エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編

SOMPO美術館(西新宿)の“おいしい”ボタニカル・アート展は英国キュー王立植物園が特別協力しているぞ

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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 SOMPO美術館(新宿区・西新宿)は2022年11月5日、食用となる植物を描いたボタニカル・アート(植物画)の展覧会を開幕した。この展覧会は、英国キュー王立植物園の協力のもと、野菜、果物はもちろん、ハーブやスパイスなど、身近なものから珍しいものまで、さまざまな食材を使って植物(食物)にまつわる物語を紹介している。英国キュー王立植物園は、ロンドン南西部のリッチモンド地区にあり、「キューガーデン」として知られる。

 今回の展示では、古いレシピや、食卓を飾るティー・セット、カトラリーなどの資料類も展示し、「おいしい」ボタニカル・アートを通じて、イギリスの歴史と食文化をたどっていく。本来は学術研究として精緻に描かれた植物の絵は、リアルでありながら、絵画としての美しさを持ち、独特のタッチが人を惹きつける。

一枚目の写真は、第2章のイギリスで愛された果実『ポモナ・ロンディネンシス』から、リンゴ「デヴォンシャー・カレンデン」(1818年、ウィリアム・フッカー。個人蔵。写真右)、リンゴ「リブストン・ピピン」(1818年、ウィリアム・フッカー。個人蔵。写真左)。二枚目は第2章の様子

 食材ごとの展示は空腹感必至でヴィクトリア朝のダイニング・テーブルも必見

 ボタニカル・アートとは、薬草学や植物学といった科学的研究を目的として、草花を正確かつ緻密に描いた「植物画」のことを呼び、17世紀の大航海時代、珍しい植物を追い求めたプラント・ハンターたちの周辺で多くのボタニカル・アートが描かれた。専門の画家も活躍し急速に発展、18世紀以降には科学的な目的に加え、芸術性の高い作品も描かれるようになった。

 展示は、プロローグと6章からなり、SOMPO美術館の収蔵品も、テーマに合わせて、東郷青児の「かぼちゃ」、ポール・セザンヌの「りんごとナプキン」が展示されている。各章は、農耕と市場や野菜、果実、茶、コーヒー、チョコレート、砂糖、アルコール、ハーブ&スパイスなど食物のジャンルでまとめられている。

 今回、特別協力として参画している英国キュー王立植物園は、1759年に宮殿に併設された、熱帯植物を集めた庭園で、現在では120ヘクタールの敷地に4万種以上の植物が育ち、700万点以上の植物標本、菌類および地衣類の標本125万点を持つ、世界最大の植物園となっている。 1840年には、植物園として開放され、2003年には世界遺産に登録されていて、年間100万人以上が訪れる人気の観光スポットになっている。1910年にロンドンで開催された日英博覧会のために造られた美しい日本庭園と京都の西本願寺唐門のレプリカは有名。

英国キュー王立植物園内のパーム・ハウス。Photo by DAVID ILIFF. License: CC BY-SA 3.0

キュー王立植物園から内覧会に駆け付けた同植物園のキュレーター、リン・パーカーさん(イラストレーション・アンド・アーティファクト・コレクション)

●展示の見どころ

 パン切り台とナイフ。1900年ごろ。木、スチール

 ヴィクトリア朝のダイニング・テーブル・セッティング。ヴィクトリア朝の主婦のバイブル『ビートン夫人の家政読本』を参考に、19世紀のテーブル・セッティングを展示室内にフォト・スポットとして再現

 ブレジア=クレイ家のレシピ帖。メアリ・ブレジア(旧姓クレイ)。1798年。インク、紙。白いスープ・メーグル(スープ・メイガー)

 東郷青児『かぼちゃ』。1940年ごろ。水墨、和紙。SOMPO美術館蔵

 ポール・セザンヌ『りんごとナプキン』。1879~80年。油彩、キャンバス。SOMPO美術館蔵

●彩り鮮やかなミュージアム・グッズ

●展覧会概要
場所:SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)
会期:11月5日~2023年1月15日
観覧料(当日券。事前購入券は公式サイト参照):一般1600円、大学生1100円、小中高校生無料、障がい者手帳をお持ちの方無料
休館日:月曜日 ※展示替期間、年末年始(12月29日~2023年1月4日)※ ただし1月9日は開館

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