2014年にグーグルに買収され、現在アルファベット傘下のDeepMindは4月20日(現地時間)、Google ResearchのBrainチームと統合し、新たに新組織「Google DeepMind」としてAI分野の研究・開発に注力すると発表。CEOには現DeepMindのCEOデミス・ハサビス氏が就任した。
汎用人工知能(AGI)の完成も視野に
合併の対象となるGoogle ResearchのBrainチームは、OpenAIと共同で現在の自然言語処理研究の礎となる「Transformers」モデルを開発したことで知られる。
さらに、単語をベクトル表現に変換する「word2vec」や「sequence to sequenceモデル」、「深層強化学習」、といったモデルやオープンソース機械学習フレームワーク「TensorFlow」の開発など様々な成果をあげている、マイクロソフトが強力にバックアップする「OpenAI」と並び、現在のAI研究の最前線を走る組織だ。
一方、2010年に英国で起業したDeepMindは、AIとしてはじめてプロ棋士を破ったとして話題になった「AlphaGo」をはじめ、深層学習を用いた音声合成技術の「WaveNet」、タンパク質の構造を予測するアルゴリズム「AlphaFold」など野心的な研究プロジェクトで有名だ。
グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏は「グーグルのコンピューティングリソースに支えられたひとつのチームにすべての才能を統合することで、AIの進歩を大幅に加速させることができる」と合併の理由について述べている。
また、Google DeepMindのCEOを務めることになる元DeepMindデミス・ハサビスCEOは「2010年にシェーン・レッグと私がDeepMindを立ち上げたとき、多くの人がAGI(人間のように幅広い知識と認知能力を持つAI)は何十年も先の遠いSF技術だと考えていました。今、私たちは、AIの研究と技術が指数関数的に進歩している時代に生きています。今後数年間で、AI、そしてAGIは、歴史上最も大きな社会的、経済的、科学的変革の1つを推進する可能性を秘めています」と、いよいよAGIの完成が視野に入ってきたことに言及している。
グーグルの焦りか?
グーグル(アルファベット)によるDeepMindの買収は、実は2021年に一度失敗している。その理由としてDeepMindが「AI技術は単一の起業によって独占されるべきではない」と考えているためとされていた。
今回DeepMindが合併の提案を飲んだのは、いよいよ見えてきたAGIの完成を急ぎたいという希望もあるだろうが、大部分はライバルの突き上げに焦りを見せるグーグルの意向だろう。まだ完成度が高くないにも関わらずChatGPTのライバルと目されるAIチャットボット「Bard」を公開したグーグルはこのままAI開発のチキンレースにフルベットを続けるのだろうか。