このページの本文へ

Microsoft Build 2022 Spotlight on Japan完全レポート 第11回

Build 2022で「Azure AI」「GitHub Copilot」「OpenAI Service」などの最新情報を披露

マイクロソフトは「AIの可能性」と「責任あるAI」の両立を支援

2022年07月12日 11時00分更新

文● 吉井海斗 編集 大塚/TECH.ASCII.jp

提供: 日本マイクロソフト

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 マイクロソフトが掲げるミッションステートメントは、「地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする」こと。AIの力も最大限に活用しながら、このミッションを果たすべく日夜努力している。

 Microsoft Build 2022のJapan Spotlightセッション、「AIの未来と責任 -Microsoft AIが示すAI開発の可能性-」では、日本マイクロソフトの小田健太郎氏、濱田隼斗氏、棚橋信勝氏の3氏が、マイクロソフトにおけるAIの歴史、その中核コンポーネントであるAzure AIの各種技術、Buildで発表された各種のアップデートを紹介した。

(左から)日本マイクロソフト Azureビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャーの小田健太郎氏、同社 Global Black Belt, APAC AI/ML Specialistの濱田隼斗氏、同社 アジアグローバルブラックベルト AI/ML スペシャリストの棚橋信勝氏

Build 2022では米Metaと提携、マイクロソフトにおけるAIの長い歴史

 小田氏は「マイクロソフトとAIは非常に長い歴史がある」と説明する。

 過去4年間だけを見ても、マイクロソフトではさまざまな取り組みを展開している。

 まず2018年には「責任あるAI(Responsible AI)」という、AIを開発・運用する上でのガイドラインを示した。2019年にはOpenAIとの戦略的パートナーシップを締結し、同社の大規模言語処理モデルである「GPT-3」の独占ライセンスを受けた。 2021年にはNuance Communicationsを買収し、その秋にはGPT-3をマネージドサービスとして使える「Azure OpenAI Service」を発表した。

 そして今回のBuild 2022では、AIペアプログラマー「GitHub Copilot」の一般提供開始や、米Meta(旧称:Facebook)との戦略的提携を発表した。Metaとの提携はメタバースをテーマとしているが、機械学習ライブラリである「PyTorch」の文脈でも連携を強めていくという。

 「一方で、AIがビジネスに活用されるほど、倫理やガバナンスの問題が大きくなってくる。例えば、AIに読み込ませるデータにバイアスがかかっていた場合、これを反映したアウトプットが出てしまう」(小田氏)

 AIに関しては、 技術的な課題と合わせて倫理的な問題も解決する必要がある。マイクロソフトは、前述した「責任あるAI」のガイドラインで、AIのガバナンスと倫理問題に関する方針を6つの原則にまとめた。そして顧客やパートナーと共に、この原則に沿った活動を進めている。

 このガイドラインに則った、マイクロソフトのAIの中核的要素と言えるのが「Azure AI」だ。

 Azure AIの構成要素は3つに大別できる。業務シナリオに特化した「Azure Applied AI Services」、事前学習済みモデルをビルディングブロックのように利用できる「Azure Cognitive Services」、エンド・ツー・エンドの機械学習プラットフォームである「Azure Machine Learning」だ。

 これらのサービスはそれぞれ、AIを迅速かつ的確な形でビジネスに適用できるように進化を続けている。

OCRは日本語手書き文字に対応、カスタムニューラルボイスの作成は楽になった

 続いて登壇したAI/ML Specialistの濱田氏は、Applied AIおよびCognitive Serviceについて、特に両サービスにまたがるOCRとスピーチの機能について紹介した。

 まずOCR関連では、コンピュータービジョンにシンプルなOCR機能があり、Applied AIにはより発展性のある「Form Recognizer」がある。

 OCRは、写真や画像の中からテキストを抽出し、テキストデータ化する機能である。 最近のOCRでは、道路標識、製品写真、請求書、荷物の送り状、財務報告書、記事など、幅広い対象から高精度にテキストを抽出できるようになっている。

 一方、Form Recognizerでは機械学習モデルを使い、フォームやドキュメントを分析したうえで、そこにあるキーと値のペア、テキスト、テーブルを抽出し、構造化されたJSON形式として出力することができる。

 Form Recognizerはレイアウトの解析、事前に学習したモデルの利用、カスタムモデルの使用など、多数の機能を備える。例えば、カスタムモデルでは、5枚の類似したフォーマットを用意することで、簡単にモデルを構築することができ、即座に利用できるという。

 「こうした機能を用い、ドキュメントプロセスオートメーションやインテリジェントなドキュメント処理などを実行し、アプリやフローに追加できる」(濱田氏)

 濱田氏は、今回のBuild 2022における主なアップデートを説明した。

 まずComputer Vision APIのOCRでは、日本語手書き文字の読み取りがアップデートされた。これはユーザーからも要望の多かった機能であり、高い精度で読み取れるという。さらに、既存の特徴であるコンテナの対応、オフラインでの利用、複数言語が混在するドキュメントからの高精度な読み取りについても、引き続き対応する。

 Form Recognizerでは、事前学習モデルとして“日本語の名刺”に対応した。名刺画像に含まれる「会社名」「住所」「電話番号」「部署」「メールアドレス」などを自動的に判別し、これらのキーと値のペアを抽出、出力する。濱田氏は「今後も多様な事前学習モデルを提供していく」と述べた。

 次に、スピーチの分野では「カスタムニューラルボイス」がある。

 これは、アプリケーション用に独自の音声合成モデルを作成できる機能だ。以前は教師データを用意するのに大変な手間がかかったが、現在のカスタムニューラルボイスでは、事前に用意された20から50のスクリプト(文)を読み上げるだけで、簡単にモデルを作成できるようになった。実際に発話させる際のイントネーションや速さ、強さなどは細かくチューニングできる。

OpenAIで開発を迅速化、責任あるAIでは多機能なツールを提供

 最後に登壇した棚橋氏は、「Azure OpenAI Service」と「Azure Machine Learning」を紹介した。

 OpenAI Serviceは、Build 2022で新たにAzure Cognitive Servicesの仲間入りをしたサービスだ。

 前述したとおり、マイクロソフトでは2019年にOpenAIと戦略的パートナーシップを結び、2020年9月にはGPT-3の独占的なライセンス契約を締結した。

 マイクロソフトは自社のサービスへのGPT-3の応用を進めてきた。GPT-3に基づくCodexモデルの活用によってAIペアプログラマー「GitHub Copilot」を開発する一方、2021年11月のMicrosoft Igniteでは、OpenAI Serviceの招待制プレビューを開始した。今回のMicrosoft Buildでは、リミテッドプレビューの開始を発表している。

 GPT-3モデルにはいくつかのバリエーションがある。これらのモデルによって、文章分類から文章要約、高度なコンテンツ生成までを実行できる。 また、Codexモデルでは、アプリケーションやプログラムの生成ができる。

 OpenAI Serviceには、「Azure OpenAI Studio」というツールがある。このツールは、OpenAI.comのプレイグラウンドのような機能を提供している。

 棚橋氏は、保険会社にメールで送られた交通事故の報告から人の名前を抽出する、文章を5つのカテゴリーに分類する、Pythonのコードの内容からコメント(説明文)を生成する、などのデモを見せた。

 OpenAI Studioでは、1つのツールで、トレーニングからモデルのデプロイまでを実行できるようになっている。

 「OpenAI ServiceをAzureで利用するメリットとして、Azure AD認証、 ネットワークセキュリティ、プライバシー、責任あるAIなどの機能がある」(棚橋氏)

 棚橋氏は続いて、GitHub CopilotとOpenAI Codexのデモを見せた。

 GitHub Copilotでは、カスタムビジョンサービスに画像を送信するスクリプトを書くデモを見せた。まず、パッケージを読み込み、カスタムビジョンサービスのエンドポイントや画像のバスをセットする。

 次に「カスタムビジョンサービスにリクエストをポストする」と自然言語(英語)で記述すると、対応する推奨コードをCopilotが示す。これを別ツールに移動することなく受け入れ、結果を確認できる。

 一方、Codexについては、自然言語からSQLステートメントを生成するデモを見せた。

 「Codexは実はもっといろいろなことができる。自然言語からコードを生成するほかに、コードを説明する文章を生成する、バグのあるコードを修正する、あるいは効率の高いコードへ変換する、といったことが可能だ」(棚橋氏)

 さらに棚橋氏は、責任あるAIがMachine Learning Serviceにどう実装されているかを紹介した。

 Build 2022では、責任あるAIのダッシュボードが、パブリックプレビューとして発表された。Azure ML Studioに統合されるこのダッシュボードでは、モデルのエラー分布の分析、任意の特徴量やメトリックを指定したデータ分布の確認、モデルにおける特徴量の重要度、反実仮想、因果分析などが行えるという。

* * *

 これまで紹介してきた通り、マイクロソフトは責任あるAIの原則に則りながら、ビジネスを加速する多様なAIサービスを提供できるようになった。小田氏は「紹介させていただいたAzure AIを使い、マイクロソフトは皆さまとともに、日本市場の活性化、Revitalize Japanを支援したいと思っている」と語り、セッションを結んだ。

(提供:日本マイクロソフト)

カテゴリートップへ

この連載の記事