医療、製造、建築業のけん引を期待したい次世代スタートアップ
2022年度千葉市アクセラレーションプログラム(C-CAP)デモデイレポート
C-CAP採択5社による成果発表
トークセッションに続いて、C-CAPに採択されたスタートアップ5社によるピッチが行われた。各社の発表概要を紹介する。
株式会社spiker(スパイカー)
医学の発達した現代においても、発展途上国では年間250万人の赤ちゃんが出産の際に死亡している。特にアフリカ大陸では医療従事者の数が全く足りておらず、CTG(Cardiotocogram:「胎児の心拍」「子宮の収縮」から胎児の状態を観測する医療機器)を導入している病院であっても胎児の状態を常時監視する人手が足りていない。そこでspikerは、自動診断AIを搭載したCTGを開発し、誰もが安心して安全なお産ができる世界を作ることを目指している。
実際にアフリカで導入実験を行ったところ、通常のCTGに比べて2.5分早く胎児の低酸素状態を発見することができ、予防可能な死を回避できる可能性が確認できた。現場では、スタッフが足りない状態でも使えるという即効性に加えて、現場医療スタッフの士気向上が得られたことが高く評価された。
日本でも夜中に救急車を呼ぶことをためらう妊婦は少なくなく、結果として胎児を危険にさらす場面もある。そこでspikerの分娩監視装置を妊婦の自宅に配備し、24時間員外モニタリング環境を試験的に構築した。AI+助産師による波形判読とフィードバックを実施している。これにより胎児の健康だけでなく、妊婦を含む家族全体の安心にもつながっている。
株式会社EUZEn(ユーゼン)
コロナ禍以前より、病院勤務医などの4割が過労死レベルの過重労働に苦しんでいるなど、医師の働き方改革は喫緊の課題となっている。EUZEnは医師の意思決定(指示)に着目し、指示箋と医療帳票を一元管理するなど診療プロセスを見える化し、タスクシフトとプロセス改善を推進するソフトウェア「LEAN(Lean Effort Arrangement Note)」を開発した。
LEANを利用すると。診察に関わるタスクのうち定型的説明や検査日程等の連絡調整を他職員にシフトすることにより、医師が医師でなくてはできない業務に集中できるようになる。その結果、医師はより効率的に患者の診察をこなすことができるようになり、医師の労働負担を軽減するとともに、患者の待ち時間の提言も期待できる。
医療情報システムの市場は国内より海外の方が規模も成長速度も大きい。今後はJETROなどと連携しつつベトナムなどASEANへの進出も視野に入れて事業展開を進めていく。
Re'bertas(リバータス)株式会社
全国で行われている建築、土木の現場では、用意はしたが結局使用しなかった資材や資源や、地面の掘り起こしなどによって出た残土などを廃品として処分することが少なくない。処分場での廃品処理にはコストもかかるし、処分場への運搬にはコストだけでなくCO2排出など環境負荷も重くのしかかってくる。
Re'bertasは現場で余った木材や資材などを事業者同士で融通し、利活用を促進するマッチングサービス「Re'match」を開発している。2020年5月から1年間、住宅メーカーなどから協力を得て残土の転用試験を行ったところ、約760万円の利益向上が実現できた。
この試験における余剰資材・資源の再利用は、当該住宅メーカー社内の現場間で行われたものがほとんどで、その結果、余剰資材や資源のうち約半数がマッチング不成立で処分(余剰資材や資源の受け入れ側では資材、資源の新規購入)することとなった。今後はRe'matchプラットフォームの採用企業を拡大し、マッチング成立割合を向上させるとともにより多くの資材や資源の無駄を削減することを目指すとしている。