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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第708回

Doomの自動プレイが可能になったNDP200 AIプロセッサーの昨今

2023年02月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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AIにDoomをプレイさせる
トレーニングは3日で完了

 実際に人物検出のデモなども行なわれたが、実はこの程度のことであれば他のAIプロセッサーでも当然可能なわけで、性能を示すためにはあまり役に立たない。

0.25 MobileNetV1を利用して、90%の確率で人物認識ができるとのこと

 Syntiantもそう思ったのだろうか? なかなかユニークなデモを行なってくれた。Doomをプレイさせるというものだ。下の動画の8分57秒あたりから説明がある。

 Doomといっても本物のDoomではなく、VizDoomを利用している。VizDoomそのものは2016年から提供されている、AIで操作させるプレイヤーのため開発されたDOOMのプラットフォームであり、プレイヤーは画面の情報「だけ」を利用して操作することが許されている。このVizDoomをNDP200に移植した。

VizDoomをNDP200に移植。3層のネットワークでパラメータは606K個だそうで、ギリギリパラメータバッファに収まるサイズに調整したようだ

 まず最初は円形の部屋のど真ん中に位置し、そこで数千回ものプレイを学習して、モンスターを撃ち殺すことと360度の回転を学習。その後に移動することを学習したという。

先の動画で言えば12分12秒あたりから、この“Defend the Center”の動画が再生される

 ここである程度の学習を終えた後で、もう少し複雑な迷路内のプレイに移行し、こちらでのトレーニングを完了するのに3日ほどかかったという。

動画で言えば12分51秒あたりから、この“Deadly Corridor”の動画が再生される。動作は7種類(前後左右の移動と左右の回転、射撃)に増えたそうだ

 ただ、こんなローエンド向けのチップでたったの3日でトレーニングが完了した、というあたりからもNDP200の性能の高さをうかがい知ることができる。

 もう少し定量的なベンチマークとしては、ArmのCortex-A53コアと比較した場合の数値がある。それが下の画像だ。0.25 MobileNetV1の処理性能は30倍以上、性能効率は100倍にもおよぶとしている。

Cortex-A53コアとの性能比較。これはシミュレーションを利用した推定値ではなく、40nmプロセスで製造した実シリコンを使っての実測値であることに注意

 実際の使い方としては、それこそ冒頭で書いたように人物検出などであれば端的に言えば1~2fpsでも普通は足りるわけで、6fps(つまり0.1秒ごとに検出)の場合の消費電力は1mWに過ぎないとされる。これは相当に低い数字であることがわかるだろう。

 すでにNDP200は評価ボードだけでなくチップでのサンプル出荷も開始されている。製品ページには40ピンのQFP(Quad Flat Package:リード線が四辺に出ている平面実装パッケージ)とあり、複数のパッケージオプションがありそうである。

サンプル出荷されたチップ。こちらはWSCSPかなにかのパッケージのようだ

カタログの写真では確かにQFPなのだが……

 メモリー搭載量の増加などもあって若干NDP100シリーズよりは大型化しているが、それでも十分小さい(7.8mm2)サイズであり、組み込み機器への導入も容易だろう。引き続きSyntiantは、こうしたEndpoint AI向けのソリューションに注力している、ということがよくわかる発表であった。

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