次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート
ニチガス成功の理由は「目的をもってIoTをデプロイしていること」
新オーナーUnaBizが語るSigfoxの未来 ソラコム、ニチガスも高い期待
ソラコムのプライベートイベント「SORACOM Discovery 2022」で大きな注目を集めたのが、LPWANの旗手であるSigfoxに関するセッションだ。年始に経営難が伝えられたSigfox SAの事業を買収したのはソラコムのパートナーであるUnaBiz(ウナビズ)。Sigfoxの大規模ユーザーである日本瓦斯(ニチガス)も登壇したセッションでは、今までとスケールの異なる新しいIoTソリューションが見えてきた。
LPWANの旗手Sigfox、本社が経営難へ
低電力・長距離の通信を実現するLPWANの技術として知られるSigfox。フランスのSigfox SAが開発・販売を行なっており、日本では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がオペレーターとして通信網を展開している。セッションはソラコム 玉川憲氏は今回登壇したUnaBizとソラコムとの関係、そしてSigfoxの現状についておさらいする。
UnaBizはSigfoxのネットワークオペレーターで、シンガポールや台湾でSigfoxの基地局を運営している。ソラコムは自社の「SORACOM IoT Fund Program」を通じて、2018年からこのUnaBizに出資。LPWAN版のSORACOM Airである「SORACOM Air for Sigfox」を提供している。
このSigfoxを用いてガスメーターをネットワークでつなぐNCUを自社開発し、ガス会社として必要な検診や異常検知をオンライン化しているのがニチガスになる。同社の先進的な事例は業界内外で高く評価されており、6月には「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2022」のグランプリに選定されたことも発表されている。
LPWAの有力技術としてグローバルで利用されてきたSigfoxだが、必ずしも順風満帆というわけではなく、年始にはSigfox SAが「経営難で再建手続きに入る」というニュースが流れた。玉川氏も「われわれもSigfoxを利用したプロジェクトを数多く抱えていたので、非常に気になっていた」とコメントする。
3月にはこのSigfox SAの買収に9社が名乗りを上げ、4月にはソラコムが出資したUnaBizがSigfoxの新しいオーナーになった。「非常に驚くとともに、うれしいニュースだと感じだ」と玉川氏はコメントする。
UnaBizがSigfoxを買収 目指す3つのビジョンとは?
続いて玉川氏の紹介でUnaBizの創業者兼CEOであるヘンリ・ボン氏が登壇。ボン氏は自身のキャリアやUnaBizの会社概要、ソラコムとの関係、そしてSigfoxのオーナーに至るまでの経緯を解説した。
ボン氏のSigfoxのキャリアは2014年から始まり、アジア太平洋地域でのネットワークパートナーを探すため、何度も来日しているという。こうして見つけた京セラグループのKCCSは日本で国内屈指のSigfoxネットワークを展開している。
Sigfoxに所属していたボン氏がUnaBizを創業したのは2016年で、その後シンガポールと台湾でSigfoxのオペレーターとなっている。台湾を拠点としてソリューション開発にも力を入れ、アジア地域で90名のスタッフが開発に携わっている。ソラコムの出資を受け、パートナーとなったのもその頃だ。
その後、UnaBizはSigfoxの最大のパートナーの1つになり、さらに再建手続きに入ったSigfoxのオーナーにまでなった。「投資家やパートナーと相談し、自分たちの技術を守るために入札することに決めました。私たちはこの技術を信じているからです」とボン氏は語り、パートナーや従業員、グローバルのオペレーターに謝意を示した。
ボン氏はSigfoxのビジョンとして、「テクノロジーコンバージェンス」という観点で他のLPWANテクノロジーとの連携を挙げる。「たとえば、LoRaやELTRES、Wi-SUNといったアンライセンスバンドを利用している他のLPWANまでプロトコルや技術をオープンにして拡げたいと考えています」とボン氏は語る。また、5Gや6Gなどの広帯域・低遅延なセルラー技術については、「これらの技術はクリティカルなIoTのユースケースに非常に適している」と指摘し、相互接続の重要性をアピールした。
2つ目のビジョンはSigfoxの独自性でもある低コストの追求。「現在、Sigfoxのモジュールは2ドル程度ですが、もっと安くできると確信しています。たとえば弊社が取り組んでいるトラッキングソリューションは、1ドルを下回る価格になるでしょう。コネクテッドデバイスで1ドルを下回る価格が実現できれば、大規模なデプロイとマッシブIoTの機会はさらに広がります」とボン氏は指摘する。
3つ目はサステイナビリティの観点だ。「考えてみてください。これから数年後には、センサーの数は何億、何十億にもなります。それらのセンサーの回収するのかを考える必要があります」とボン氏は語る。センサーのライフサイクルやバッテリについても考えなければならない。「センサーを作るだけ作って、未来のことは考えないというわけにはいきません。それがサスティナビリティです」(ボン氏)。今後は、センサーからバッテリを外し、再エネや環境発電でデバイスを接続し、データを送信していきたいという。
ボン氏は、今後のSigfoxとUnaBizの関係についても説明した。Sigfoxは技術名としては残るが、Sigfox自体はUnaBizグループの子会社となり、UnaBizグループがSigfoxを推進していくという。もともと技術を提供してくれていた親会社自体を買収することになり、ボン氏も驚いたという。
Sigfoxの買収により、UnaBizが事業展開する国は日本も含めて73カ国に拡大した。従来90名だった従業員もいまや240名以上となった。特許も220件も保有。グローバル顧客も1500社以上、バックエンドで登録されているIDの数は2000万を超えているという。「登録デバイスは2000万台以上あり、1000万台近いデバイスが現在も毎日稼働してます。非常に大きな責任を負っていますが、今後がとても楽しみです」とボン氏はまとめる。
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