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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第679回

Tachyumが開発しているVLIW方式のProdigy AIプロセッサーの昨今

2022年08月08日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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プロトタイプでLinux動作を確認
2023年前半に量産出荷予定

 ちなみにこの2018年時点でTachyumの考えていたラインナップは下の画像の通り。ハイエンドが64コアのT864で、その下に32コアと16コアのT432およびT216がラインナップされる。それとは別に、HPC向けにT864のメモリーチャネルを半減させ、高密度化したTH24という製品も予定されていた。

TH24は高密度化するために省パッケージが必要で、そのためにメモリーチャネルを半減させたという話だが、コア数とメモリー帯域のバランスが取れているのか、少し疑問ではある

 さてその後はどうなったか? であるが、やはりTSMC N7でこれはいろいろ無茶があった。一応チップの製造には成功したようで、2019年にはLinuxの稼働を確認したというリリースも出ている。ただ、製品向けに改めて設計をやり直したようだ。

 2021年3月にFPGAベースでのプロトタイプが稼働を開始、同年8月にはそのプロトタイプ上でのLinux動作を確認している。今年7月1日には評価用プラットフォームのプレオーダーを受け付け開始しており、今年中に評価プラットフォームの出荷、来年前半に量産出荷を開始の予定となっている。

 構成も少し変化しており、CPUコアのベクトルユニットは1024bit幅に拡張、仮想化の機能も搭載された。また“Out-of-Order, 4 instructions per clock”の文字も踊っているが、これは2018年発表のものと同じで、単に最大4命令BundleのVLIWのままな気がする。

 またキャッシュはL1が命令/データともに64KBに増量、DDR5-6400×8chをサポートになった(HBM3はもう構成から落ちた模様)。PCIe 5.0は最大64レーンになっている。製造プロセスはTSMCのN5に変更になり、VLIWのネイティブISA以外にx86/Arm/RISC-Vのバイナリーをエミュレーション動作できるとされている。

 ラインナップは以下の表の通り。AI性能に関しても公開されたあたりが、以前と異なる点である。

Prodigyのラインナップと性能
製品 コア数 メモリー PCIe AI性能 HPC性能(DP)
Prodigy T832 32 DDR5-6400×8 x32 1.5PFlops 12TFlops
Prodigy T864 64 DDR5-6400×8 x32 3PFlops 23TFlops
Prodigy T16128 128 DDR5-7200×16 x64 12PFlops 90TFlops

 ところで冒頭、スロバキアとのつながりが強いと説明したは、2020年のITAPAにおけるTachyumの発表スライドの1枚が下の画像だ。

さすがにチップ製造(とパッケージング)はTSMCや台湾のバックエンド企業に委託せざるを得なかったようだ。ちなみにネバダ州ヘンダーソンにも拠点があるそうだ

 Tachyumはデザインセンターをスロバキアに2ヵ所(ブラチスラヴァとコシツェ)抱えており、チップ設計とアセンブリ、サーバー機器の製造、サービスの提供をスロバキアで行なっている、としている。現状ではまだチップもないため、AI性能を評価するのは時期尚早だが、ある意味(VLIWとはいえ)控えめな構成でどこまで性能を上げられるのか、というのは興味深い。来年あたりのMLPerfに数字が上がることを期待したい。

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