メルマガはこちらから

PAGE
TOP

AI在庫分析クラウド「FULL KAITEN」は死蔵在庫を利益に変える

無駄な値引き販売を抑制し、小売業の利益を最大化する

連載
このスタートアップに聞きたい

1 2 3

 倉庫の片隅で動かないままリソースを食いつぶす死蔵在庫。だが同じ在庫であっても、じつはその性質には特徴的な違いがあった。小売業にとってこれまで解決もされず見えにくかった悩みは、独自の分析から改善でき、利益改善につながるという。

 「在庫の20%で売上・利益の各8割を産んでいる」という小売業の現状に着目し、残り8割の在庫運用効率をすることで、売上・粗利・キャッシュフローを最大化する在庫分析クラウド「FULL KAITEN」の開発・販売を行っているフルカイテン株式会社。大学でAIや統計の研究を行い、卒業後はIT系の企業で経験を積み、EC事業での起業経歴を持つフルカイテンの代表取締役 瀬川 直寛氏がどのような発想で独自の在庫改善プロダクトを産んだか、そのコンセプトや機能概要を伺った。

30年間解決されない小売業の課題に挑むFULL KAITEN

 昭和の中頃、高度経済成長期はアパレル小売業にとってまさに我が世の春とも呼べる時代だった。作ったものはいくらでも売れ、商品がなくて困ることはあっても在庫の山に悩まされることはなかった。当時、仕入れた商品の9割が定価で売れていたと言われている。

 その後のバブル期が終わってから、市場にモノがあふれるようになるのと並行して、日本では少子高齢化が進行し、「定価で売れる商品は半分にも満たない」(瀬川氏)状況となった。結果、在庫全体のうちで利益を上げる商品はごくわずかとなり、残りの商品は販管費などを除く商品単体で見れば赤字になってしまうことも少なくないという。

 そして現在、コロナによって小売業を営んでいる企業の多くが変革を迫られた。このことは外形的には良い結果をもたらす面もあり、そしてある気づきが生まれた。

 「コロナがきっかけでみなさん在庫を抑制した。仕入れても売れないためだったが、そうすると粗利率が各社改善した。仕入れを抑制したので無駄な値引きやセールも減った。また不採算店舗の撤退も進み、営業利益が改善した。固定費を削減したから営業利益も増えた。

 各社ともコロナがきっかけで、『あんな在庫の持ち方はダメだ、不採算な店舗を余計な在庫をさばくために抱えるというのも経済合理性がない』と気が付いた。だから元に戻りたくない。ではその状態を維持しながらどうやって業績アップを実現していくか。

 在庫は、小売業界で30年間解決されていない問題と言われている。私もかつてベビー服のEC事業をしていた際、在庫が原因であわや倒産という経験を3度もした。在庫分析クラウド『FULL KAITEN』はこの倒産危機を乗り越える過程で生み出したロジックが原型になっている」(瀬川氏)

フルカイテン株式会社 代表取締役CEO 瀬川 直寛氏

 FULL KAITENは「在庫」と一括りにされている商品それぞれに対し、どうすれば値引きを抑制できるのか、どうすれば死蔵在庫化を避けることができるのか、AIを駆使した徹底した分析により、最適な売り方を提案する。

 例えば、商品力を評価され利益を稼ぐ企業は、売上を在庫の量でカバーする必要がない。無駄な在庫を並べるための不採算店舗を抱える必要もなくなる。

 FULL KAITENは高いプロパー消化率(定価で販売した商品の割合)維持や販売の機会損失の低減など、利益を生み出さない残り80%の在庫効率を上げることで、粗利体質な経営への変革を目指している。

1 2 3

バックナンバー