メルマガはこちらから

PAGE
TOP

教育のデファクトスタンダードとなる記憶定着サービス目指すMonoxer

「単なる記憶のためのサービスに終わらない」モノグサ代表取締役 CEO竹内孝太朗氏インタビュー

連載
ASCII STARTUP 今週のイチオシ!

1 2

 2016年に誕生したモノグサ株式会社は、記憶定着のための教育サービスを提供している。創業者で代表取締役 CEOの竹内孝太朗氏は、「我々が提供するサービスMonoxerを使わざるを得ないと、誰もが思うくらいの実績を出していきたい」と話す。竹内氏がモノグサというスタートアップで目指すのはどういった世界になるのだろうか?

紙よりも効率的な記憶定着を目指す

 モノグサが提供する「Monoxer」は、勉強で覚えたものを記憶として定着させることを支援するサービスだ。同じ学校に通い、同じ教室で授業を受けても、きちんと覚えている人もいるのに、全く覚えられない人もいる。

 モノグサ創業者で、代表取締役 CEOである竹内孝太朗氏は次のように問いかける。

 「覚える方法にはいろいろあります。例えば漢字を覚える場合、『一つの漢字につき、5回書き取りをすること』といった宿題が学校で出る場合がありますが、それで本当に漢字を覚えるベストな方法でしょうか?」(竹内氏)

 さらに竹内氏は続ける。「2011年ごろから行なわれている記憶の研究では、単純に書いて覚えるよりも、解いて覚えることが記憶を定着させることに有効だという結果が出ています。しかし、学校などの覚えることを求める現場では、研究に基づいた効果的な記憶の定着に取り組むといった動きはありません。我々が取り組むのは、『解いて覚えることでの記憶定着の促進』です」

 解いて覚える場合、必ず答え合わせを行なう必要がある。だが、これには手間と時間がかかるため、解いて覚えることの有効性はわかっていても、学校の教員などが手作業で行なう場合、導入が難しいという側面があった。Monoxerの場合、アプリを通して機械が正解か否かを即座に判定する。漢字の書き順まで正しく判定できるので、結果しか判断ができなかった人間の判定よりも正確な判定が下せる場面すらあるという。また2022年10月には、「数式手書き認識機能」対応を発表済みで、数学や物理といった複雑な数式問題における学習まで対応している。

 こうした成果が評価され、導入する塾などが着実に増えている。2022年4月からは代々木ゼミナールが高校生、高校卒業生向けに導入している。入試で必要な英単語や古文単語などが憶えられる代ゼミオリジナル教材や、代ゼミ講座連動型のチェックテストをMonoxer上に問題集として搭載。知識分野の記憶定着と、代ゼミの講義内容についての理解度確認および復習が、自分のスマートフォンやタブレット端末で行える環境を作った。

 さらに、学習計画機能の活用によって、生徒それぞれの学習計画を作成することや、小テスト機能を活用することで、紙のプリントで実践されていた代ゼミ講座の連動チェックテストをMonoxer上で行なう。効率的に覚えるにとどまらず、学習計画や習熟度合いを効果的に記録し、今後の学習計画に活かしていく。

 「既存の学習塾は大量の学習コンテンツをお持ちです。しかし、デジタル化が思うように進んでいませんでした。PDF化までは実現したのですが、これだけでは学習成果のログを取るといった学習状況の進捗把握が難しい状況だったことから、我々がデジタル化のサポートをさせてもらいました」

 塾や学校以外にも医療系、美容系の専門学校や企業の資格取得など導入例は増えている。数値で示せる導入効果もすでに出てきている。学校法人安田学園中学校・高等学校が英検対策と自宅学習サポートとしてMonoxerを全校に導入したのは2020年。

 「中学2年生での英検3級全員取得については、Monoxerを導入したことで、特定クラスの合格率は1年間で約50%から93%までアップしています。また、高校2年生で英検準2級取得という目標についても合格率が3割から5割まで上昇したそうです」

 導入する学校が年々増加していることに加え、こうした実績が着実に出てきていることから竹内氏は自社のビジネスに自信を見せる。

数学などの非暗記科目での活用を模索

 順調に導入学校が増え、成果もあがっているものの、課題も残っている。そのひとつが数学への本格的な対応だ。単語を覚える必要がある英語や、漢字を覚える国語は記憶を定着させるMonoxerの特性と合致している。覚える要素がある古文でも同様だ。が、数学のように覚える要素が少ない科目ではどう学習させていくのか工夫が強いられた。上述した数式手書き認識機能の追加もここを見越して作られている。

 「数学に関しては料理と一緒ではないか? と考えました。例えばきんぴらゴボウを作るとなると、ゴボウが目の前にあってもそこからゴボウをどう処理し、どんな順番で調理していけばいいのかわからない。数学も同じだと思いました。問題に対して何をどうすればいいのか、手順と選択肢を理解していないと問題を解くことはできない。最適の手順をきちんと覚えて問題を解くテクニックを覚えていきましょうというスタイルとしました」(竹内氏)

 この数学を解くためのテクニックを覚えるというやり方に対しては、「それは記憶というより思考力を養うものでは?」という疑問の声もあがったという。それに対し竹内氏は、「やはりきんぴらゴボウを作る際の例えで答えさせてください。ゴボウは、太い部分は容易に包丁の刃ではなく、背中の部分で皮をそぎ落として、その後、適切な大きさに切って調理を行います。ところが、先端の細い部分は太い部分と同じように皮を剥こうとしてもうまくいきません。まな板の上に置いてよく洗って細く切って調理するといった知識を元にした調理をしなければなりません。数学も同様だと思います。ここでこうするというテクニックを覚えておくことで、適切に問題を解くことができるのだと思います」

 きんぴらゴボウを自分で調理したことがあれば、利用する部位によって適切な知識をもとにした調理が必要ということは理解できる。思考力というより、経験を元にした知識をもとにした調理というべきか。

 「調理における最適な作業を選ぶ工程は、数学でいえば適切な数学の公式を選択するということになるかと。まな板を使った方が楽なのに、まな板を使わないやり方でゴボウを切るというのは数学でいえば計算間違いに該当するのかと思います。テクニックをコーチして、特定ステップを試していくという工程が記憶するというところに該当するのではないかと思います」

 こうした発言から、数学をMonoxerで勉強するためにさまざまな試行錯誤をしていることがうかがえる。覚えるだけでは対応できない数学を利用できるようにするか、否かは重要な局面となる。

 「数学でも使える! と認識されるようなサービスとなっていけば、単なる記憶のためのサービスに終わらないものになります。これができるようになれば、我々の目指すマーケットは競争相手がいないブルーオーシャンになるのです」

 今後、理系人材を増やすため文系人材の理系転換などが進む見込みで、「その時にはMonoxerを使って数学を学ぶ需要が拡大するはずです。その時のためにも数学への対応は欠かせないものとなります」と今後の需要拡大も見込んで数学への対応を2023年度に向けて進めていく。

 数学に対応することで国語、英語、理科、社会と主要5科目全ての対応が完了する。勉強のためのサービスとして環境が整うことになる。

1 2

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー