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医療、製造、建築業のけん引を期待したい次世代スタートアップ

2022年度千葉市アクセラレーションプログラム(C-CAP)デモデイレポート

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 千葉市は市の経済をけん引する次世代企業の創出のため、短期集中型の伴走支援プログラム「千葉市アクセラレーションプログラム(C-CAP)」を実施している。第3期となる2022年度のプログラムに採択された5社のスタートアップによる成果発表会が2月22日に実施された。日本のスタートアップエコシステムは中心地である東京の隣県に位置する千葉市は東京コンソーシアムに追加され、地元スタートアップの発掘のためにも強力なプログラムを実施している。その発表会の模様をレポートする。

主催者挨拶とC-CAP事業概要説明

 スタートアップ5社による成果発表に先立ち、千葉市 経済農政局長 橋本直明氏から主催者挨拶が行われた。

千葉市 経済農政局長 橋本直明氏

 千葉市では令和2年度から千葉市の経済をけん引する次世代ロールモデル企業の育成をコンセプトとする「アクセラレーションプログラムC-CAP」を実施している。本年度も8月より公募、選考し、21社の中から5社のスタートアップを採択した。

 さらに千葉市では、来年度に向けてC-CAPの更なる強化策を検討、予算化に向けて動き始めている。

1.組織体制の強化:令和5年4月より千葉市産業支援課内にスタートアップ支援室を設置する。室長や職員がスタートアップ企業の商談に同席するなど、フットワーク軽く支援を行えるよう体制の構築を進める。

2.上場支援の強化:アクセラレーションプログラムに上場チャレンジ枠を新設する。

3.イノベーション拠点の整備:市内の民間レンタルオフィスやコワーキングスペースに対し、イノベーション拠点として活用できるよう認定していくシステムを予算化する。これによりイノベーションのきっかけとなるような機会を作っていくことが重要であると考えている。

 政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定するなど、新しい企業の育成に本腰を入れて取り組んでいる。千葉市も内閣府の認定グローバル都市である東京コンソーシアムに広域連携自治体として参加するなど、より大きな文脈でのスタートアップ育成にも乗り出している。C-CAPはその中核として位置づけられるプログラムとなっている。

トークセッション:地域発 世界レベルのスタートアップの可能性

 続いて「地域発 世界レベルのスタートアップの可能性」と題して、ベンチャーキャピタルLifetime Venturesの代表パートナー 木村亮介氏(以下、木村氏)と株式会社ゼロワンブースター 代表取締役 合田ジョージ氏(以下、合田氏)によるトークセッションが行われた。

  プレシード/シード特化型のVCであるLifetime Venturesは木村氏によって6年前に設立され、2つのファンドを合わせて24社に投資を行っている。Lifetime Venturesの出資先は、その多くが出資時点ではサービスや製品が完成していない、もしくはアイデアだけの段階であり、通常のエンジェル投資家ではリスクを恐れて投資しないスタートアップも対象に含める真のプレシードVCということができる。

 2022年5月には沖縄科学技術大学院大学(OIST)と連携して「OIST-Lifetime Ventures Fund」を設立し、東京を遠く離れた沖縄からの投資活動を開始した。OISTは学生の6割、教員の8割が日本人ではなく、そのような人的資源を活用してローカルでありながらグローバルな事業の開発を目指している。

千葉における大学の役割について

 木村氏は親交のある千葉大学の片桐大輔特任教授から聞いた、千葉における千葉大の果たす役割について展開。東大と京大の例を挙げるまでもなく、大学はその地域における知の集積地であり、人材を輩出するリソースとなっている。特に千葉大は広大な千葉県全域をカバーする大学であり、特に医療分野では県全体から患者が集まってくる。

「県全体からあらゆる症例が千葉大学病院に集まってくる。逆に東京の大病院、大学病院ではこうはいかず、専門に特化した情報しか集められない場合がある。かなりの人口を抱えていてその基幹医療を一手に引き受けているというのは非常にユニークな立場にある。カバーする面積も広いので、オンライン診療とかドクターヘリとか、そういった先進的な医療にも取り組みやすい。関東の東京を除く他の県と比較しても珍しい環境にあると言える」(木村氏)

Lifetime Ventures 代表パートナー 木村亮介氏

 また千葉大全般に関しては、実践主義に重きを置いており、課題に対する解決法の創出に純粋に取り組んでいるという印象を木村氏は抱いていると話している。

地域から世界レベルのスタートアップは生まれるか

 米国や中国、あるいは南米などと比べても、日本はユニコーンと呼ばれるような大きなスタートアップの創出で後れを取っている。この問題の原因の1つとして、東京以外の地域からみた東京一極集中のバイアスを木村氏は指摘している。

「東京が大きすぎるため、地方の都市は勝てるわけがないといった意識を強く持ちすぎている。しかし世界でユニコーンが生まれている街がみんな上海や東京のような巨大都市というわけではない。サンノゼにしてもイスラエルのテルアビブにしても数10万人から100万人程度の人口しかない。ということを考えれば政令指定都市位の人口があればタレントは集まってくるということになる。千葉市には大学もあるしできない理由はない」(木村氏)

 Lifetime Venturesが拠点を持つ沖縄から見れば、東京に出るのも米国に出るのも難易度に大きな差はない。80億人のうち日本人は1億人しかいないのだし、せっかく作ったサービスならより多くの人に使っていただく、技術を見ていただく方が良い。そういう選択肢を無意識に外してしまっている人が多いと木村氏は指摘している。

 日本は自国内で資金調達からビジネス展開、IPOまでを完結することができる世界でも稀有な国の1つとなっている。他の国の多くはそのようなマーケットが存在していないため、必然的に外に出ていかざるを得ない。恵まれすぎているために外に出るインセンティブやモチベーションが湧かないというぜいたく病にかかっているのが日本のスタートアップと言えるだろう。

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