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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第667回

HPですら実現できなかったメモリスタをあっさり実用化したベンチャー企業TetraMem AIプロセッサーの昨今

2022年05月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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In-Memory Computingに必要な要素と
その無茶すぎる要求に応えられるメモリー素子

 ではIn-Memory Computingを実現するとして、その特徴はどういうものになるのか? というのが下の画像の左側である。

両方の特徴に強く必要とされるのはRetention(データ保持性)、というのがおもしろい

 Memory Application、つまり大量のデータを扱うアプリケーションに求められる特性が水色、Computing Application、つまり演算性能が必要なアプリケーションに求められるのがオレンジで示されているものになる。周囲に並んでいるのはそれぞれの特徴である。AIの場合、MemoryとComputing、両方の特徴を必要とするので、以下のことが重要とされる。

  • 低電圧/定電流動作
  • 再現性(量産に耐える構造の実現)
  • 低価格
  • 高密度記憶
  • 3次元積層可能
  • 均一性(モノリシックなメモリーとして扱える)
  • 書き込みの高速性
  • 読み出しの高速性
  • 高い信頼性
  • 記憶保持特性
  • On/Off Ratio(OnとOffを明確に区別できること)
  • 多レベル記憶
  • 電圧/電流特性の直進性(一次関数的に扱えること)

次点でオフ状態で抵抗を減らすことが挙がっている。

 これだけのものを全部扱えないといけないわけだ。そのためのメモリー素子の候補が上の画像の右側である。

 ここでいきなりDRAMが落ちてるあたりは、Samsungあたりがクレームを付けそうだ(HBM-PIMはDRAMベースである)がそれはおいておくとして、候補に挙がった「現在使われているIn-Memory Computing」向けの記憶素子の問題が下の画像だ。

どの記憶素子でも、上の画像の左側に挙がっている要件を全部満たすのは難があるというのだが、そもそも上の画像に挙がってる項目がわりと無茶すぎる

 どれも相応に問題があるわけで、HBM-PIMはDRAMを、MythicはNANDフラッシュを利用したのだが、TetraMemはここにメモリスタを使うという決断を下した。

一見するとわりと良好な特性に思えるのだが、なにかしらの落とし穴があるのかどうか、ここからでは判断できない

 メモリスタとは、「流れる電流に応じてその抵抗値が変わる」という第4の受動素子と呼ばれるもので、その理論的な存在は1971年に論文として発表されていたが、現実にこれが可能になったのは2008年のこと。HP Labsが二酸化チタンの薄膜を利用して、初めてメモリスタの試作に成功する

 HPはこのメモリスタを利用して、The Machineの開発を試みていたが、同社のMemory Driven Computingのページを見る限り、先の記事からの進展は余りないようだ。

 これをベンチャー企業が手掛けるのはなかなか難しいように思うが、ここにYang教授とXia教授が同社に参画している意味があるのだろう。同社によれば現在試作しているメモリスタは、メモリーアプリケーションにはまだいくつか難があるが、コンピューティングアプリケーションには向いているとしており、実際に大規模なメモリスタベースのコンピューティング向けアレイも実現できたとしている

メモリーアプリケーション向けにはまだコストや製造技術の点で競合と差別化できるところまでは行っていないとする

先に駆動用トランジスタを通常のCMOSプロセスで構築、メモリスタはその後の配線層の構築(BEOL)の中で積層する模様だ。どうやってBEOLの中でメモリスタセルを構築するか、が同社の最大のノウハウなのだと思われる

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