「スマート自治体を実現するDXサービスの提供」「自治体業務のBPO支援」「デジタル人材育成支援」
NTT西と日本MS、自治体DXを推進する協業ソリューションを発表
2023年05月24日 07時00分更新
西日本電信電話(NTT西日本)と日本マイクロソフト(日本MS)は2023年5月22日、地方自治体のDX化支援における協業を発表した。生成AIを活用した業務の効率化支援、地方自治体を支える地域ベンダー各社との連携によるアプリケーションの提供、デジタル人材育成プログラムなどを通じて、地方自治体のDX化を支援する。
具体的には「自治体システムのクラウド化にまるごと対応」「スマート自治体を実現するDXサービスの提供」「自治体業務のBPO支援」「デジタル人材育成支援」の4点から地方自治体を支援する。西日本エリアの30府県915自治体のうち、250以上の自治体にサービスの導入を図り、今後5年間で500億円規模の売上げを目指す。
NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の森林正彰氏は、自治体におけるDX/デジタル人材の不足によって、ガバメントクラウドや地域創生クラウドにおける最適な構成がわからない、オンライン申請とアナログ申請が混在する窓口業務の多様化/複雑化に対応できない、といった課題を指摘。その課題解決に向けて、各自治体がばらばらにデジタル投資を行うのではなく、サービス/インフラ/人材などに共同で投資をしたり、共用したりする「共同化モデル」により、DXを加速させることができると説明した。
「今回の協業によって、最先端技術を活用した自治体業務のスマート化のほか、人的資源の行政サービスへの投入によって、住民サービスの向上、EBPMなどによる行政の効率化や高度化を実現できる」(NTT西日本 森林氏)
また日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏は、「ガバメントクラウドの導入支援などによる自治体のクラウド化の促進に向けて、NTT西日本、日本マイクロソフト、パッケージベンダーの3社による協業スキームを促進したい」と語った。
「さらにNTT西日本のクラウド技術力を向上するための支援を行い、開発環境の構築をサポートする。NTT西日本と共同で、西日本地域の『Microsoft Base』を活用した地域DX人材の育成支援や、生成AIをはじめとした最新技術やグローバルナレッジを活用した自治体向け共同事業開発も行う」「自治体におけるシェアを追うよりも、結果を出すことにこだわり、自治体がバリューを感じてもらえる実績を出していきたい。日本のDXは世界に比べて遅れている。日本をバリューアップしていきたい」(日本MS 津坂氏)
自治体DXを幅広く支援、生成AIによる取り組みも
より具体的な説明もなされた。
「自治体システムのクラウド化にまるごと対応」では、DXコンサルティングを含めた全体デザインを実施する。2025年度に向けた自治体情報システムの標準化への対応のほか、標準化対象外のシステムへの対応、現場業務におけるDXの実現などを支援。ハイブリッドクラウド環境の導入やサポート、ネットワーク接続、セキュリティなど、自治体の要望に対応する各種サービスをまるごと提供する。
DXコンサルティングでは、各自治体業務の現状調査から課題解決に向けた最適なシステム構成の検討や、自治体間の共同化検討および合意形成などを実施。加えて、現状調査で明らかになった業務課題を解決するために、自治体DXソリューションを提供する。
ハイブリッドクラウドの導入支援では、ガバメントクラウドへのリフト&シフトの支援のほか、地域創生クラウドや保有するデータセンターを活用した安価なクラウド環境を提供する。さらに、サポートやネットワーク、セキュリティなどのトータルマネージドサービスを提供。NTT西日本は、ガバメントクラウド運用管理補助者として、自治体や地域ベンダーのサポートを行う。
2つめの「スマート自治体を実現するDXサービスの提供」では、制度や仕組み、サービスの多様化による職員業務の増加をサポートするために、日本マイクロソフトの「Azure OpenAI Service」による生成AIを利用。様々な問い合わせなどに対応できるDXサービスを提供する。コンサルティングから導入、サポートまでをパッケージ化し、アプリケーションを持つベンダーとの連携も進める。
「職員の業務の効率化に加えて、市民サービスにおける待ち時間の削減などの効果がある」「自治体においても生成AIに対する需要は大きいと考えている」(森林氏)
3つめの「自治体業務のBPO支援」においては、NTT西日本のグループ会社によるフロント業務やバックオフィス業務を行う委託サービスを活用。人材不足をカバーするほか、日本マイクロソフトの技術支援を得ながら、生成AIやローコードツール、RPAなどのDXツールの活用を促進し、生産性向上と業務効率化を追求した品質の高いBPOサービスを提供するという。
4つめの「デジタル人材育成支援」では、自治体の全職員を対象にした育成メニューや管理職や現場リーダーを対象にした実践研修などを用意。公共機関向けパブリッククラウド活用トレーニング、クラウド技術に関する実習型セミナー、AI/IoT活用トレーニングも提供する。さらに、外部人材活用に向けた支援も行うという。
これらの研修や人材育成支援の実施においては、NTT西日本の共創拠点である4カ所の「LINKSPARK」や、オープンイノベーション推進拠点である「QUINTBRIDGE」も活用する。
なお今回LINKSPARK OSAKAに、新たにMicrosoft Baseを併設。NTT西日本と日本マイクロソフトで連携しながら、デジタル人材の育成の観点から地方自治体を支援。さらに、日本マイクロソフトでは、NTT西日本に対して、クラウド人材育成プログラムの無償提供を行い、NTT西日本では、Azureに関するクラウドサービス上級資格者を100人育成する計画を明らかにした。
今後は、「地方自治体のDX推進に関するワンストップでの相談先」となり、政府が提唱するデジタル社会の実現に向けて、地方自治体や住民の暮らしを支えるサービス提供を目指すとしている。
なお会見では、日本マイクロソフトの津坂氏が、同社の生成AIに向けた基本的姿勢について言及した。「CEOのサティア・ナデラは2023年1月、マイクロソフトのすべての製品、ソリューションにAIを組み込むと宣言した。Microsoft 365やPower Platformでは、生成AIによってさらなる価値を付加しており、マイクロソフトの幅広い製品ポートフォリオにAIのパワーを加えることで、独自の価値を提供できると考えている。人の営みをサポートするCopilot(副操縦士)として、AIの活用の幅はどんどん広がっていくだろう」とした。
「マイクロソフトでは、公正性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、包括性、透明性、アカウンタビリティの6つを、「責任あるAIの基本原則」としている。システム設計の初期段階からライフサイクル全体に渡って、責任あるAIを徹底し、AIが意図した通りに機能し、信頼を得るように使用できるようにしている。AIの未来には、明るい見通しを持っており、AIのブレイクスルーは、大きな課題の解決だけでなく、日々の作業を少し楽にすることにも役立つ。AIがもたらす利益を現実のものにするために、責任を持って事業を遂行する」(津坂氏)