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都市にらくがきできるアプリ・ゾンビから逃げる防災ゲームが入賞。福岡開催PLATEAUハッカソン

「PLATEAU Hack Challenge 2022 in Engineer Cafe (福岡)」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

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XR、メタバースまで、広がるPLATEAUの体験

 その他にも、ARやMRの新たな体験、新しいゲーム性を感じるものであったり、さまざまな作品が生まれた。

<PLATEAU EARTH VR> チーム「PLATEAU EARTH VR」
https://protopedia.net/prototype/3366

 PLATEAUのテクスチャ付き3D都市モデルとGoogleStreetViewの360度パノラマを組み合わせて、新しい旅行体験を実現しようというARアプリ。Meta Quest2スタンドアローンでの動作も可能だ。きっかけは一人チームのボッチソン参加となったそいちろ氏の「3D都市+ストリートビューという体験ができるものがない。なら作ろう」というモチベーションから。PLATEAUの渋谷駅周辺の3D都市モデルとGoogleストリートビューとを行き来して、街歩きの体験と360度のパノラマ映像を楽しめる。

 PLATEAUの軽量化済みFBXモデルを使ってUnity上の3D空間を描画し、3D空間上の現在地点の緯度と経度をMap系Assetから算出し、その緯度と経度をもとにGoogleストリートビューのパノラマ画像を取得するという仕組みになっている。今後もブラッシュアップし続ける予定だという。

 「複数のサービスを連結させるのはPLATEAUのよい活用ポイントだ」と高橋氏、また内山氏からは「ソリューションとしての作り込みが欲しい」、長岡氏からは「自転車など他の移動手段にも対応するともっと楽しめるサービスになるのではないか」とそれぞれコメントがあった。

<カブトムシ対クワガタ> チーム「カブトムシ対クワガタ」
https://protopedia.net/prototype/3367

 新宿付近のPLATEAUの3D都市モデルおよび福岡タワー周辺のデータによる3D空間でノコギリクワガタ(九州大学「3Dデジタル生物標本」)とカブトムシ(Unityのアセット)を対戦させるというもの。ユーザー体験としてはバトルアニメーションをARで観戦し、コメントを書き込むことで感想を他のユーザーと共有でき、3D生体標本のノコギリクワガタの精密なテクスチャをARで下から見ることができるというもの。仕組みとしては、AR部分にMRTK、コメント配信部分にWebSocketを使っている。

 このシステムを発展させることで各地の風景とご当地のコンテンツを活用し、人と会えない環境でも何か体験を共有できるサービスへとつなげていけるのではないかと、今後の展開を考えている。

 高橋氏は「バトルと都市モデルの相関を突き詰めると面白くなる。アイデアをより絞り込んで欲しい」とした。また、「福岡市百道の見慣れた風景に昆虫が出てくるというのが非常に斬新。今後、各都市の風景やその土地ならではのコンテンツと使うとおもしろいサービスになりそう」と長岡氏。

<地下から空を見上げよう> チーム「SKY」
https://protopedia.net/prototype/3368

 地下街の天井にスマートフォンをかざすとARで地上の風景が現れ、今いる場所が視覚的にわかるというARアプリ。PLATEAUで東京新宿駅周辺の3D都市モデルを作成(一部、テクスチャや敷地を追加)し、マーカーを読み取ることで上部に見上げた建物が表示される仕組みだ。AR開発にはUnityを、3Dモデルの編集にはSketchUpと3dsMaxを使っている。

 地下街に入ってしまうと自分がいる位置がわからなくなってしまいがちだが、地上の建物など風景を参照して自分の位置を視覚的に確認できる。災害時の避難ルート・避難所位置の表示にも活用可能だ。回線がつながりにくくなる緊急時のことを考えマーカー読み取り型にしている。

 この作品は、メンターの黒川氏なども初日から気になっている作品として上げていた。「見えないものを見えるようにするというのは広がりのあるアイデア。地下に限らず、見えない場所・場面を3D都市モデルを使って見せたい・見たいというニーズはある」と黒川氏。

 審査員の長岡氏も「地下から見る」という発想の面白さを評価する。「地下街が発達する都市部に有効なコンテンツになるのでは」とコメントし、いろいろな切り口での展開を期待した。高橋氏も、この手のアプローチはARグラスが普及すると、当たり前のアプリになるのではという。また、「避難のストーリーよりも道案内のほうがはっきりとしたニーズがあるのではないか」ともコメントした。

<全国をNAGATAロボでまちおこし> チーム「長田、武村、藤木」
https://protopedia.net/prototype/3362

 人口減少や感染症などで地域が衰退する中、巨大ロボが登場し地域を救うというストーリーで、メタバース内で巨大ロボット「NATAGAロボ」が地域のシンボルになるというアプリ。NAGATAロボは上空を飛ぶなどのアクションも行う。ユーザー体験のゴールは3Dプリントされたフィギュア「NAGATAロボ」の購入になる予定だ。

 デモでは北九州、東京(PLATEAU)、福岡(OpenStreetMap)の3D都市空間が用意された。NAGATAロボはMaya、Blender、Substance Painterなどで作成、メタバース空間はUnityとWebGLを使っている。

 「等身大ロボットが地元の街にやってくるという面白さを地域貢献にどうつなげるかというところをこのあと考えていってほしい」と長岡氏。ロボットのモデルとしての完成度の高さにテンションが上がったというのは高橋氏だ。モデルの仕上がりがいいから「リアルな都市モデルに架空のロボット」が成り立つのだとする。そのうえで、もっとカメラワークや演出を突き詰めてはどうかというコメントがあった。内山氏も「これはもう映像コンテンツとして突き詰めてほしい」とした。

<【プラトー x MR】MRで未来を覗き見> チーム「プラトー x MRでなにか(ボッチソン)」
https://protopedia.net/prototype/3365

 「白いフェンスの向こうのほんの少し先の未来をのぞき見する」というコンセプトで、MRデバイスを使って建築中の建物の完成形をのぞき見することができるシステム。Nreal Lightを装着して建設中の建物の前に立つと、3D空間内で完成した状態(予想)を見ることができるというもの。

 UnityでNreal Light、Meta Quest2、WebGLアプリをそれぞれ実装。WebRTCシグナリングサーバを設置し、Unityとブラウザで通信できるようにしている。PLATEAUの3D都市モデルを使った都市空間の中で、アバターや植木などの3Dモデルを扱うこともできる。

 内山氏は「3Dで表現した都市空間をみんなで体験するというのはこれからのまちづくりでも必要になることではないか」とし、その方向性を評価した。そのうえで、3D都市モデルと連携する観点での発展を期待するコメントがあった。高橋氏もメタバース空間を作ってしまう、その技術力を高く評価する。ただ、「シナリオを絞って突き詰めるべき」とした。

さらなる"作り込み"やクリエイティブに期待

 今回、課題としてメンターや審査員らが上げていたのは作り込みの部分だ。審査員の指摘は前項の作品紹介部分で逐次紹介したが、たとえば馬場氏のコメントはこうだ。「PLATEAUデータの活用促進を目的としたハッカソンという意味では、今回のハッカソンのアウトプットは3D形状の利用にとどまっていたものが多かった。PLATEAUの大きな特徴は、統一された製品仕様とともに属性情報も含めて整備されていることであり、それを生かしたユースケースが今後生まれてほしい」と期待した。

 また、これはよくハッカソンで指摘される課題だが、デザイン系のクリエイターをいかに巻き込むか、という課題も指摘があった。ただし、特に地域開催の場合、デザイン系のクリエイターは東京と比べるとより少なくなる。阿部氏は「クリエイティブや意義的な視点を入れる余地がもっとあってもよかった」として、「通常とは逆の、ハッカソンの後にアイデアソンをやるという順番で意義性(サービス自体の価値)のブラッシュアップを別にやるという進め方もおもしろいのではないか」と提案する。また常名氏は、デザイン系のクリエイターであってもPLATEAUデータを試しにつかうだけではなく、PLATEAUデータを使って事業を起こすチームも現れるのではないかと語った。

 PLATEAUデータについて広く知ってもらう、触ってもらうという点から、次の、より実装的なアプリを作っていこうというフェーズでは、アプリとしてどうデザインするかの部分も重要になってくる。今後PLATEAUから生まれる成果物には、そのあたりもぜひ期待したい。

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