これはトイレのNetflixじゃないか
── メディアとしてはどう使われているんですか?
たとえば画面で施設の情報を教えたりしていますね。
── 「何階でこんなフェアをやっています」とか。
商業施設ならそういうものですし、オフィスなら「トイレをきれいに使いましょう」という呼びかけや、会社のミッションをお伝えするのにも使えますね。あとはトイレということで、世界でトイレの問題に取り組んでいる水・衛生専門のウォーターエイドさんというNGOの取り組みを紹介したりもしています。
── いろいろ大切なメッセージを伝えられる。普通の広告も流れるんですか?
はい。できるだけトイレに最適化されたものにしたいと思っていて、たとえばフェムテック関連の広告などが出ています。
── そっか、もともと男女別だから広告に特徴が出せるんだ。
それもAirKnock Adsの特徴ですね。女性の場合、たとえばオンラインでピルを買えるオンラインピルなどの広告も出ます。場所がオフィスなどの場合は年齢や男女差がわかるぶん、ある程度のターゲティングもできるので、たとえばテレシーさんみたいな運用型テレビCMや、プロフェッショナル向け英語教育の広告などが出るようになっています。
── なるほど、タクシー広告みたいな、ゆるいけどターゲッティングができる。 銀行に行くと役員用トイレが別にあったりすると思うんですが、そこには役員向けの広告を出したりして。
(笑)将来的にはそういうのもありうるかもしれません。
── シネコンがある商業施設なら映画の予告編が流れたり。
ありえますね。ただ僕たちとしては、先ほどのNPOの話につながるんですが、トイレで思い悩むことが長期間滞在の理由になっていることがあり、それを社会課題として解決したいなと思っているんです。悩みを無償で相談できるチャットを提供しているあなたのいばしょというNPOがあるんですが……。
── まさかトイレに悩みを相談できるとか?
(笑)基本的にタブレットの操作はできないようになっているんですが、QRコードを表示することはできるんです。そこで実際に試したところ、QRを読み込んだ方のうち、実際に相談をされた方が95%程度という結果でした。あなたのいばしょさんが過去に紙で実験をされたときは15%くらいだったというので。
── トイレは悩んでる人の駆け込み寺だった。
そういうところがあったのかなと。
── 最初は長時間滞在の抑制が目的だったけど、そこからさらに進み、トイレに入っている人の心の問題にまでメディアとして入ってきたということですね。
コンテンツが与える力というものはすごいなと感じますね。
── もうほぼNetflixですね。
(笑)Netflixですか。
── Netflixって最初DVDの貸し借りを最適化していたじゃないですか。それでそれまでのビデオ屋さんとは比べようもない回転率を達成したんだけど、次には自分たちがコンテンツを作りはじめた。各国のテレビ局とかクリエイターにコンテンツを作ってもらって、ある種、世界のハートを変えているような感じがある。その意味で、AirKnockはほぼNetflixですね、僕の見立てでは。
ありがとうございます。最近、不動産ファンドの方が取り組みに共感してくれてるんです。SDGsやESGの問題に対して思い入れがある。その中で、僕たちがNGOやNPOに寄付をするような取り組みに共感してくれていて。あと僕たちは利用者のためにというのが始まりだったので、利用者の満足度が圧倒的に高いんです。ファンドからするとそこも安心できるというところがありますね。
── 押しつけじゃないのはメディアの基本ですね。客がそこにいるから提示するっていう。
やっぱり一番は利用者のためなので。たとえば私たちのタブレットはトイレ用に作ったものなので、カメラがついていないんですね。形もすごくシンプルな四角形なんですが、ケガをするといけないというので角に丸みをつけたりして。当たり前なんですがそういうところもこだわっています。
── なるほどなるほど。
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