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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第680回

欧州の自動車業界で採用されているフランスKalray社のMPPA AIプロセッサーの昨今

2022年08月15日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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BostanをPCIeカードにしたTURBOCARD3

 KarlayはこのBostanを単にチップで提供するだけでなく、カードの形でも提供していた。TURBOCARDと呼ばれるのがそれで、TURBOCARD2はAndeyベースだがTURBOCARD3はBostanベースとなる。Hot Chips 2015では実物の展示が間に合わなかったが、同年9月に開催されたTERATEC 2015ではサンプルボードも展示されている。

 もともとBostanのNoCは二重の2Dトーラス構造になっているが、チップ間接続にも利用可能になっており、TURBOCARD 2/3ではチップ同士をPCIeとNoCの両方でつなぐ構造になっている。

PCIeスイッチにはPLX Technologies(その後Broadcomに買収)のものが搭載されている

 気になる性能だが、画像認識、モンテカルロ法を利用した金融シミュレーション、暗号化の処理性能、GZIPでのファイル圧縮、それとAI学習のベンチマークも示されている。いずれの結果もそう悪くないというか、結構有望そうなことがわかるだろう。

画像認識の性能。対抗馬が不明なのだが、2015年で256 SIMTコアということはTegra X1だろうか? ただ142Wにはならない気がするのだが。なにをベースにしたかはともかく、GPU向けのアプリケーションをMPPAに移植したところ、性能が15%、効率が14倍向上したとしている

金融シミュレーションの結果。右はcuRANDをMPPAで実施した結果をNVIDIAのレポートに無理やり重ねている

AES/SHAでの暗号化処理性能。SHAによるハッシュの生成が異様に高速なのが特徴的

GZIPでのファイル圧縮時間。下のグラフの比較対象がCore i5-650というのがなんとも言えない

畳み込みニューラルネットワークのベンチマーク結果。畳み込み(convnet)は今ではほとんど使われなくなっているが、2015年という時期を考えれば仕方ないだろう

 なお冒頭でも書いたが、少なくとも2015年までは日本にも拠点(Kalray Japan)が存在していた。2013年7月にはこのKalray Japanがアーキテクチャーの説明や信号処理/画像処理のデモ、OpenCLを利用してのプログラミングなどを5時間かけて紹介するセミナーも開催されている。

 残念ながら日本では目立ったデザインを獲得できたとは言えなかったようだ。ただヨーロッパではそれなりにデザインウィンを獲得できたようで、この後本格的にテコ入れが始まる。ロードマップではBostanの後継となるCoolidgeが2016年中に開発される予定だったが、これは2018年に延びた。

 その代わり、2017年に同じTSMCの28HPを利用し、基本構成は変わらないながらもメモリーコントローラーやPCIe/イーサネットを改良し、NVMe SSDのサポートを追加したBostan 2がリリースされている。

Bostan 2の構造。公式資料ではBostan 2とBostanの違いがはっきり示されていないのだが、初代Bostanが実際は800MHzどころか600MHzも厳しく550MHz程度だったのが、一応600MHzまで引き上げられたことと、周辺回路の改良、それと8MBのSRAMを搭載したのが主な違いの模様

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