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カーボンニュートラルの実現へ 技術で貢献するスタートアップ5社

「第49回 NEDOピッチ(カーボンニュートラル ver.)」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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プラスチックながらカーボンニュートラルに貢献
バイオマス複合プラスチック材料の開発

 野本氏に続いてスタートアップ6社のピッチが行われた。アイ-コンポロジー株式会社 代表取締役の三宅仁氏だ。

アイ-コンポロジー株式会社 代表取締役 三宅 仁 氏

 同社が手掛けているのが、バイオマス複合プラスチック材料の「i-WPC」だ。30~55%がバイオマス原料でできており、プラスチックながらカーボンニュートラルに貢献できる。さらに様々な成形に対応できるのも特徴だ。

「今回お話したいのは、東京都立産業技術研究センターと共同開発した、海水で生分解する複合材料『Biofade』です。これは「i-WPC」から派生してできたもので、脱CO2に加えて、海洋生分解性があり、土壌やコンポストの中ではさらに生分解が速く進みます。バイオベース度はさらに高く70~90%で、脱CO2にもかなり貢献できます」

 そもそも、「Biofade」の生分解には2段階ある。1段階目が加水分解で、バクテリアが出す酵素により、エステル結合が切れることで寸断される。この状態ではマイクロプラスチックといえるが、さらにある種のバクテリアが細かくなった部品をエサとして食べることで、水とCO2に分解され、マイクロプラスチックを残さない。これが「生分解」の最大の特長だ。

 原材料は間伐材や端材、稲わら、麦わらなどのバイオマスと数種の生分解性樹脂。これらをうまく混ぜてペレット化して成形することができる。さらに配合によって生分解速度も物性も調整することができるという。

「プラごみの半分以上は漁業ゴミです。そこで、本当に海水で生分解できるのかを東京都のものづくりベンチャーで浮き球などを作ってテストしました。120日ぐらい経つと表面の生分解が進んでいました。薄いシートだと100日もあれば生分解が進みなくなってきます」

 さらに牡蠣養殖用のパイプやルアー、歯ブラシなども成形もできている。「i-WPC」と「Biofade」ともに、射出成形、ブロー成形、真空成形にも対応しており、すでにアサヒユウアスとコラボした「森のマイボトル」や「森のタンブラー」などの商品も実現している。

 最後に三宅氏は、「いろいろな会社からお声がけいただくが、持続可能な社会を目指す熱意を持つ企業と協業していきたい」と語った。

太陽の拡散光を照明として活用することで
省エネとCO2排出削減を実現

 続いて、ひかり屋根株式会社のセールス/ビジネス企画マネージャーの山川進氏が登壇した。ひかり屋根とは、太陽光を照明として活用できる「光拡散天窓W470」、太陽光と人工照明のハイブリッド照明調光システム「ひかり屋根つなぐ」からなる同社の製品特許を指す。

ひかり屋根株式会社 セールス/ビジネス企画マネージャー 山川 進 氏(右)
株式会社千代田組 高橋 寿興 氏(左)

「太陽光はサステナブルでしかもコストはかかりません。これをなぜ、照明として使えないのか、素朴な疑問でした。工場や物流倉庫など大きな施設では昼間でも照明が煌々と光っています。そこで天窓から取り入れた光を照明に使えばいいのではと考えたのですが、天窓の採用が進まない理由もありました」

 天窓の真下は非常に明るく3万ルクスぐらいの光が差し込むが、そこだけが眩しいぐらいに明るくなり、その他は暗い状態になる。さらに室内の温度上昇や暴風雨時の漏水問題など、天窓照明には様々な問題があった。

 ひかり屋根の「光拡散天窓」は、ガラスの下にポリカーボネートの光拡散板を差し込むことで、庫内全体が2500ルクスぐらいの均一な明るさにできる。さらに特許技術の2次防水構造により、漏水問題を解決。さらに高所での作業もより簡単にできるようになっているという。

 また、雨天時など十分に太陽光が差し込まない場合の対策として、太陽光パネルの出力を元に室内の照度を予測するハイブリッド調光/点消灯を実現。照度センサーによる制御が難しい、8m以上の高さのある空間でも正しく、80%以上の省エネを実現できるそうだ。

 さらに実際にひかり屋根の製造から販売、設置を実施している株式会社千代田組の高橋寿興氏も登壇。光屋根の設置例やレイアウトなどに付いての説明があった。

「お客様の建屋の情報を頂きまして、照度計算をした上でレイアウトをします。だいたい、屋根の合計面積の2~5%で十分な明るさが得られるということになっております。同時に調光システムの導入効果シミュレーションもお出ししています。また、施工に関しても、屋根の上で作業ができるので、スピードが早く、一般天窓よりも設置面積は少なくてすみます」

 さらに千代田組では実際にひかり屋根を導入した関連会社の見学施設を用意。「光拡散天窓W470」、「ひかり屋根つなぐ」を実際に見ることができる。

 グロービス・キャピタル・パートナーズの野本氏からの「何を事業上の課題と考えているか」という質問に対し、山川氏は「こういう商品があるという認知度に課題があると考えている」と回答。施工例を増やして認知度をあげていきたいと語った。

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