医療、製造、建築業のけん引を期待したい次世代スタートアップ
2022年度千葉市アクセラレーションプログラム(C-CAP)デモデイレポート
リンクメッド株式会社
がんは日本人の死因第1位の疾病であり、日本人の3人に1人ががんによって死亡している。一方で従来の抗がん剤は患者のうち20~30%程度にしか効果がなく、また効果の有無が確認できるまでに数か月という長い時間がかかってしまうこともあった。その結果、悪性脳腫瘍では5年生存率が35.5%、膵がんでは5年生存率が約10%となっており、新しい治療薬の開発が求められていた。
リンクメッドは銅の放射性同位元素Copper-64を用いた放射性がん治療薬の開発を行っている。この治療薬は高いエネルギーの放射線を放出することによってがん細胞を治療するだけでなく、陽電子も放出するためにPET(positron emission tomography)診断でがん細胞への薬剤集積の状況を確認することができる。つまり治療の様子が見えるがん治療薬となっている。
現在、悪性脳腫瘍と膵がんに対する治療薬を開発中で、脳しゅよう治療薬については既に第1段階の臨床試験を進めている。悪性脳腫瘍の治療薬については2027年ごろ、膵がんの治療薬についても引き続き薬事承認取得を目指して試験を進めていくとしている。
株式会社Liberaware
大きな設備を持つ製造業では、機器の老朽化に伴い、点検と補修のために煙突や配管の内部を確認する作業が必要になってきている。これを人手で行うのは作業員の負担が大きく、自動化するソリューションが求められていた。Liberawareは小型ドローンと画像解析ソフトを組み合わせて、人手の入りにくい大型機器の内部や地下に対して、自動自律の撮影およびその3Dデータ化を行うソリューションの開発を行っている。
既に大手企業での採用も増えてきているが、大手企業の本社で好感触を得ても、その情報がなかなか現場の工場やラインにまで伝わっていかず、具体的な採用に至らないケースがあった。そこで、大手企業の本社から営業活動を開始するのではなく、地域を軸に現場で作業を行っている事業者に面でアプローチする方法をC-CAPを通じて模索することにした。
千葉市では地銀や地元商工会議所などから協業先を紹介してもらったり、市原市では認知度を高めるためにビジネスコンテストに参加するなどの活動を行った。また、北九州市や神奈川県など、地域に工業地帯を抱える自治体を通じて地場の企業にアプローチを行った。特に北九州市からは大きなサポートを得ることができ、地域を盛り上げたいと考えている方々との連携は非常に有効であることが確認できた。
現在はドローンと解析ソフトによるソリューションによってインフラ、設備の現場に価値を提供するビジネスを行っている。将来的には蓄積されたデータを使ってデジタルツインを構築するなどして、Liberawareのミッションである「誰もが安全な社会を作る」を実現したいとしている。
C-CAPに採択された5社はいずれも具体的な社会的課題を解決するための独自のソリューションを開発しており、近い将来の社会実装を期待される発表会となっていた。C-CAPは来年度以降もさらに強化されつつ継続されることになっており、よりイノベーティブなスタートアップが飛躍の機会を得ることになる。トークセッションにもあった通り、東京にはできないスタートアップの創出と育成に期待したい。