運転がうまくなったような
リニアなハンドドリング
今回、試乗で最初にハンドルを握ったのは「ソルテラ」の4WDです。街中を走らせてみれば、その動きはとても軽快です。これにはちょっと驚きました。なぜなら「ソルテラ」の4WDの上位グレードは車両重量が2030kgもあります。大人2人で試乗しましたから、さらに150kgほどもプラスされています。それでも「ソルテラ」は、軽やかな動きを見せます。高速道路での本線合流の加速も、なかなかのもの。ただし、2つのモーターを足しても218馬力ですから、びっくりするほど速いわけではありません。
また走らせて感心したのは、リニアなハンドリングです。ハンドルを持つ片方の手に、ほんのわずか力を入れるだけで、クルマはジワジワと向きを変えます。どれだけ曲がるかは、まさに意のまま。くねくねとしたワインディングを、まるでスポーツカーのように、狙ったライン通りに走ってくれるのです。また、アップダウンでのクルマの姿勢も安定していて、安心感が高いのもうれしいところ。以前に取材したスバルの開発者が言った「狙うのは運転がうまくなった気分にさせてくれるハンドリング」を思い出します。楽しくなって、いつまでも、運転していたくなります。
ちなみに「ソルテラ」には、パドルシフトがついていて操作することで回生ブレーキの効き具合を調整することができます。これは「bZ4X」にはない「ソルテラ」だけの機能。また、「Sペダルドライブ」という機能もあり、これはボタンを押すと回生ブレーキの効き目がさらに強くなります。アクセルペダルを踏みこんで加速するだけでなく、アクセルを戻すことで軽いブレーキを効かせることができるのです。パドルシフトとSペダルドライブを使いこなす走りも、「ソルテラ」ならではの魅力です。
シンプルでわかりやすいFFの操作と動き
続いて試乗したのが「bZ4X」のFFモデル。走らせてすぐに気がつくのは、さらなる軽快さです。スパッと小気味よく向きを変えてくれます。パワーとトルクは、2モーターの4WDにかないませんが、そのかわりに重量は110kgほども軽いのがFFモデルです。軽さを生かした、軽快な走り味でした。
また、軽いということでFFは4WDよりも電費に優れるため、同じ電力量でもより遠くまで走れるのがFFのメリットとなります。そして「bZ4X」は「Sペダルドライブ」と同じ回生ブレーキを強める機能を備えますが、パドルシフトはありません。運転好きには物足りなく感じるかもしれませんが、面倒な操作を敬遠したい人には、シンプルな「bZ4X」の方が簡単なはず。
試乗してみて思うのは、4WDの「ソルテラ」は運転をいろいろと楽しみたいという人にオススメということ。一方、「bZ4X」のFFは、操作系がシンプルで誰にでもわかりやすく、しかも軽快感が強い、そして電費が良いのが特徴です。4WDや運転にこだわらずに、SUVのEVをカジュアルに乗りたいという人に「bZ4X」はオススメではないでしょうか。
ちなみに、現時点では「ソルテラ」を購入する人の大多数は4WDを選んでいるとか。つまりFFは、ほとんど「bZ4X」ばかりということになります。そして4WDの足回りのセッティングは「bZ4X」と「ソルテラ」は異なりますが、FFは2車同じだそうです。
オーディオの音の違いと
便利な100Vコンセント
最後に2車の違いで気づいたのがプレミアムオーディオの違いです。「bZ4X」はJBL、「ソルテラ」にはハーマンカードンが用意されています。今回の試乗で聞き比べてみると、JBLは華やかな高音と力強い低音、ハーマンカードンは耳に優しい上品な高音と芯のある低音という違いを感じました。ロック系はJBL、歌もの系はハーマンカードンがマッチするのではないでしょうか。
そして2車ともに用意されている注目の装備が、AC100V/1500Wのアクセサリーコンセントです。荷室の横にコンセントがあり、1500Wまでの電気が使えるのです。キャンプや車中泊、停電などの緊急時に役立つうれしいもの。EVとしては意外と珍しい装備です。これも「bZ4X」と「ソルテラ」の大きな魅力の1つと言えるでしょう。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
この連載の記事
-
第483回
自動車
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ -
第482回
自動車
これがBMWの未来! フラッグシップEVの「iX」は乗り心地良すぎで動くファーストクラス -
第481回
自動車
アルファ・ロメオのハイブリッドSUV「トナーレ」はキビキビ走って良い意味で「らしく」ない -
第480回
自動車
独特なデザインが目立つルノーのクーペSUV「アルカナ E-TECH エンジニアード」はアイドルも納得の走り -
第479回
自動車
レクサスのエントリーSUV「LBX」は細部の徹底作り込みで高級ブランドの世界観を体現した -
第478回
自動車
レクサスの高級オープン「LC500 コンバーチブル」は快適さのその先を教えてくれる -
第477回
自動車
BMWの都市型SUV「X4」は直6エンジンならではのパワフルな走りがキモチイイ! -
第476回
自動車
最新のマツダ「ロードスター」は乗った誰もが乗り換えを検討するレベルのデキの良さ -
第475回
自動車
EV=無個性ではない! BMWのEV「iX3」は剛性ボディーが魅力のミドルサイズSUV -
第474回
自動車
ルノーのコンパクトカー「ルーテシア E-TECH エンジニアード」は軽量でパワフルでスポーティー! -
第473回
自動車
ホンダの大人気ミニバン「FREED」に乗ってわかった5つの良くなったポイント - この連載の一覧へ