超薄型化のM2搭載MacBook AirにiOS 16登場! 「WWDC22」特集 第26回
完成度の高いM1を上回るM2搭載「MacBook Pro 13インチ」その性能と位置付け【本田雅一】
2022年06月23日 09時00分更新
消費電力そのままにコア進化+クロック周波数向上
M1と全く同じシステムに換装できるよう設計されている。全く同じ本体を持つM1搭載のモデルと並列に並べてテストしたが、本体の温度上昇はほとんど変わらない。熱的な特性はM1とM2で揃えられているようだ。言い換えれば、M1搭載機とM2搭載機の(発熱に関しての)体験は全く同等と考えていい。
その上でクロック周波数の上限が高められ、GPUコア数の増加とコアの高性能化、Neural Engine強化、Media Engineの搭載などが実施されている。CPUの最大クロック周波数は3.5GHzと300MHz向上している。いずれもシングルコア処理での最大値だが、同時に多数のコアが動作する場合はM1が3GHz、M2が3.2GHz動作で200MHzの増分となる。
GPUなど他コンポーネントのクロック周波数は明らかではないが、同時にコアの設計も進歩しているため、ベンチマーク結果を複合的に読み取るのが良いだろう。
・Cinebench R23
Cinebench R23は主としてCPUの性能テストであるとともに、マルチコアでの高負荷をかけた際の発熱具合や持続的なパフォーマンスについて計測できるアプリケーションだ。処理は3DグラフィックスのレンダリングだがGPUは使われない一方、並列度が高く、全CPUコアにほぼ100%の負荷をかけることができる。それ故に冷却システムを含めたシステム全体の処理能力を知ることができる。
26度の室温で10分間の連続テストを実施したが、M1、M2いずれのシステムにおいても、最も高温となるヒンジ部中央、キーボードとの間の部分で36度台をキープしていた。
冷却ファンは動作するため、おそらくM2搭載MacBook Airでは長時間動かしていると性能が落ちてくるだろうが、本機ではMacBook系製品での温度上限(おそらくスロットリングが発生している温度)となる40度超(41〜42度程度)の領域まで余裕があるため、よほど暑い環境でなければ性能を維持できるだろう。すなわち「同等の発熱量(冷却能力のバジェット)」での性能差と言える。
さてスコア評価だが、マルチコアが13.2%、シングルコアが11.2%の向上となった。クロック周波数の増分はマルチコア時6.7%、シングルコア時10%であるためシングルコア(高性能コア)は、回路設計の刷新による影響はさほど大きくないと考えられる。
一方、マルチコア(4個の高性能コア+4個の高効率コア)のスコアはクロック周波数に比して速度ゲインが大きい。これは高性能コアに比べ、高効率コアの回路設計上の性能向上幅が大きいことを示唆している。
・Geekbench 5
いくつかの典型的な関数を実行するベンチマークテストで、CPUとGPUの比較的単純な処理速度を計測できる。こちらも定番で異なるアーキテクチャのCPU、GPUでもそれぞれに最適化をしたり、GPU処理では利用するライブラリを切り替えられるなど多様な比較ができる。今回はMac上のパフォーマンスということで、GPU演算能力はMetalで計測した。
CPUのシングルコア性能で業界トップに返り咲き、マルチコアのスコアも大幅に伸ばした。マルチコアはCinebenchで考察した通り、高効率コアの性能向上が全体の伸びに寄与している。
もっとも、アーキテクチャの一新とコア数増加(8個から10個)の両方が効いているGPU演算能力はスコア値で30777と、M1の20500〜21000程度のスコアから1.5倍程度と大幅に伸びている。モバイル向けの外付けGPUで近いスコアはAMD Radeon 5500Mの29714あたりだろうか。内蔵GPUとしてはかなりの高性能と言えるだろう。
・3Dmark Wildlife Extreme Stress Test
iPad向けアプリの3Dmark Wildlifeを、Extreme Stress Testモードで動作させた。このテストは約1分の3Dシーンを20回繰り返しレンダリングさせるモードだ。フレームレートで45%前後の向上がみられ、Geekbench 5における50%アップという演算性能を裏付けるテスト結果となっているが、あえてストレステストで実行したのは熱の影響と消費電力の確認をするためだ。
M1搭載機では100%だったバッテリ残量が96%と、たった4%しかドロップしなかった。一方でM2搭載機はバッテリ残量が86%まで落ちており、GPUをフル稼働させた場合の消費電力が大きいことがわかる。
この結果は厳密にはGPUの消費電力だけを計測しているわけではないが、3Dmarkのように3Dグラフィクスを生成する処理においてピーク時に多くの電力を食うとも捉えられる。一方で限られたノートパソコンというフォームファクタ上でのことと考えるなら、短時間により多くの処理をこなせるという解釈もできる。
・Final Cut Pro
M2から内蔵されたMedia Engineの効能を探るため、Final Cut Proのパフォーマンスを観察した。「観察した」と表現したのは、このコンポーネントが活躍するシーンでは、他の処理能力も並行して試されることになるためだ。
なおテストではFinal Cut Proを用いたが、iMovie、DaVinci Resolve、Premere ProなどもMedia Engineを活用している。テストに使ったのは8K/30P/HLGのProRes422HQストリーム17本を用い、最終的に全ての映像を重ね合わせ、カラーグレーディングもしつつタイトルをオーバーレイする34秒ほどのビデオクリップだ。
特に中間ファイル(プロクシファイル、作業・表示用にProRes422で作られる)生成が高速になった。中間ファイルはバックグラウンドで、表の作業が中断しているときに生成されるため正確なベンチマークは計測できないが、おおむね2.5倍前後の速度で生成が進行、完了する。
これはMedia EngineのProResエンコーダ、デコーダが有効に動作しているからだろう。その裏付けとなるのがCPU負荷で、M1搭載機では中間ファイル生成期間中、最大では400%、おおむね100〜120%程度の負荷がかかっているのに対し、M1搭載機は30〜35%程度の負荷となる。またその際のGPU負荷もM1搭載機の方が低かった(40%未満、M2搭載機では60%を超える)。M2の方がGPU能力が高いことを考えれば 、実際のスループットは2倍以上あるかもしれない。
このプロジェクトからHEVCファイルを書き出す処理では、処理の75%に達するまでの速度がM2搭載機の方が3倍近く速い。その後はHEVCエンコードに入るため、M1とM2の差は縮まる(HEVCアクセラレータは両方に入っているためクロック周波数の違いのみになる)が、それでもM2搭載機の39分50秒に対してM1搭載機は48分20秒とかなりの差が出た。
しかも100%に充電してからバッテリ駆動で両処理をしたが、書き出し終了後の残量はM2搭載機が96%だったのに対し、M1搭載機は90%まで減っていた。つまり同じ処理を行うならば、M2の方が少ないエネルギーで済むことになる。
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