帆船ドローンが自由に海上を行き来する持続可能な社会を目指して
次世代の省エネルギー輸送手段に挑戦するエバーブルーテクノロジーズ
エネルギー問題と同時に少子高齢化の問題も解決したい
陸も空も多数のドローン企業がしのぎを削っているが、海上ドローンの広がりはまだまだこれからだ。海外では海上ドローンを手掛けているメーカーも数社あるが、軍事利用用途などが多く一般市場で活用できるようなものはほとんどない。また、日本ではそもそもドローンの海上版を発想できない、という課題もあるという。
「日本全体の問題だと思いますが、いろいろな業種が細分化され、先鋭化しています。専門的になりますが、その一方で、そこから周辺領域への拡大が難しくなってしまっています。例えば、車の部品を手掛ける工場は、通常は決まった部品しか作りません。似たような部品だから『これを作れますか』と聞いても、『やったことがないのでできません』となってしまうことも多いのです」
また、5年前に創業した時点で、技術要素はそろっていたものの、実際に挑戦すると海の厳しさを知ることになった。
天候に状況が左右されるので、物理的な性能がとても重要になる。特に、波の高さと風の高さが厳しいという。人間が自然の厳しさを乗り越えてきたように、ドローンも同じ壁を乗り越えなければいけないのだ。その一方で、頑丈さや信頼性などを高めなければいけないので、まずは無人船として提供することを目標に始めた。人間が乗るわけではないので、リスクは抑えられる。安全というわけではないが、気負わず挑戦できるという。
さらに、ハードウェアを扱っているスタートアップがみな直面するものでもあるが、エバーブルーテクノロジーズも「死の谷」の中にいるという。PoCはできているのだが、そこからプロダクトにするハードルがとても高い。今までなかった領域であるため、マーケットがない。そのため、今はマーケットを作ることに注力し、売り上げを立てながら、フィードバックをもとに改良したり、ドローンの開発を進めたりして、死の谷からの脱出を目指しているという。
「そういう意味では、本日お見せした『AST-181(高機動型水上ドローン)』の完成度が圧倒的に高いです。ハードウェアとしての船の堅労性や性能が担保されていますし、我々のアプリや制御ユニットも3年ぐらい熟成されています。あとは、量産して販売してサポートしていこうというところで、ようやくスタートラインに立てたという感じです」
とはいえ、一足飛びにエバーブルーテクノロジーズが目指すエネルギー輸送を実現できるわけではない。その前には貨物輸送をするし、その前には人を載せない状態で航行するなど、ステップを区切って開発を進めているという。
最後に、将来の展望を伺った。
「エネルギー問題とともに少子高齢化の問題も解決したいと考えています。労働力が減っていく中で人手が足らないと言う人もいますが、私は人間が無理に働かなくてもいいと思っています。今、AIが文章を作ると話題になっていますが、フィジカルなところもそれと同じです。人間が無理に物を運ばなくても、まかせられることは全部ドローンやAIにまかせればいいじゃないか、という世界観を目指しています。労働力が減っても、業務を省力化することで回っていく社会をつくっていきたいと考えています」と野間氏は締めてくれた。