いまやLUUPは電動キックボードの代名詞だ。
とはいえLUUPのサービスを提供しているLuup社は電動キックボードのメーカーではない。電動キックボードや電動アシスト付き自転車のような電動マイクロモビリティのシェアリング拠点である「ポート」を運営・管理しているインフラ事業者だ。
Luup社はポートをある種の「駅」と考えていて、ポートを増やすことでまちのすべてを「駅前」にすることを目指している。電車の駅やバスの停留所から家や会社までの数分を結ぶための、補完的なインフラになろうとしているのだ。
レガシーな交通インフラを補完する仕組みを作っているのは、新しい交通の結節点「ミチノテラス豊洲」の開発を進める清水建設も同じだ。
Luup社は2022年1月、清水建設が参加する豊洲スマートシティ推進協議会と連携協定を締結し、豊洲エリアでLUUPの提供を開始している。
Luup社が作ってきた景色、豊洲で起きている流れからは日本の交通の未来が見えてくる。アスキー総合研究所の遠藤諭が、Luup 事業推進部 エリア開発1Gグループマネジャー 十河昌平氏、清水建設 スマートシティ推進室 豊洲スマートシティ推進部 マネージャー 森哲也氏に話を聞いた。
国内シェアリング電動キックボードの9割以上がLUUP
── まずは簡単にLuup社について教えていただいていいですか。
十河 LUUPというとキックボードが取り上げられることが多いんですが、このアプリの上でいろんな乗りものを動かして、街中のポートからポートに乗り物が動くというインフラを作っているプラットフォーム側の事業者になります。
── 最初からそうなんですか?
十河 最初は自転車をやっていました。将来的にはまったく違う高齢者の方が乗れるような三輪寄りの機体も出てくる可能性もあります。
── ぼくらとしてはやっぱり電動キックボードの印象がものすごく強いんですよ。
十河 電動キックボードのシェアリングという意味では、たとえば実証実験の総走行距離で比較すると9割以上がLUUPなので、そうしたイメージはやはり付くだろうなと。自転車のほうは他の事業者さんがたくさんいらっしゃるんですが。
── なぜ他社はキックボードやらないんですかね?
十河 いくつか理由があると思いますが、たとえば海外の電動キックボード事業者が日本に入ってくることも想定されるかなと思うんですが、海外の事業者は道に乗り捨てるモデルがほとんどなんですよね。乗り捨てられたものを次の人が拾って乗り捨てる。そこから始まっているサービスなんですが、国内、特に都内でそれはルール的にも文化的にも難しいと思っていて。前提となるサービスの仕組みに違いがあるかなと。
── 自転車の乗り捨てはヨーロッパではあると思うんですが。
十河 日本以外の国のほうがキックボードの普及は先だったんですが、日本で普及が遅れているのは、電動キックボード専用の適切なルール整備がなかなか進まなかったところがあると思います。もともと原動機付自転車と同じ枠組みに入っていたのですが、最高時速30kmで車道のみ走行といった原付用のルールは海外の電動キックボードのルールとはかなり異なります。
── そうですね。
十河 それに自転車のレーンを走れないから車道を走らないといけない。たとえば、後ろから大きなトラックが来たとき左端によけられない。
── つまり、参入障壁があったけど御社は入ったと。乗り捨てではないという話ですが、そもそもの仕組みを教えていただいてもいいですか。
十河 LUUPは乗りものについているQRコードをアプリで読み取り、返却するポートを選ぶと鍵が開くという仕組みです。そうなるとポートの数や密度が重要になるんですね。どこでも借りて返せるほうが便利なんですが、ポートモデルだとそうはいかない。目的地ポートの予約を必須にしたり、まちの美観を損なわないよう、返すとき枠に入れたことがわかるような機能も入っています。
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