コンタクトセンター技術を提供するナイスジャパン(NICE)は2022年8月4日、コンタクトセンターにおけるCX(カスタマーエクスペリエンス)調査の結果を発表した。消費者側では問い合わせにおけるデジタルチャネル活用が進む一方で、企業側の拡充は進んでおらず、両者間のギャップが浮き彫りとなっている。
この調査は過去1年間に商品/サービスに関してFAQを閲覧したり、コンタクトセンターに問い合わせた経験がある消費者、およびコンタクトセンター機能を持つ企業を対象にした調査。調査期間は2022年5月10日から1週間。
同社社長の安藤竜一氏がまず紹介したのは、消費者が問い合わせをする際に最初にとる行動だ。店舗やコールセンターよりもインターネットに向かう実態が明らかになった。「インターネットで検索する」は46.8%、「ホームページ/サイトを確認する」は34.4%と、およそ8割の消費者がまずインターネットでアクションを起こす。安藤氏は「まずはスマホやWebサイトを使って検索するという行動が当たり前になっている時代」だと説明する。
インターネットを用いるのは初期行動だけではない。コロナ禍も相まってデジタルチャネルを使った問い合わせは増加傾向にあり、若年層(18~29歳)の40%、中年層(30~49歳)の43%、シニア層(50~69歳)の22%が「チャットやメールなどインターネットを使ったデジタルチャネルが増えた」と回答している。
消費者の行動がこのように変化しているのに対し、企業側の対応の動きは低調なようだ。コロナ後の問い合わせチャネル拡充について聞いたところ、未拡充(「行っていないが、計画中」と「行っていないし、予定もない」)は約7割となった。
消費者と企業の間のギャップは他にも見られる。消費者は「問題の一次解決方法」としてWeb上にあるFAQに期待しているにもかかわらず、企業側ではFAQサイトのアップデートの頻度が「月1回未満」が4割。FAQサイト内検索機能については55.6%が「設けていない」と回答している。
安藤氏は、こうした結果を紹介しながら「掲載されている情報がお客様が本当に望んでいるものなのかをちゃんと確認すべきだし、適宜アップデートする必要があるのでは」と指摘する。「初期行動としてWebページを訪問する消費者が多いのであれば、そこに適切な情報を掲載する企業努力をすることで、コールセンターへの入電件数の削減などの効果はある」(安藤氏)。
顧客に対して複数のチャネル(マルチチャネル)を用意する企業は多いが、そうしたチャネル間の連携についても調べた。「チャットと他チャネル」の連携については71.8%の企業が「連携している」と回答したが、消費者の54.8%は、チャネル切り替え時の情報伝達不足による不満の経験が「ある」と答えている。
複数チャネル間の同一オペレーター対応については、27.6%しかできていないことも明らかに。このことから「同じ説明をもう一度最初からしなければならない」などの手間を顧客にかけさせている可能性が高い、と安藤氏はみる。
なお、調査ではチャネル別の「問題解決度合い」についても調べている。最も解決度が高いのは「電話」(「解決することが多い」が82.1%)、続いて「メール」(同64.7%)、「Web問い合わせフォーム」(同61.1%)。「AIチャットボット」は「解決することが多い」が32.1%にとどまり、「解決しないことが多い」が50.9%を占めるなど、解決度が低い。
サポート対応と消費者の購入、継続利用の意識との関係を調べたところ、「購入前のサポートが購入意欲に影響を与える」という回答は70%、さらに「購入後のサポートが継続利用意向に影響を与える」という回答は75.5%にも上った。このように、サポート対応が購入・継続意向に与える影響は大きいものの、「サポート対応を改善するために評価制度を導入している」企業は6割強にとどまり、38%(中小企業は48.7%、大企業は22%)が「何も取り入れていない」という。
これらの調査結果を紹介したあと、安藤氏はポイントとして以下の4つを挙げた。
(1)デジタルの問い合わせが増えているが、企業側は問い合わせチャネルの追加が進んでいない
(2)チャネル間の連携がなかったり、同一エージェント対応ができていないため、顧客にストレスを与える
(3)チャットボットの解決率を上げるためにナレッジの供給と管理が必要
(4)サポート対応の良し悪しが購入や継続に与える影響は大きく、評価分析が必要
NICEはコンタクトセンター録音の「NICE Engage Platform」、顧客エンゲージのアナリティクス、クラウドコンタクトセンター「CXone」などのプロダクトを提供し、世界2万7000社以上の顧客を抱える。最近の国内導入事例としては、あいおいニッセイ同和損害保険によるバーチャルアシスタント「NEVA」採用、スタートアップのゲートファームによるCXone採用などがある。
安藤氏は「消費者の期待と企業の間にギャップがあり、デジタルシフトでさらに顕著になっている」とし、その解決策としてNICEが提唱する「Customer eXperience interactions(CXi)」コンセプトと同コンセプトを軸とする自社CXプラットフォームを提案していきたいと話した。
具体的には、2022年下半期はCXoneを大企業と中小企業の両方の領域でプッシュすること、NTTマーケティングアクトProCXと提携して進める分析ソリューションの拡販、RPAソリューションの市場拡大を進めていくという。