持続可能な社会貢献も 人生が変わるNFTゲームの概念
かーずSPが聞くデジタルコンテンツスタートアップの最前線 Digital Entertainment Asset Pte. Ltd.共同CEO 山田耕三氏インタビュー 前編
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Web3エンタメでは、自己承認欲求に代わって“生きがい欲求”が注目される
山田:もうひとつ重要なのは、この人たちが使っているNFTカードを貸している人がいることです。彼女の感謝の言葉は、ゲーム会社の僕らではなくて、NFTオーナーの方に向けられているのです。スカラーシップ(スカラー制度)といいまして、NFTアイテムを所有しているオーナーからNFTを借りたユーザーが、オーナーの代わりにゲームをプレイして、暗号資産を稼ぐ。その報酬をオーナーとプレイヤーで分配できる仕組みです。
山田:例えば赤い羽根募金では、お金を入れて羽を胸につけてもらう時に、ちょっとしたカタルシスというか「世界に良いことをしたな」って気持ちよくなりますよね。これも一種のエンターテインメント体験と言えなくもありません。他のプレイヤーがNFTアイテムを買って、発展途上国の人に貸したりして、その人たちの生活が潤う。そうしたゲームエコノミーに入ることで、具体的な誰かの生活を救って、感謝の言葉が届く。これがエモくて、ゲームを通じて世界を救っているという未体験のWeb3エンタメなのです。これまでゲームを遊ぶことって、どこか後ろめたい気持ちがあった人も多いじゃないでしょうか、「こんなことをしていても、現実の世界は良くならないし……」みたいな。
───ゲームに時間を使うことは生産的じゃなくて負い目がある……という意見は昔からありますね。
山田:Web3時代のゲームは、そうした負い目がスパーンと消えます。自分がゲームを遊ぶことで、他の誰かが幸せになれる。実世界と繋がって、自分の望むように世界を変えていける充実感が得られます。かつて囲碁将棋の時代から、ファミコンが普及してコンピューターゲームが普及して、新しいゲーム体験になりました。21世紀に入って、ゲームがインターネットに接続した時も体験が変わりましたよね。オフラインのコンピューターゲームとオンラインのコンピューターゲームを大きく分ける差は、自己承認欲求が満たせるところにあるのではないかと思っています。
───MMORPGやソーシャルゲームで、ギルド(プレイヤーたちが集まるチーム)に入って、仲間のプレイヤーたちに自分を認めてもらって嬉しいとか、感じたりしますね。
山田:その自己承認欲求があるかないかで、ユーザーを取り込むスケールがはるかに大きくなりました。それはここ20年間、インターネットと繋がったゲーム産業が、急速に売上を伸ばしていることからも証明されています。
───Web3ゲーム時代で、ゲーム体験がさらに変化すると……?
山田:まだ未体験すぎて誰も言語化ができてないのですが、Web2ゲームにおける自己承認欲求に等しい言葉は今後生まれてきます。「世界への参加感」というべきか、「生きがい欲求」と呼ぶべきか、「経済と繋がるゲーム体験が、人々にこういう気持ちを抱かせるんだ!」っていう感覚を広めていきたいです。僕はこれを「クリスマスキャロル効果」と勝手に命名しています。
───稲垣潤一ですか?
山田:いえ、古典文学のディケンズのほうです(笑)。ざっくりしたストーリーをお話すると、強欲な金貸しのじいさんが、ビジネスでいろんな人たちを不幸にしていたのですけど、最後は改心して自分のお金をみんなにばらまくという内容です。
───「幸せってみんなで分けあうものでしょ」というキリスト教的な価値観を感じます。
山田:ジョブトライブスでは今、NFTを貸し出した人たちへ「こんな風に感じていて、人生が救われた」って声が、どんどん届いています。それがエンターテインメントとして優秀だし、世界に良い影響を与えていると自負しています。
───ありがとうございました。今回は概要についてお話を伺いましたが、次回は具体的に開発されているゲームについてお伺いしていきたいと思います。
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