【SC-HR2020】手軽にバイワイヤリング接続ができる
4芯スピーカーケーブル
続いて秋の新商品パート2は、バイワイヤリング用スピーカーケーブルSC-HR2020(1万780円/1m)。導体には0.3mmのPC-Triple Cを42本より合わせた、4芯構造のスピーカーケーブルだ。先程紹介したKX-3SXのようなバイワイヤリング接続対応のスピーカーで使用すると、ウーハーが発する逆起電力によって、ツイーターの音の濁りを低減する効果が期待できるという。
試聴はKX-3SXを用いて、SX-HR2020の導体2本ずつ繋げたシングルワイヤリング接続と4本に分けたバイワイヤリング接続で比較した。アンプ側はシングルワイヤリング接続だ。言い換えるなら、アンプの電力をスピーカー本体側で分岐させるかアンプ側で分岐させるかの違いだ。電気的に変わらないから、音も変わらないと思っていたのだが、それは大きな間違いだった。確かにクリアネスが向上しているし、空間表現がアップしているではないか。
スピーカーケーブルそのものの音色については、正直なところよくわからないのだけれど、低域と高域が同じ導体を使っているため、音色に統一感がある。本来ならスピーカーケーブルを2ペア用意しなければ得られない効果を1ペアのスピーカーケーブルで実現できるので、部屋の中に何本もケーブルがはわなくていいのも◎。2本分買わずに済むからコスパに優れているのも見逃せない。本来なら「同じスピーカーケーブルを2本買ってください」というところを1本で済ませてしまったクリプトンの良心を感じた。
【PB-HR3000】フィルターを3回路搭載した
フラグシップ電源ボックス
秋の新商品第3弾は、同社最上位の電源ボックス「PB-HR3000」(23万5400円)だ。目を一瞬疑う金額だが、壁コンセントから給電するよりもクオリティーがアップするというから不思議だ。
8個口の電源ボックスである本機は、レセプタクルにレビトン製のホスピタルグレードを、ACインレットにロジウムメッキ仕上げを採用。レセプタクルは、左側にパワーアンプ用の大電流機器用2口と、PCやDAC、NASなどのデジタル機器用2口を、右側にはプリアンプなどの小電流機器用と分けて配置。それぞれにフィルター回路を設けることで、ノイズの干渉を防いでいる。
ちなみに内部配線材にはPC-Triple Cに、バスタレイドというノイズ抑制効果のある素材を巻きつけて、高S/Nを実現しているとのこと。筐体も凝っている。ステンレス製の筐体をベースに、振動を吸収する機能性ポリエステル「ネオフェード」と、CFPRプラスチックで挟んだ3層材を天板と脚部に配置して、制振効果を高めている。
試聴は、2回路フィルター構造のPB-HR1500(14万1900円)との比較を行なった。PB-HR1500で聴いた後、PB-HR3000に交換。その時、アイ・オー・データ製のNAS(fidata)の電源だけをデジタル機器用につなげたのだが、ここでも1枚ベールを剥いだような変化を体験した。にわかに信じられないのだが、一度聴いたら戻れない。同じような効果を得るには、PB-HR1500を2個購入しなければならないところ、PB-HR3000を1個買えば済む。絶対価格は高いが、ここでもクリプトンの良心をみたような気がした。
【AB-111】鉄球サンドを封入したオーディオボード
最後はオーディオボード「AB-111」(2万4200円)だ。今春発売したAB-777(3万1900円)のコンパクト版で、ゴム材のランバーコア(集成材)をくり抜き、その中に鉄球サンドを封入し、MDF材で底面に蓋をしたという構造は同じだ。大きさはW350×H44×D400mmで、重さは6kg。トールボーイスピーカーやスピーカースタンドの下、そして電源ボックスや小型オーディオ機器の床面強化に適している。
色はクリア塗装のほか、ブラックの2色を用意。この手のアイテムにしては良心的なプライスなのも見逃せないポイントだ。
AB-111の試聴はかなわなかったので、以前聴いたAB-777の印象をお伝えする。ソース機器の下に敷いて視聴したが、機器が持つ本来のサウンドクオリティーを底上げする「縁の下の力持ち」と言いたくなる印象を受けた。ノイズフロアーが下がり、しっかりした定位感が得られる方向へと変化するが、音色そのものは大きく変わらない。音色の変化を求める方には、期待を裏切る結果になるだろうが、機械が持つポテンシャルを引き出したいという方には、このボードは試してみる価値がある。
【まとめ】クリプトンの魅力は
クリアネスの向上と自然な音場
クリプトン2022秋のコレクションに共通するのは、クリアネスの向上と素直な音色。どれも素材が持つキャラクターはそのままに、ノイズフロアーを下げつつ、自然な音場の広がりを提示する。驚くべきことは、それがアイテムの種別に関係なく、というところ。それがクリプトンの目指す方向性であり、どんなアイテムを買っても「こうなるだろう」と予測がつく。
アクセサリーの試聴を店頭で行なうのは難しいので、同じ傾向なら安心して買い求められる。しかもオーディオ機器にしては、庶民の味方と言いたくなる値付けで(20万円超えの電源ボックスには驚くが)。帰路、いただいた総合カタログを見ながら同社の良心を感じるとともに、「これ欲しいなぁ」と夢を巡らせた。