うちから徒歩だと遠くて行く気にならないけど、自転車ならそこまで気合いを入れなくても行けるかな、という微妙な距離感のところに、とある神社がある。2018年の冬のこと、たまたま夕方に休憩がてら立ち寄ったら、数匹の猫がのんびりと過ごしてて、毎日世話をしているというおじさまが猫を撫でながら座り、のったりした時が流れていたのである。
あれから5年がたち、何度か訪れるうちに顔を覚えてもらい、最近は、ちょくちょくとカメラを持って遊びに行くようになった。
今回携えていったのは、2023年4月に発売されたキヤノン「EOS R8」に、レンズは24-240mmの高倍率ズームレンズという組み合わせだ。
このEOS R8というカメラ、フルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼では比較的リーズナブルな入門機。ボディ内手ブレ補正こそないけれども(猫を撮るときはシャッタースピードを速めにするのでほぼ問題ないし、今回のレンズは強力な手ブレ補正を内蔵している)、バッテリーの持ちもあまりよくないけれども(いっぱい撮るときは、USB PD対応のモバイルバッテリーを持って行くべし)、そのぶん軽くてコンパクトなのだ。
入門機とはいえ、基本性能は上位機種の「EOS R6 Mark II」とほぼ同じで、AFは速いし、連写も効くし、動物AFはすごく賢いし、画質もいいしで、優秀なのだ。そして、機動力が高いボディには、近くの猫も遠くの猫も撮れて、シャッターチャンスを逃さない高倍率ズームレンズが向いてるよね、というわけである。
この日に出会ったのは、長毛のタビ、キジトラのキナコ、そして薄い三毛のミケ。キナコは比較的、人の近くに来てくれる。この日も、社殿の前をとことこと歩いてきてくれた。
カメラのセッティングは、動物優先AF+AIサーボAF(いわゆるコンティニュアスAF)。シャッタースピードは速めにセット。猫が近ければ瞳を、遠ければ顔をつかまえてピントを合わせ続けてくれるので、タイミングと構図に注意してシャッターを切るべし。
遠いときは望遠で。近くに来たら広角で、だ。
表情を捉えたいと思ったら、近くから望遠で。
こういうときに大事なのは、時間を無駄に使うこと。現代人の時間感覚じゃなくて、猫の時間感覚でのんびりと過ごすべし。
そうすると猫もだんだん慣れてきて、こちらを気にせず好きにふるまってくれるし、いろんな姿を見せてくれる。三々五々、馴染みの猫好きの人がやってくるので、世間話などをしながらときどき猫にレンズを向ける。
この日は大粒の通り雨が突然降るような、晴れときどき雨の極端な天候だったのだが、雨が降ってくると猫たちは上手に濡れない場所を見つけて落ち着く。ミケは細いところが好きだそうで、雨の間はずっとここでじっとしてる。
もう1匹のタビさんは、ふくふくした長毛の猫。長毛のせいでふくふくして見えるのかと思いきや、身体全体でふくふくなんだそうな。
雨が強くなってきたら、小さな祠に避難してた。猫1匹がちょうど収まるサイズなのだ。天気がわかるよう、濡れた屋根が入るように撮ってみた。
顔がちょうど隠れて見えなかったので、横に回って撮った写真が冒頭の1枚だ。
雨が上がると、タビさんはおもむろに散歩に出かける。どこへ行ったかなと探しに行くと、建物(神輿庫か?)の裏手で遊んでた。這いつくばって、地面すれすれで撮ってみたのだけど、何をしてるとこだったのかはわからずじまい。なんてことない木の板が立てかけてあるだけだったのだけど。
やがて雨も上がり、晴れ間も見え隠れし、梁に座ってたミケも下りてきた。やっぱりミケは狭いところや端っこが好きらしく、ここも端っこである。
かくして、機動力がある軽いボディと高倍率ズームレンズの組み合わせって、猫のペースで時折猫と遊んだり、世間話をしたりしながら撮るのにいいのである。
GWに向けてカメラを買うぞ、という人、あるいは新しいレンズを手に出かけるぞという人、ご参考にしていただければと思います。
そして、猫を愛でつつ写真を撮るという贅沢な時間をぜひ。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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