事 理事DX/IT統括責任者 補佐IT企画推進部長 塩谷渉氏

多種多様なビジネスを抱える住友商事のクラウドジャーニー

 日本を代表する商社グループの1つである住友商事グループの設立は1919年にさかのぼる。現在は大きく、金属事業、輸送機・建機事業、インフラ事業、メディア・デジタル事業、生活・不動産事業、資源・化学品事業の6つの事業部門と次世代事業の創出を進めるエネルギーイノベーションイニシアティブで構成されており、連結対象企業は893社、連結従業員数は7万8235人に及ぶ。

 同社の中期経営計画(2021-23)のSHIFT2023においては、DXによるビジネス変革を掲げており、DX Centerと呼ばれるデジタル戦略推進部・IT企画推進部が事業部門のDX化を推進すべく、機能提供や実装支援を行なう。特にメディア・デジタル事業部門のデジタル事業本部は事業開発やCVC、ファンド、アクセラレーターなど事業開発の機能も持っており、IT・DXサービスを手がけるSIerのSCSKともに、新技術やインキュベーションの領域でDX Centerと連携している。

 オンプレミス・プライベートクラウド前提だった住友商事がクラウドジャーニーに踏み出したのは、本社からグループ会社へのトレード業務の移行という経営環境の変化が大きい。また、パブリッククラウドが技術的な進化したこともあり、現在はAWSを中心としたパブリッククラウドの移行に歩みを進めている。

住友商事のクラウドジャーニー

 今回紹介されたAWS導入事例は、900社近くのグループ全体がスピーディ、安心、セキュアに利用できる「SCDP」と呼ばれるクラウド型のデジタル基盤での採用、そしてデータドリブン経営を実現するための基幹システムのクラウド移行だ。

東京リージョン開設時からのパートナーSCSKがデジタル基盤をトータルで支援

 DXによる集積化以前から事業創造までを支える住友商事グループのデジタル基盤であるSCDPは、各種SaaSやノーコード・ローコードツール、AIサポートまでを備える。ここでAWSを採用した背景は、長らく住友商事のITを支えてきたSCSKが、AWSのパートナーだったことが大きかった。

 SCSKは2011年の東京リージョン開設からの老舗パートナーで、マイグレーションやDB移行、データ活用、ネイティブ開発、システム運用までをトータルで支援している。AWSの認定資格保有数は2000を突破し、AWS上での自社サービスの開発も進めている。2017年頃からは住友商事のIaaS基盤で保守・運用を実施してきた。

SCデジタル基盤でのAWS採用の背景

 SCDPではSCSKが豊富な知見とノウハウを活かし、導入から活用までを一括支援する。具体的には初期設定を施したAWS環境を迅速に立ち上げ、運用・保守、システム監視・分析、システム連携、200以上に渡るAWSサービスの組み合わせや活用支援までを提案するという。これにより、導入を行なう部門やグループ会社はDXの実現にフォーカスでき、外部と連携したデータの利活用、新ビジネスの開発にまで踏み込めるという。「住友商事だけではなく、グループ全体でのDXの実現を目指す」と塩谷氏は語る。

 一方で、セキュリティやコスト削減にも注力。Amazon Guard DutyやSecurity Hubなどのクラウドネイティブのサービスを活用することで、グループ全体のセキュリティ強化を行なう。また、環境構築やセキュリティ設定にかかる時間を削減し、トータルでコストを削減していくという。

RISE with SAPをAWS基盤で運用 コンポーザブルERPに備える

 基幹システムのクラウド活用については、「SIGMA基幹システム」と呼ばれる住友商事グループの基幹システムをAWS上に移行する。SIGMA基幹システムは、グローバル連結経営をサポートするインフラとして構築された住友商事グループの営業・会計・財務・経営情報システム。2001年にERPとして導入されたSAPをベースに構築されており、2017年にSAP HANA Enterprise Cloudへ移行。さらに2023年には「RISE with SAP on AWS」により、AWS基盤への移行を図る。

SAPベースのSIGMA基幹システムをAWS上に移行

 RISE with SAPは、SAP S/4 HANA Cloudを中心に、さまざまなSAPソリューションを包括的に提供するクラウドサービスを指し、クラウド基盤としてAWSを選定できる。SAPは2008年の自社でのAWS採用を契機に、AWSとのパートナーシップを深めており、ユーザー向けの製品においてもAWSからの提供を進めている。AWSも2011年からSAP認定クラウドプラットフォームベンダーとなっており、グローバルですでに数千社がAWS上でSAPを運用しているという。

 住友商事が次世代基幹システムとしてRISE with SAP on AWSを採用したのは東京と大阪のマルチリージョン構成で運用でき、BCPやDR対策として有効という点が挙げられるという。また、現状別々に管理されているライセンス費用と環境費用を1つのサブスクリプションとして統合できるため、SAPを利用するグループ会社の増減にあわせた柔軟な管理が可能になる。さらに前述したSCDP上に構築した各種システムとの連携も容易で、AWSのアナリスティック・機械学習サービスを組み合わせたデータドリブン経営の実現も期待できるという。

次世代基幹システムでAWSを採用したポイント

 現在は同社ではSAP ECC6.0を用いているが、RISE with SAPではいよいよSAP S/4 HANAへ移行。将来的には多種多様なビジネスモデルをハンドリングすべく、ガートナーが提唱する「コンポーザブルERP」へ移行していく予定だ。これによりAWSをERP基盤として利用し、他のシステムと柔軟に連携できる環境を目指すという。

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