マルチスレッド性能は順当に向上
ThreadripperのようなCPUが最も輝くのはCGレンダリング用途だ。まずは定番「CINEBENCH R23」で検証する。クロック上昇によりシングルスレッド性能がどこまで伸びているかに注目だ。
5995WXと3990Xはコア数は同じだが、アーキテクチャとクロック、メモリーバス幅の点で5995WXの方が有利となる。マルチスレッドのスコアーで5995WXが15%高くなっているのはこれが原因だ。さらにシングルスレッドのスコアーも同様に3990Xから15%以上伸びている。3990Xの馬力でもまだ足りないと考えているなら、5995WXは良い移住先となり得るだろう。
またメインストリームCPUである5950Xや12900KFと比べるとシングルスレッドは低いが、マルチスレッドは3倍程度のスコアーが出ている。コア数の比(1:4)を考えると伸び率は鈍いが、それでもこの性能を1ソケットで出せるという点は評価すべきだろう。
CINEBENCH R23以外にも複数のCGレンダリング系ベンチも試してみたい。まずは「Blender」の公式ベンチマークだ。Blenderのバージョンは検証時で最新の“3.2.1”とした。
どのシーンにおいても3990Xよりも5995WXは18〜21%高いスコアーを示している。またコア数のもっと少ない5950Xに対しては3倍程度のスコアーにとどまっている。この点はCINEBENCH R23と共通している。
続いては「V-Ray Benchmark」での検証だ。このベンチはCUDAやOptiXを利用したベンチも可能だが、今回はRadeon環境なのでCPUだけを利用する“CPU V-Ray”のみを使用する。
こちらも傾向は同じ。5995WXはCINEBENCHだけ速いという訳ではなく、CGレンダリング系ベンチでは安定して速く、3990Xよりも最大20%、5950Xに対しては3倍以上のパフォーマンスを期待できると判断してよいだろう。
CPU負荷が低いと……
続いては総合性能を見るベンチマーク「PCMark 10」の“Standard Test”も試してみよう。CINEBENCH R23などと異なりCPU負荷が非常に軽いため、ThreadripperシリーズのようなCPUではスコアーは出ない。5950XのようなメインストリームCPUの方がスコアーは出るはずだ。しかしシングルスレッド性能の向上により3990Xよりも高スコアーが出ることは期待できる。
今回の検証環境ではPCMark 10をはじめ、Adobe系のアプリでもOpenCLを利用するシーンでのエラーが出るなどの不具合が頻発。その中で完走した際のスコアーで比較することにしたが、結局3990X環境では比較に足る結果を得られなかった(Productivityテストで止まる)。残念ながらこの結果からではメインストリームCPUよりも5995WXのスコアーは低いとしか言えない。
PCMark 10繋がりで同じUL社が出している「UL Procyon」も試してみた。まずはPhotoshopとLightroom Classicを実際に動かす“Photo Editing Benchmark”だ。こちらも途中で止まる不具合に悩まされたが、ドライバーをAMD Software: PRO Editionにした結果だいぶ状況は改善した。
総合スコアー(青色のバー)では12900KFのようなクロックの高いメインストリームCPUに対し5995WXは下という評価になる。しかし、ここでBatch Processing(灰色のバー)に注目すると、5950Xよりも5995WXの方が高い一方で、Image Retouching(オレンジ色のバー)は5995WXは5950Xより低いという点に注目したい。
つまりこの結果から、5995WXはLightroom Classicだけで終わるワークフローにおいては5950Xを上回る性能を出せるが、Photoshopを絡めたワークフローで考えると5950Xに劣るといえる。5995WXが5950Xを上回れる原因はメモリーバス幅の広さにあると考えられる。5995WXは最大2TBまでメモリーを搭載できることを考えると、超高解像度のRAW現像を扱うようなシーンでは、5995WXは輝ける可能性があるということだ。
ついでにUL Procyonの“Office Productivity Benchmark”も試してみよう。こちらはOffice 365(Word/Excel/PowerPoint/Outlook)を実際に動かすベンチである。
このテストでは5995WXはメインストリームCPUに対し強みを発揮できない。ただし3990Xに対しては幾分か性能が向上していることが示されている。

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