AIにDoomをプレイさせる
トレーニングは3日で完了
実際に人物検出のデモなども行なわれたが、実はこの程度のことであれば他のAIプロセッサーでも当然可能なわけで、性能を示すためにはあまり役に立たない。
Syntiantもそう思ったのだろうか? なかなかユニークなデモを行なってくれた。Doomをプレイさせるというものだ。下の動画の8分57秒あたりから説明がある。
Doomといっても本物のDoomではなく、VizDoomを利用している。VizDoomそのものは2016年から提供されている、AIで操作させるプレイヤーのため開発されたDOOMのプラットフォームであり、プレイヤーは画面の情報「だけ」を利用して操作することが許されている。このVizDoomをNDP200に移植した。
まず最初は円形の部屋のど真ん中に位置し、そこで数千回ものプレイを学習して、モンスターを撃ち殺すことと360度の回転を学習。その後に移動することを学習したという。
ここである程度の学習を終えた後で、もう少し複雑な迷路内のプレイに移行し、こちらでのトレーニングを完了するのに3日ほどかかったという。
ただ、こんなローエンド向けのチップでたったの3日でトレーニングが完了した、というあたりからもNDP200の性能の高さをうかがい知ることができる。
もう少し定量的なベンチマークとしては、ArmのCortex-A53コアと比較した場合の数値がある。それが下の画像だ。0.25 MobileNetV1の処理性能は30倍以上、性能効率は100倍にもおよぶとしている。
実際の使い方としては、それこそ冒頭で書いたように人物検出などであれば端的に言えば1~2fpsでも普通は足りるわけで、6fps(つまり0.1秒ごとに検出)の場合の消費電力は1mWに過ぎないとされる。これは相当に低い数字であることがわかるだろう。
すでにNDP200は評価ボードだけでなくチップでのサンプル出荷も開始されている。製品ページには40ピンのQFP(Quad Flat Package:リード線が四辺に出ている平面実装パッケージ)とあり、複数のパッケージオプションがありそうである。
メモリー搭載量の増加などもあって若干NDP100シリーズよりは大型化しているが、それでも十分小さい(7.8mm2)サイズであり、組み込み機器への導入も容易だろう。引き続きSyntiantは、こうしたEndpoint AI向けのソリューションに注力している、ということがよくわかる発表であった。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ