JETRO、スタートアップのブラジル市場展開のため支援策を発表
巨大市場ブラジルに挑戦できるスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「ScaleUp in Brazil」
環境問題を解決する技術でブラジルに挑む AC Biode
最後にブラジル市場への進出を目指しているスタートアップの実例として、AC Biode株式会社 代表取締役社長 久保 直嗣氏から同社の事業概要が紹介された。久保氏は以前商社に勤務していた時にブラジルで2年間の駐在経験があったとのことで、その時からブラジル市場の規模やポテンシャルに魅力を感じていたと話す。コロナの影響でその実現には時間がかかっていたものの、もともと何かきっかけがあればブラジルに進出したいと思っていたそう。同社にとって今回のScaleUp in Brazilは非常に良いチャンスとなっただろう。
AC Biode社は様々な事業を展開しているが、ブラジルでオペレーションを予定しているのは灰のリサイクル事業だ。例えばバイオマスや石炭による発電、下水汚泥の焼却処理などで大量の灰が出てしまうが、これの処理が世界各地で社会課題となっている。
多くの場合、そういった灰はセメントに混ぜて使用するなどしているが、同社は灰をリサイクルして吸着材や抗菌材として利用できる「CircuLite(サーキュライト)」を生成し、フィルター、土壌改質、水質改善などに活用したり、温暖化ガスの吸着や海洋油漏れの油吸着などへの利用を可能にした。つまり、灰の処理問題を解決すると同時に他の環境問題を解決する一石二鳥の製品を開発したということになる。
環境問題に敏感な欧州にはルクセンブルグとイギリスに拠点を持っており、EUの半官半民のVCから出資を受けるなどして活動を加速している。アジアでは台湾に工場を持ち、年間3000トンのCircuLiteを生産している。他にもタイやカザフスタン、オーストリアでの案件受注もあり、それを横展開する先として、南米のブラジルへの進出に取り組んでいるとのことだ。
ブラジルは多様な資源を保有していることや大きな人口を抱えていることから、これまでも将来の飛躍が期待されていた。しかし政情不安やコロナなど公衆衛生面での課題などにより、事業展開については高い優先順位を与えていなかったスタートアップやビジネスマンは少なくないだろう。しかし今回のイベントを通じて、そのような不安感を凌駕するポテンシャル及びそれを顕在化するための施策があることを知ることができた。ScaleUp in Brazilを通じて、多くのスタートアップが成長する市場で活躍されることを心より願っている。