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北九州市のスタートアップ支援がなぜ熱いかわかる 6プログラム30事業者登壇のデモデイ開催

2023年3月29日、30日に開催 北九州市のスタートアップ支援事業合同デモデイ「WORK AND ROLE 2023 KITAKYUSHU」

提供: 北九州市

 北九州市は、官営八幡製鉄所の操業開始以降、日本の製造業を支え、近年は、環境エネルギー、ロボット、情報通信産業が集積する「ものづくりの街」として発展している。2020年には内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点都市」の選定を受け、スタートアップの成長段階に応じた様々な支援を一気通貫で実施している。北九州市のこれまでの取り組みと、強みである環境やロボット、DX分野を活かしたエコシステム形成への展望を伺った。

 北九州市の支援事業の2022年度の成果報告会、合同デモデイを兼ねる大規模スタートアップイベント「WORK AND ROLE 2023 KITAKYUSHU」を2023年3月29日、30日に北九州国際会議場にて開催する。イベントでは、スタートアップ推進課が実施する5つの支援事業に加え、JETRO北九州が実施する海外展開支援プログラムを含めた6つのプログラムからスタートアップ30社(者)がプレゼンテーションで登壇。

 北九州出身のPIVOT株式会社代表取締役CEO 佐々木紀彦氏やSpace BD株式会社代表取締役社長 永崎将利氏など、活躍している起業家を招き、株式会社Shiftall 代表取締役CEO 岩佐琢磨氏や株式会社ABBALab 代表取締役 小笠原治氏などプログラムの支援者、識者が参加するパネルディスカッションが3つと大規模なスタートアップイベントとなる。

WORK AND ROLE 2023 KITAKYUSHU
https://sep-k.com/demoday

「日本一起業家に優しいまち」をコンセプトに環境、ロボット、DX系スタートアップを中心に支援

 北九州市では、強みである環境エネルギー、ロボット、DX推進を中心としたスタートアップの創出、成長を促すエコシステム構築に取り組んでいる。今回、北九市のスタートアップ支援事業を担当する北九州市産業経済局 スタートアップ推進課 谷本真一拠点化担当係長と井上篤氏の2人に北九州市のスタートアップ支援事業について話を聞いた。

 環境エネルギー分野は、北九州市では過去に重工業による公害が問題となり、市民と行政が一体となって克服した歴史がある。そこで蓄積された環境技術が海外への環境国際協力へと結びつき、昨今のSDGsへの関心の高まりから、環境関連スタートアップの集積化につながっている。

 ロボット分野では、産業用ロボットのトップメーカーである株式会社安川電機を筆頭にロボティクス企業や関連する情報通信産業が集まる。また、地元の理工系大学である九州工業大学、九州大学との産学連携による共同研究や次世代の人材育成にも力を入れている。

 北九州市のスタートアップ支援は、2013年の北九州市の新成長戦略のなかで、「ベンチャー企業の創出・育成」を1つの大事な要素として掲げたのが始まりだ。2017年に「日本一起業家にやさしいまち」をコンセプトに支援プログラムを実施。最初に始まった事業がMaker's Projectだ。

 続いて、2018年には、北九州テレワークセンターを大幅リニューアルして創業支援の中核拠点として、愛称「COMPASS小倉」の名のもと、運営を開始した。施設内には大規模なコワーキングスペースが開設されるとともに、アイデアから事業化をサポートするCOMPASS小倉アクセラレーションプログラムをスタートした。

北九州市産業経済局 スタートアップ推進課 谷本真一拠点化担当係長(左)と、井上篤氏、COMPASS小倉にて撮影。

創業前からグローバル展開まで5つの支援プロジェクトが稼働

 その後、市内企業や大学、行政を含めた「北九州市SDGsスタートアップエコシステムコンソーシアム」を組成。北九州市にスタートアップ推進課が設置され、地元企業と金融機関等14社からなる実行委員会が主体となり強力に伴走支援するグローバルアクセラレーションプログラム「GAP-K」がスタート。さらに2021年には、スタートアップSDGsイノベーショントライアル事業「SIT-K(Startup Innovation Trial Kitakyushu)」が立ち上げられた。

 SIT-Kは実証支援と事業化支援の2つの事業に分かれており、実証支援プログラムは、実証フィールドと最大250万円の補助金が受けられる。事業化支援プログラムは、北九州市の認定VCからの資金調達実績があり、市内に拠点をもつスタートアップが対象。採択される専門家の伴走支援と最大2000万円の補助金が提供される。応募要件にある認定VCは、北九州市が公募し、現在20社を認定。VCをプログラムに巻き込むことでVCの目利きによる支援や適切な出資で成長の確度が上がり、エコシステム形成にもつなげるのが狙いだ。なお、市外のスタートアップも3年間は市内に拠点を置いて活動することを条件にエントリー可能だ。

 これらのスタートアップ支援事業に加えて、地域の産業を引き継き、発展させていくため、次世代の起業家を育成するアントレプレナー教育にも力を入れている。
 学生の起業意識やスタートアップへの関心を高めるため、学生向けの交流会としてピザパーティーを月1回程度開催。参加費100円という気軽さから近隣の大学生や高校生が集い、スタートアップピッチやイベントを通じて、メンバーやインターンにスカウトされることなどが狙いだ。

 2022度は小中学生向けのキャリア教育として、スタートアップ企業の経営者との出会いを通じて起業や経営を学ぶワークショップを開催した。今後もアントレプレナー教育につながる取り組みを実施していく予定だ。

 大学からの起業促進は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の「大学・エコシステム推進型スタートアップ・エコシステム形成支援」の採択を受け、九州大学と九州工業大学を主幹機関とした大学発スタートアップエコシステム「PARKS(Platform for All Regions of Kyushu & Okinawa for Startup-ecosystem:パークス)」を2022年に設立。アントレプレナー教育から起業支援までを一気通貫で実施し、2026年末までに155社の起業を目指している。

 またジェトロ北九州主催で英語ピッチのスキルを身に着ける3カ月間の北九州ブートキャンプを実施し、CESを視察するなど、将来の海外展開を見据えた取り組みも始めているそうだ。

支援プログラムから生まれたスタートアップは成長フェーズへ

 コンソーシアムの設立から2年を経て、プログラムから生まれたスタートアップが成長フェーズに入ってきている。そのなかで注目のスタートアップをいくつか挙げてもらった。

 2021年度のSIT-K実証支援事業に採択されたSWAT Mobility Japanは、シンガポール発のモビリティスタートアップ。同社独自のルーティングアルゴリズムを活用し、北九州市営バスのダイヤ効率化の実証実験を実施し、ダイヤ改正など具体的なサービス改善につなげるため、今年度も引き続き協業しているそうだ。

 2022年度のSIT-K事業化支援に採択された株式会社EV モーターズ・ジャパンは、環境関連のスタートアップ。同社は商用EVの開発に取り組んでおり、北九州市内に商用EV専用組立工場を含む体感型EV複合施設「ゼロエミッションe-PARK」を建設中で、2023年度からの稼働を目指している。

 工事現場向けコミュニケーションツールを開発する株式会社クアンドは、2017年度のMaker's Project(当時のプロジェクト名は「北九州でIoT」)、2020年度のGAP-K、2021年度のSIT-Kの事業化支援事業、本年度はSIT-Kの実証支援事業に採択されている。GAP-Kを通じて安川電機へのプロダクト導入に至っているそうだ。

 産業用ロボットハンドを開発するKiQ Robotics株式会社も2020年度のGAP-K、2021年度のSIT-Kの事業化支援事業に採択。2022年度はSIT-Kの実証支援事業に採択され、廃棄物選別処理ラインへのピッキングロボット導入に向けて実証実験を進めている。

5事業連携で合同キックオフや交流会、デモデイを開催

 これまで、スタートアップ推進課が実施する5つの支援プログラムは個別に運営されていたが、2022年度からは5事業合同でキックオフや月1回の交流イベントを実施している。成長フェーズの異なるスタートアップや企業、学生との交流を深めることで、協業や産官学連携などエコシステム形成を促すのが目的だ。

 そして、2023年3月29日、30日に5事業合同とJETRO北九州が実施する海外展開支援プログラムで合同実施する成果報告会を兼ねた大規模スタートアップイベント「WORK AND ROLE 2023 KITAKYUSHU」を開催する。採択企業の成果発表のほか、トークセッションも実施予定だ。

 アイデアからのプロトタイプ開発、実証実験、事業化支援まで、様々な成長フェーズのスタートアップが行ってきた取組の成果や今後の展望を聞くことができるので、来年度以降に支援プログラムの応募を検討している市内外のスタートアップには参考になりそうだ。

 デモデイ期間中は終日、交流会場にスタートアップの展示ブースが設けられているので、企業のオープンイノベーション担当者、地元の中小企業、新しい技術や起業に興味のある学生など、多くの人に参加してほしいそうだ。

 将来的にはエコシステムが形成され、民間主体で起業や事業創出のサイクルが自走していくのが理想だ。北九州市では、多くのプレーヤーを巻き込んでいくため、今後もイベント等を積極的に開催して、スタートアップエコシステムを盛り上げていく施策を進めていくとのことだ。

(提供:北九州市)

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