メタが10月12日に開催した「Meta Connect 2022」。基調講演で強調していたのはアバターです。マーク・ザッカーバーグCEOのアバターの出来が世界的に否定的な反応を引き起こしてしまった、8月の「アバター事件」をすごく気にしていたことも垣間見えました。魅力的なパートも多かったのですが、後から見直すと色々とどこまでそのまま受け取っていいのかと、疑惑を感じる部分も多い内容でもありました。
「新アバター」実はVR向けじゃなかった
アバターに関して言えば、そもそもの始まりはメタが自社のメタバースサービス「Horizon Workroom」向けにリリースしたアバターに下半身がないと批判されたことでした。Quest 2向けに作っている以上、クオリティには自ずと限界があります。多くのアバターを同時に出そうとすると、どこかで処理を減らさないといけなくなります。そこでメタとしては「足を切っても十分に成立する」という判断をしたのでしょうが、反発は予想以上に大きかったんですね。
ただ、比較されたのは人気のVRチャットアプリ「VRChat」でしたが、同じように子ども向けに人気のVRチャットアプリ「RecRoom」も下半身がないので、イメージとしてはそんなに悪くないはずなんですよね。それでもVRを触ったことがない人にとって「足がない」というのはすごく違和感があり、それがメディアを通じて強調されて伝わってしまった部分もあったと思います。
そんな中で起きたのが、例のアバター事件でした。8月にザッカーバーグ氏が自身のフェイスブックページでアバター画像を投稿したんですが、それが「1兆円もかけて開発しておいてこんなにしょぼいアバター?」などとボロカスに言われてしまいました。
そこで、ザッカーバーグ氏はすぐ「Horizonは急速に改善が進んでいます」と言って新しいアバターを出しました。しかし、今回の基調講演でその画像は一種のトリックだったことがわかったんです。
あのアバターはメタが昨年6月に買収したメタバースサービス「Crayta(クレータ)」の画像ではないかと考えられます。つまり、別の意図で作っていた画像をあのとき急きょ出したんじゃないかということです。
CraytaはGoogle Stadia向けの独占タイトルとして作られたもの。「ROBLOX」のような子ども向け市場を取りに行くねらいのあるタイトルなんですが、開発はUnreal Engineで基本的にアプリベースなんです。VRに対応しないので画面のクオリティが高いんですね。それが今回、Craytaの説明で同じ背景画像を使っていたのでほぼ確定となりました。
当時のスクリーンショットのアバターをよくよく見ると、シェーダー(陰影)やライティング(照明)がUnreal Engineっぽいんですよね。一方、メタのHorizon WorldsはUnityベースなので、それもあって疑問符がついていたところがありました。今回のアバターはUnreal Engine用のデータをUnity用に変換したものではないでしょうか。一切発表はないので確証は取れないんですが。
この連載の記事
-
第85回
AI
3DモデリングにAI革命の兆し 1枚のイラストから3Dデータが完成 -
第85回
AI
誰でもVTuber時代へ フェイシャルAI技術、続々登場 -
第84回
AI
画像生成AI「Stable Diffusion 3.5」性能はものたりないが、自由度が高いのは魅力 -
第83回
AI
リアルすぎてキモい 動画AIの進化が止まらない -
第82回
AI
もはや実写と間違えるレベル 動画生成AI「Runway」の進化がすごい -
第81回
AI
AIイラスト、こうしてゲームに使っています -
第80回
AI
ゲーム開発はAI活用が当たり前になりつつあるが、面白さを作り出すのは人間の仕事 -
第79回
AI
AIが考える“アイドル”がリアルすぎた グーグル「Imagen 3」なぜ高品質? -
第78回
AI
話題の画像生成AI「FLUX.1」 人気サービス「Midjourney」との違いは -
第77回
AI
画像生成AI「FLUX.1」が相当ヤバい LoRAで画風の再現も簡単に -
第76回
AI
「Stable Diffusion」の失敗に学び、画像生成AIの勢力図を塗り変える「FLUX.1」 - この連載の一覧へ