次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート

Luupや三菱重工が感じたプラットフォームのメリット

プラットフォームの必要性と価値とは? ソラコム安川CTO、深く掘り下げる

大谷イビサ 編集●ASCII

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グローバル、埋め込みSIM、サブスクリプションなどを見通してきた先見性

 最後は「これからのプラットフォームに求められるものは?」という問い。安川氏は、「将来を見越して課題を見つけ、先んじて解決する先見性」と応える。Leadership Statementにおいても、「Think Without Boundaries(殻を破って考える)」というものがあり、既存の制約や組織にとらわれず、多角的に広い範囲で物事を見て、大きな問題を解決し、イノベーションを起こすことが求められているという。

 安川氏は、ソラコムのSIMテクノロジーについて振り返る。「(2015年)最初に日本をセルラーでつなぐテクノロジーを出しました。いろいろ反響もいただきましたが、私はすごく焦っていたのを覚えています。世界中のヒトとモノをつなぐと言っているのに、まだ日本でしかつなげらなかったからです」と安川氏。当時からグローバルでつなぐにはどうしたよいかを考えた結果、翌年にリリースされたのがグローバル対応のSORACOM IoT SIMになる。

 複数のサブスクリプションに対応しつつ、160の国と地域に対応。複数の通信規格、マルチキャリアをサポートしたSORACOM IoT SIMだが、当時は社内でも果たしてニーズがあるのか疑問の声もあったという。しかし、グローバル対応のIoT SIMの出荷数は日本向けを上回り、今や89%に達する。「お客様のニーズを満たして、あらかじめ準備してきたからこそ実現できたと思う」と安川氏は振り返る。

SORACOM IoT SIMはすでに89%に達する

 2017年にはデバイスに埋め込み可能なチップ型SIMも用意したが、こちらもすでに現在はカード型SIMを上回っているという。製造工程で埋め込むことで、カードを挿すオペレーションが不要になり、フォームファクタも小さくできるというメリットが浸透してきているという。

 さらにサブスクリプション(契約回線)についても説明した。最初に出したplan01sは、世界145の国と地域をカバーしていたが、当初から1つのプロファイルではすべての国と地域をカバーするのは難しいと考えていた。そのため、APACの主要キャリアに対応したplanP1や日本の通信料を安くするplanX1、ヨーロッパ主要国でLTE-Mに対応したplanX3などのサブスクリプションも追加した。

 しかも2020年にはSIMを差し替えることなく、無線経由でサブスクリプションを追加できるサブスクリプションコンテナという仕組みも導入した。2016年に発表されたSORACOM IoT SIMでなぜ2020年の新機能が使えるのか? これも複数サブスクリプションの利用を想定し、あらかじめSIM OS上に必要な機能を搭載し、独自の加入者情報データベース(HLR/HSS)でサブスクリプション管理を行なっていたからこそ実現できたという。まさに先見性がなければ難しかったわけだ。

2016年に発表されたSORACOM IoT SIMでなぜ2020年の新機能が使えるのか?

独自の加入者情報データベースでサブスクリプション管理

Uberがソラコムをパートナーに選んだ理由とは?

 こうしたサブスクリプション管理の仕組みを活用しているのがご存じUber Technologiesになる。Uber TechnologiesはUber Eatsの加入店に対してタブレットと通信回線をバンドルして提供しており、パートナー企業と開発したUber SIMを用いて統合管理している。このUber SIMをベースに国や地域ごとのローカルプロバイダーと提携しており、今回ソラコムは日本での通信回線のパートナーとして選定。SORACOM AirのeUICCプロファイルを採用している。

Uber Technologiesがソラコムをパートナーに選定

 技術案件とサプライチェーンのマネジメントを手がけるUber Technologiesのラフール・ビジェイ氏は、Uber Eatsにおいて、24時間365日体制で注文を受け付け、配送を実現するためには接続性やAPIの可用性が重要で、特に無線とソフトウェアとのシームレスな接続が鍵になると説明する。SORACOMを選定した理由は「チームメンバーの中で、SORACOMを扱っていた人が何人かいて、求めていたものにぴったりだと感じたから」とのこと。

Uber Technologies Head Of Direct Deals and Supply Chainのラフール・ビジェイ氏

 選定の鍵となったのは、「日本国内の通信のカバレッジ」「Uberが求めているものを取り入れる技術力「ビジネスの観点における柔軟性」という3点。Uberの接続管理プラットフォームにSORACOM APIを導入し、物理的なSIMカードや埋め込み型のeSIMのSIMのライフサイクル管理を行なっている。

 現時点での提携は日本のみだが、今後はグローバル展開という可能性もありうるだろう。ビジェイ氏は、「テクノロジーとコネクティビティを通じて、Uberの競争優位性を高めるという私たちのビジョンを実現するためにパートナーになっていただき、感謝しています。これからその道のりをご一緒していただければ幸いです」とコメントした。Uberのようなビッグプレイヤーであっても、車輪の再発明は避け、プラットフォームプレイヤーのソリューションを積極的に採用するというのが印象的だった。

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