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パナソニックがスポーツ企業を発足 立ち上げの目的や今後の展望を聞く

2022年10月13日 11時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集●ASCII STARTUP編集部

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 2022年4月1日、パナソニックグループが「パナソニック スポーツ株式会社」の発足を発表した。パナソニックグループでは、サッカーやラグビー、バレーなど幅広くスポーツに関わる事業を展開している。そんな中で、なぜ「スポーツ事業を専門とする会社」を立ち上げることになったのだろうか? 立ち上げの目的や今後の展望を取材する。

「パナソニック スポーツ」発足の背景

「パナソニック スポーツ」発足の背景、経緯を同社広報部に聞いたところ、きっかけは「2019年に行われたラグビーとバレーボールのワールドカップが日本で開催されたこと」だという。

 パナソニックのチームから複数の選手が日本代表に選出され、代表チームの主力として活躍した。スポーツで日本中が熱狂する模様を目の当たりにしたことで、同社の選手の価値、スポーツの価値を見直そうとの機運が起こり、「スポーツの事業化」という考えが加速。2020年10月に、ラグビー部、バレー部、野球部を擁する企業スポーツ部門と、デジタルマーケティングを行う部門を加えたスポーツマネジメント推進室を立ち上げるに至った。

 デジタルマーケティングは、高度なデータ解析を元に集客やEコマースなどに結び付けるソリューションで、コロナ前、ガンバ大阪の集客に大きく貢献した実績がある。

 こうして、3部(ラグビー、バレー、野球)の競技力をさらに向上させると共に、ラグビー部とバレー部を事業化。さらにデジタルマーケティングの各チームへの導入やコンテンツ、サービスの展開をもにらんだスポーツ事業を目指す活動がスタートした。

 この取り組みを進める中で、パナソニックの持ち株会社化への話が立ち上がり、スポーツマネジメント推進室としても事業会社化することが決定。約1年間の準備期間を経て、2022年4月に新法人「パナソニック スポーツ」が誕生したというわけだ。

「パナソニック スポーツ」が目指すものとは?

 ひとつの会社の「企業スポーツ」から、「スポーツ企業」に進化した「パナソニック スポーツ」。同社広報によると、「『パナソニック スポーツ』はスポーツで繋がるコミュニティーを作り、人々に生きる喜びと感動、そして勇気に満ちあふれた暮らしを提供することが大きなミッション。また、競技する人、応援する人、支える人に寄り添い、持続可能なスポーツ事業を創造し続ける革新的企業となることをビジョンとして持っています」とのこと。

「パナソニック スポーツ」では、「埼玉パナソニックワイルドナイツ」(ラグビー)、「パナソニック パンサーズ」(バレー)の事業化を推し進める。また、プロチームのガンバ大阪を子会社化し、3チームを「事業化指定」のチームとした。

 加えて、パナソニック野球部と女子陸上部(エンジェルス)の運営をパナソニックホールディングスから受託する形で、両チームのマネジメントを担当。企業スポーツ運営だけでなく、プロからアマチュアまで多様なスポーツチームの運営を手掛ける中、デジタルマーケティングの活用と、さらなるスポーツコンテンツの新事業創造など、世界に例のないスポーツ専門企業を目指している。

スポーツ観戦の楽しみ方までも変える

 「スポーツにおけるデジタルソリューションの活用」は、近年大きな盛り上がりを見せている。「パナソニック スポーツ」では、前述のように、ガンバ大阪での集客支援で活躍したデジタルマーケティングのノウハウを、他チームでも活用していく。

 例えば、チケット情報などから利用者情報を収集、分析し、演出、運営、サービスにつなげスポーツ観戦がより楽しく、繰り返し来場してもらえるような施策につなげるというものだ。また、試合のない日でもスタジアムやアリーナに人が集まるようなコミュニティづくりも目指す。こうしたノウハウは社外への提供も考えているという。全てはスポーツを持続可能なビジネスにするためで、「我々の取り組みがスポーツ界そのものの発展にも寄与し、業界全体でより良い方向を目指していきたいと考えている」とのことだ。

 また、スポーツ庁が提言した「学校の部活動運営」をはじめとする社会課題の解決にも貢献できないかと考えているという。例えば、同社が持つスポーツチーム運営のノウハウや指導法を部活動に取り込むことで、スムーズな部活動の運営が可能になるだろう。部活レベルの向上や、指導する先生の負担減にもつながると期待される。同社が考える新たなサービス事業の一例になるかもしれない。

 ここにパナソニックグループが持つ「デジタル技術」を活用すれば、さらに効果的な支援が可能になるだろう。「我々はスポーツそのものと向き合う会社であり、テクノロジー開発を主とするものではありません。しかし、社会貢献の視点、またスポーツそのものの発展の視点からデジタルの活用を有用なものと考えています」と同社。すでに選手やOBによるスポーツ教室を、ITを駆使し「複数拠点をつないぐ遠隔指導」として実施している。デジタルテクノロジーとの共創は、部活支援やスポーツ観戦の楽しみを従来にないレベルにまで押し上げることだろう。

 スポーツの可能性を広げるという意味でも、純然たるスポーツコンテンツを生業とする会社の発足、また「パナソニック スポーツ」の取り組みは大きな注目を集めている。特に新型コロナによって集客が難しくなったスポーツチームは多く、同社が持つデジタルマーケティングのノウハウを求める声も多いはずだ。まだ発足から間もないが、今後どのような展開を見せるのか注目したい。

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