ミリ波レーダー搭載、放送とネットのシームレスな視聴など見どころいっぱい
新REGZAは、アニメキャラの顔を検出して高画質化、X9900M/Z970M/Z870M発表(更新)
2023年04月06日 08時30分更新
TVS REGZAは4月6日、タイムシフトマシン搭載4K有機ELレグザ「X9900M」シリーズ、タイムシフトマシン搭載4K Mini LED液晶レグザ「Z970M」シリーズと「Z870M」シリーズを発表した。価格はいずれもオープンプライス。4月21日から順次発売する。
●有機ELモデル/X9900Mシリーズ
55型、65型、77型の3機種展開で、いずれも4月21日の発売。予想実売価格はそれぞれ約44万円、約59.4万円、約93.5万円。77型の大画面モデルは久しぶりに投入だ。市場ではいまだに50型クラスの人気が高いが、後述するリビングでの視聴距離を考えるとワンサイズ上が適しているという面もあり、大画面化は歓迎したい。
●液晶モデル/X970Mシリーズ
Mini LEDと量子ドットを組み合わせた新シリーズで、液晶テレビの最上位シリーズ。65型、75型、85型の3機種展開で、85型は5月、残りは4月21日の発売。予想実売価格はそれぞれ約52.8万円、約77万円、約93.5万円。レグザ史上、最高画質の製品ができたと自信を示す、豪華な仕様を盛り込んでいる。
●液晶モデル/Z870Mシリーズ
Mini LEDと量子ドットを組み合わせたハイエンドモデル。Z770LのバックライトをMini LED化し、スピーカーの品質もアップしたものと考えると分かりやすい。55型、65型、75型の3機種展開でいずれも4月21日の発売。予想実売価格はそれぞれ約30.8万円、約41.8万円、約55万円。
2023年春モデルは人の位置を認識できる
3シリーズのうち、X9900MとX970Mは新エンジンの「レグザエンジンZRα」を搭載している。ミリ波レーダーを使ったセンシング技術で、視聴環境や視聴位置を認識。ディープニューラルネットワークを駆使し、進化したコンテンツ解析が可能となるとする。
これについて、もう少し具体的に書く。テレビ映像の画像処理は視聴距離を考慮しながら追い込んでいく必要がある。例えば、映像のノイズは、テレビに近い距離で観ると視認しやすくなるが、離れてしまえばそれほど気にならない。逆に、ノイズ抑制とは映像の荒れている部分を周囲になじませる処理のため、かけすぎると全体にのっぺりとした画になるといった弊害も出てくる。
そこで登場するのが視聴距離を測るセンシング技術だ。今シーズンのレグザでは、テレビ側にセンサー(ミリ波レーダー)を内蔵し、観ている人と画面との距離を測り、適切な画像処理を施す。近い距離ではノイズ抑制の処理を強めにかけ、離れた距離ではノイズ抑制処理をあまりかけず、メリハリ感を重視した画づくりにするのだ。なお、このミリ波レーダーを使ったセンシング技術は、複数の人(2名)を認識することが可能で、一番近い人に合った処理にするそうだ。
このセンシング技術は音についても応用している。ミリ波レーダー高音質として、リスニングポイントを認識し、画面の正面で観ていない場合は左右の音量バランスを調整、最適な定位が得られる仕組みにしている。
ちなみに、X9900MとX970Mが搭載する映像処理エンジンは、昨年モデルと同じZRαになっているが、機能が異なるため新エンジンである。ただし、今後はチップや機能が変わっても世代表記はせず、ハイエンドの画像処理エンジンの名称は「ZRα」に統一していくそうだ。基板は新しいが、2チップ構成になっている点は同じ。ファームウェアが進化している。それぞれ5コア+AI、4コアとなっている。なお、Z870Mの基板はこれよりも小ぶりで、4コアのチップになっているそうだ。
ニーズが高まるネット動画の再生にも配慮
レグザエンジンZRαを生かした新機能である「ネット動画ビューティPRO」は、X9900MとZ970Mが搭載。レグザではテレビ番組の場合、EPG(電子番組表)のジャンル情報を使って最適な画像処理をするようにしているが、ネット動画にはこの情報がない。そこで、コンテンツ種別の予測に加え、エンコードやビットレートで圧縮による劣化度合いを想定し、適切な高画質化処理を施すアルゴリズムを取り入れた。
レグザブランド統括マネージャーの本村裕史氏によると、もともと「同じ毎秒24コマの映像でも、映画とミュージックビデオ(MV)の違いを出したいと考えていた」とし、「永遠の課題だった」と話す。開発を進める過程で、付随的に、セルアニメ、CGアニメなどの区別もできるようになったため、新シリーズでは、アニメに特化した処理も強化している。
ネット動画ビューティPROは、グラデーションが滑らかにならず、地図の等高線のような縞ができるバンディングの低減や圧縮ノイズの悪影響の低減に取り組んでいる。画質が粗いYouTubeなどの動画でも、イメージ図のように、滑らかで自然なグラデーションが得られる。YouTubeにアップした動画は、YouTubeが使用するコーデックの関係で、もともとの画質より悪くなるケースがあるので、効果を実感できると思う。
「AIナチュラルフォーカステクノロジーPRO」は、AIを使って構図全体の解析をし、被写体の顔や衣装などを把握、高精細で立体感のある高画質が得られるというもの。従来から被写体を判別する機能は持っていたが、新シリーズでは顔の部分と衣装の部分を判別し、顔は従来同様肌を美しく滑らかに表現し、衣装は細部が際立つ処理を加えている。実機で見ると確かに画質の進化を感じた。
「アニメビューティPRO」では、ついにキャラクターの顔検出までできるようになった。アニメは実写とは逆で、キャラクターは平面的だが、背景画は写真のように繊細に描かれている場合が多い。そこで背景は緻密に再現する一方、顔はノイズが目立たない処理にしているという。コアなアニメファンは、地デジ放送だけでなく、ネット動画、配信動画など、さまざまな形態のコンテンツを視聴するので、それぞれに合った処理ができるようにしている。「アニメの高画質化を本格的に攻めたい」と考えているそうだ。
パネルも進化、コントラストが高く引き締まった再現を
画質の基礎体力と言えるパネルも進化した。
まず有機ELパネルは輝度が20%向上。明るさに加え、引き締まった黒により高コントラストを実現できるという。
液晶パネルは、新開発のMini LED液晶パネルモジュールとなっており、さらにZ970Mには低反射ARコート、高視野角ワイドアングルシートが追加されており、高視野角と引き締まった黒の再現が可能となっている。最近の液晶テレビは、ハーフグレアタイプが主流で、表面の光沢感を抑える傾向が強いが、グレア系の処理ならではの、黒の深さが印象的だ。加えて、Z970Mでは従来比10倍、Z870Mでは3倍の細かさでエリアコントロールしており、量子ドットも新開発の高色域タイプになっているそうだ。
ネットと放送を行き来しやすい、UIの改善にも取り組む。
リモコンはダイレクトボタンを充実させた。再生が可能なネット動画サービスの数も増やしており、標準でダイレクトボタンに割り当てられていないサービスであっても、MyChoiseボタンにアサインできる。見たいネット動画は、ダイレクトボタンがないと使いにくいので、嬉しい改善だろう。
地デジとネット動画のシームレス化を図る“新ざんまい”機能にも注目。レグザの全録である“タイムマシン機能”を使って録画した放送と、ネットで配信中の動画を同じ画面内で探せるUIになっている。放送とネットという垣根を超え、観たい番組をタブ移動で横断的に探せるようになった。
音についてもこだわり
音響面も強化した。有機ELテレビのX9900Mはスピーカー構成こそ前モデルの「X9900L」と同じだが、使用するユニットを調整し、それを超える音にできたとする。
液晶テレビのZ970Mには「レグザ重低音立体音響システムZHD」を採用。11個のスピーカーを大出力の112Wマルチアンプで駆動する豪華な仕様。新開発のトップスピーカー、サイドスピーカー、センタースピーカーによって迫力がある再現と、イマーシブサウンドのリアルな音場再現が可能となった。X9900Mでもやっていない要素としては、トップとサイドのスピーカーもフルレンジになっている点が挙げられる。ここは有機ELパネルと液晶パネルの構造の違いという面もあるが、指向性の高い高域だけではなくフルレンジドライバーであるという点は特徴だ。
870Mについても、770Mを踏襲しつつ改良した「レグザ重低音立体音響システムZ」を搭載。7個のスピーカーを60Wのアンプで駆動する。メインスピーカーとトップツィーターは新開発だ。
ゲームモードはジャンルに合わせた高画質を提供
レグザの特徴となっているゲームモードについても機能が大きくアップした。HDMI 2.1のゲーミングスペックは網羅したうえで、ゲームのジャンルに合わせて画質を選べる「ゲームセレクト機能」を追加している。
スタンダード、ロールプレイング、シューティングの3種類を選べる。シューティングは、FPSなどのプレーに適したモードで、暗部階調を持ち上げて暗い場所にいる敵を視認しやすくできる。ロールプレイングはこれとは対照的に、リアリティを重視したCGを高画質に再現できるよう、超解像技術やコントラスト感の向上を図る。スタンダードは多くのゲームに適するモードで、低遅延かつガンマなどをあまりいじらない素直な出画にしている。
遅延速度はシューティングが0.83ms、ほかが0.93msとなっており、低遅延という特徴は継承している。
視聴距離に対する新提案、テレビは高さの2.5~3倍の距離で観よう
これまでの4Kテレビでは「パネルの高さの1.5倍(1.5H)まで近づいて観ても大丈夫」といったアピールが多く行われてきた。ただしこれは、人間の目で画素を認識できる限界を基準に1.5Hという数字が計算されたに過ぎない。家庭のリビングで実際にそこまで近づいて観る人は少ないだろう。
大画面を訴求をするに当たり、レグザでは推奨する画面サイズについて改めて研究した。その結果として、まずポイントなるのは、ソファーなどに座ってテレビを見る場合のオススメサイズと、食事中のダイニングテーブルからでも不満なく観られる視聴距離という2つの軸で考える必要があるという点だ。
いつも観る場所の視聴距離は、画面の高さの2.5~3倍が自然。仮に2mの距離を取るのであれば、65V型以上、2.3mを超えれば77型や75型が良いとしている。加えて、ダイニング視聴距離として、視力1.0の人が心地よく電子番組表の文字を読める限界の距離も算出。こちらはおおむね画面の高さの6倍程度だという。
この数値は角解像度(cpd:cycle per degree)の概念から見ても自然だという。奥行き感や立体感を表現するための数値として重要で、視力1.0の人の場合、白い画素と黒い画素が交互に表示された映像で、1度あたり60画素(30cpd)を超えると画素の構造が検知できなくなる。
スーパーハイビジョンに関するNHK技研のレポートでは、60cpdに近づくにつれて映像の実物感がどんどん高まる一方で、それ以上では緩やかにしか上がらなくなるという結果が報告されている。一方、ノイズについては、5~10cpdではちょっとした差でも(白と黒などはっきりした輝度の振幅があるものでなくても)目立ちやすくなる。このあたりのバランスを考え、レグザとして最適と考えているのは50cpdあたりで、4Kテレビでは高さの2.5倍の距離に相当する。以上を踏まえて、バランスのいい大画面は高さの2.5~3倍程度なのだそうだ。
なお、レグザではこれより少し近づいた2H程度の距離での画質検証をしており、体感的にも近い数値になっているとする。そして、新シリーズでは、ミリ波レーダーの活用で、その前後の距離でもそれぞれに合った画質に調整できるようになった。