名古屋大学と国立情報学研究所などの共同研究チームは、人工知能(AI)が学習する大規模電子配置データを量子もつれとして量子コンピューター上に生成するアルゴリズムを発見。それに基づく量子化学計算法を開発し、化学反応などに対する量子化学シミュレーションにより有効性を実証した。
名古屋大学と国立情報学研究所などの共同研究チームは、人工知能(AI)が学習する大規模電子配置データを量子もつれとして量子コンピューター上に生成するアルゴリズムを発見。それに基づく量子化学計算法を開発し、化学反応などに対する量子化学シミュレーションにより有効性を実証した。 研究チームは今回、量子コンピューターの超並列的な演算処理(量子ゲート操作)を取り入れ、人工ニューラルネットワークの学習計算を超高速化する計算法を開発。同アルゴリズムを量子コンピュータシミュレーターへ実装し、化学反応などの量子化学計算に適用し、多様な分子に対し、一貫して高い精度でニューラルネットワークが訓練されることを示した。 同研究チームは2020年に、「高次ボルツマンマシン」と呼ばれるニューラルネットワークモデルに着目し、量子化学の多電子波動関数の表現に用いる計算法を開発したが、組み合わせ爆発に起因する膨大な計算量が生じていた。今回は、電子配置の情報を量子ゲート回路の量子もつれとして生成することで、組み合わせ爆発に起因する膨大な情報を効率よく処理することを可能にした。 研究成果は、英国王立化学会誌、デジタル・ディスカバリー(Digital Discovery)のオンライン速報版に2023年3月30日付けで掲載された。(中條)