次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート
Luupや三菱重工が感じたプラットフォームのメリット
プラットフォームの必要性と価値とは? ソラコム安川CTO、深く掘り下げる
接続できないところをなくしたい いよいよ衛星通信にも対応
100分におよぶ基調講演の最後のパートでは、「先見性を持って進化し続けるSORACOMのコネクティビティ」を解説したのが、ソラコムのシニアソフトウェアエンジニアである川上大喜氏になる。
川上氏は、改めてSORACOMのSIMテクノロジーを振り返る。セルラーに関しては日本のみの提供だったが、SORACOM IoT SIMの登場で今や世界166の国・地域へカバー範囲を拡げている。また、sigfoxのような低消費電力のLPWAにも注力。さらに、SIMを搭載したゲートウェイを介して、デバイスにコネクティビティを確保することもできる。直近では北米のCassiaのゲートウェイもSORACOMに対応し、一種の基地局としてBluetooth対応のデバイスをつなげるという。
そして昨年発表したSORACOM Arcでは、デバイスとVPNトンネルを構築することで、セルラーやLPWA以外の接続形態であっても、SORACOMプラットフォームにアクセスすることができるようになる。「デバイスや通信方法の垣根は確実になくなりつつあります」と川上氏は語る。
続いて川上氏は、昨日発表された衛星通信コネクティビティサービスについて言及する。今までも衛星通信のデータ自体はSORACOMプラットフォームで取り込むことができたが、デバイスやコネクティビティはユーザー側で用意する必要があった。これに対してテクノロジープレビューとして公開された「Sateliteメッセージングサービス」は、AstocastとSwarmSpaceという2つの衛星プロバイダーからのメッセージの送受信に対応し、アップリンクとダウンリンクの通信が可能になっている。衛星通信デバイスからの取得したデータはHarvestやLagoonに保存・可視化できる。
衛星通信は理論上はどこからでも通信可能だが、各国の法令で利用できる地域が制限されており、AstocastとSwarm Spaceでも利用範囲は異なる。現状、日本でも使えないのだが、もちろんサポートの予定となっている。「私自身も登山が趣味ですので、日本の中でもセルラーが届かないところがあるのは重々承知しています。こうしたところをつないでいくのが、ソラコムの使命だと考えています」と川上氏は語る。
AstocastもSwarm SpaceもいわゆるLEOと呼ばれる低軌道衛星のプロバイダーだが、衛星高度、通信周波数、リファレンスデバイスの消費電力、メッセージ長など技術的な仕様は異なっている。LEOの場合、衛星通信デバイスの上に衛星が来ている時点のみデータの送受信が可能になるので、1日の通信タイミングは数回になる。「いわゆる極所と言われるところ、接続できないところを世界からなくしたい。真のInternet Everywhereを実現したい。そのためにプラットフォームで必要なパーツが衛星通信です」と川上氏は訴える。
衛星通信への対応は、2019年に川上氏が提案したことを発端としてスタートし、今回ようやくテクノロジープレビューに至ったという。今回のワンストップでの衛星通信対応により、今までLTEやLPWAでも届かなかったところからでもデータを送受信できるようになった。安川氏は、これからのプラットフォームに求められるものとして、改めて「将来を見越して課題を見つけ、先んじて解決する先見性」を掲げる。
プラットフォームにまつわる4つの疑問に答える形で進めてきたSORACOM Discovery 2日目の基調講演。最後、安川氏はプラットフォームの価値とは「成功への道のりを後押しし、お客様のサービスやプロダクトをよりよい方向へ、世界をよりよい未来に導くこと」とまとめた。ソラコムの設計思想や先見性はもちろん、さまざまな場面で用いられる便利に使われるプラットフォームについて、深く考えさせられたセッションだった。
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