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Snowflakeがデータ活用の事例説明会を開催

3人の“データ・スーパーヒーロー”が語る、Snowflakeとデータ活用の最前線

2023年04月04日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 Snowflakeは2023年3月24日、同社がグローバルで選出しているエキスパートユーザー「Data Superheroes(データ・スーパーヒーローズ)」3名が登壇し、各社におけるデータ活用事例や外部データ活用について紹介する事例説明会を開催した。

SnowflakeのData SuperheroesであるGENDA(ジェンダ)の小宮山紘平氏、ノバセルの山中雄生氏

同じくData Superheroesであるtruestarの藤 俊久仁氏。そのほか外部データ/オープンデータ活用の紹介に関連して、法人番号の吉田裕宣氏、経済産業省の栁澤直孝氏も出席した

Snowflakeコミュニティに貢献する「Data Superheroes」とは

 説明会冒頭、Snowflake 社長執行役員の東條英俊氏とエヴァンジェリストのKT氏が、Data Superheroesの位置づけや特徴について紹介した。

Snowflake 社長執行役員の東條英俊氏、同社 マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 兼 エヴァンジェリストのKT氏

 Data Superheroesは、Snowflakeがグローバルでエキスパートを選出するプログラムだ。登壇、ブログ、動画などを通じて、Snowflakeユーザーコミュニティに知見やベストプラクティスを共有し、コミュニティに貢献していると認められるユーザーやパートナーに対し、Data Superheroesの称号が与えられる。

 2023年はグローバル18カ国から72名がData Superheroesに選出されており、うち10名を日本のユーザー/パートナーが占めている。この日出席したGENDAの小宮山紘平氏、ノバセルの山中雄生氏、truestarの藤俊久仁氏もData Superheroesの一員だ。

Snowflake「Data Superheroes」の位置づけと、2023年に日本から選出された10名

 「Data SuperheroesはSnowflake社外の方、ユーザーやパートナーから選出される『エキスパート中のエキスパート』。このプログラムの良いところは、Snowflake自身が紹介するよりも説得力がある、というところだ。実際に使ってみて苦心したところも含めて、最前線の方から実体験を情報発信いただいている」(東條氏)

 「スーパーヒーローと言えば“皆さんが困っているときに助けに来る”ような存在。Data Superheroesもまさにそういう存在で、素晴らしい事例を紹介したり、新しい技術をどう活用すべきかのビジョンを見せたりと、Snowflakeの技術を使ってあらゆる場所に革新を起こし、世界を変えようと取り組みを行っている人たちだ」(KT氏)

GENDA:グループ会社間や外部パートナーとのデータ連携も視野に

 日本全国および海外でアミューズメント施設「GiGO(ギーゴ)」を運営するGENDA(GENDA GiGO Entertainment)のデータエンジニア、小宮山紘平氏は、Snowflakeをデータ基盤として導入し、複数の目的で活用している事例を紹介した。

 GENDAでは、2022年春にSnowflakeを導入した。それまでアミューズメント事業部門にはExcelベースのデータ集計基盤が存在したが、集計処理には非常に時間がかかり、「これ以上はもう無理という状況。データの活用を阻んでいた」(小宮山氏)。さらに、他の事業部門では別のデータ基盤を導入しているため、社内でデータのサイロ化も発生していた。

 そこで、まずは店舗売上をはじめとするアミューズメント事業のあらゆるデータを集約し、一元管理するためのデータ基盤としてSnowflakeを導入した。Snowflakeに集約され、一次加工されたデータを、各部門やサービスが必要に応じて参照し、活用するかたちだ。

GENDAではデータ基盤をSnowflakeに統合し、各事業部やサービスで活用しやすい環境を構築した

 GENDAでは幅広い事業と業務でデータ活用を推進している。小宮山氏がまず紹介したのが、クレーンゲームにおけるデータ分析、およびオンラインクレーンゲームサービスへの機械学習(ML)の適用だ。

 近年、世界的なアニメブームを背景として、アニメキャラクターのぬいぐるみやグッズが獲得できるクレーンゲームの需要が急速に拡大している。他方で、コロナ禍を背景に在宅のアミューズメントが盛り上がり、GENDAグループが提供するオンラインクレーンゲーム(クレーンゲームをネット経由でリモート操作し、景品は自宅に届く)サービスも人気が高まっているという。

 ここではまず、クレーンゲームの景品発注を最適化するためのデータ分析にSnowflakeを活用している。小宮山氏は、これまでは重いExcelで非常に時間がかかっていた処理が、Snowflakeの導入によって高速化されたうえ、「そもそも必要なデータがどこにあるかわからない、といったトラブルも解消された」と語る。さらに、Excelでは実現できなかった集計方法や独自の指標算出を行い、さまざまな景品の評価と発注判断に役立てているという。

 一方、オンラインクレーンゲームサービスにおいては、機械学習を適用したレコメンド機能を提供している。「オンラインクレーンゲームは、取りたい景品があるクレーンを選んでプレイする。そこで『この景品が欲しい人は、こちらの景品(クレーン)にも興味があるはず』とユーザーの好みをMLで分析し、レコメンドを行う仕組み」(小宮山氏)。

クレーンゲームの景品発注最適化、オンラインクレーンゲームのユーザーへのレコメンドにSnowflake上のデータを活用

 もうひとつ、データ活用の大きな目的となっているのが「アミューズメント施設運営のDX推進」だという。

 かつてのアミューズメント施設では、個人とひも付いたプレイ履歴が蓄積できておらず、個々人の好みに合わせたサービスが提供できていなかった。また、各施設のデータ運用にも“紙とペン”の非効率な部分が残っており、必要なデータに素早くアクセスできない、会社として迅速な意思決定ができないという課題があった。

 そこで会員ユーザー向けに「GiGOアプリ」を提供し、ユーザー個々人のプレイ履歴に基づくキャンペーン情報やサービス(クーポン券など)を提供している。また、施設運営に必要なデータ閲覧ツールを社内開発し、運営の効率化や定常作業の工数削減などを実現した。POSデータや店舗のExcelデータなどをSnowflakeに収集/加工したうえで、Amazon RDS経由で閲覧ツールが参照する仕組みだ。

来店客個人の好みに合わせたサービス、施設運営のDX推進にもデータを活用している

 データ活用基盤として、同社はなぜSnowflakeを選んだのか。小宮山氏は、その導入前にはまず「Google BigQuery」と「Amazon RedShift」を比較検討していたと明かした。

 「GENDAのサービスではAWSを利用しているため、BigQueryを採用するならばデータをGoogle Cloudへ転送する必要があり、かなり大変そうだった。またBigQueryはやや特殊な料金体系で、コスト最適化されたクエリだけが飛んでいればコストメリットも大きいが、GENDAの組織構造的にそれが難しかった。一方でRedShiftは前職で運用経験があったが、安定稼働させるためには担当者が必要であり、運用工数がかかると予想された。つまり、どちらのサービスも“痛しかゆし”だった」(小宮山氏)

 そこで第三の候補を探してみたところ、Snowflakeの名前が浮上してきたという。AWSと連携がしやすい、運用コストがかからない、料金体系がわかりやすい、といった点を評価したという。「Snowflakeは、目立った強みがあるわけではなかったが逆に目立った弱みもなく、一方で運用のしやすさはかなり好印象だった」(小宮山氏)。

 もうひとつ、Snowflakeがクラスクラウド/クロスリージョンのアーキテクチャや、データシェアリング(データ共有)の機能を備えている点も「GENDAと相性が良さそう」だと考えたという。今後、アミューズメント以外の既存事業にも共通データ基盤を拡張したり、グループ企業や外部協業企業との間でプライバシーやセキュリティを担保しながらデータ共有を行ったりする展開も視野に入れて、Snowflakeを選択した。

BigQueryやRedShiftを比較検討したのち、将来的なデータ活用の展開も視野に入れてSnowflakeを選択

 Snowflakeの導入成果として、小宮山氏は「とにかく運用が楽に、素早くできるようになったというのが現在の印象」だと語った。定常的な管理運用工数は「ほぼゼロ」で、集計処理はExcelだと2分かかっていたものが5秒で済むようになった。さらにExcelで不可能だった集計も可能になり「データ活用の幅が広がった」という。

 最後に小宮山氏は、今後のデータ活用の展望として「アミューズメント施設運営以外へのSnowflakeの横展開」「GENDAグループ会社間でのデータコラボレーション」の2つを挙げた。「1つのサービスで得たデータ、知見を、(グループ内の)複数のサービスで活用できるような基盤を作っていきたいと考えている」(小宮山氏)。

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