「こだわりのポイント」と「低価格化」のバランスが絶妙
オーディオ製品は音が良ければ、すべてが許される。そんな製品だ。もちろん故障したり使いにくいようではダメだが、スペックを高めるためにコストを投入するのではなく、創意工夫や開発のアプローチで音質を高め、あえてカタログ的なスペックは捨てるという開発もアリなのがオーディオ製品だと思う。このあたりはスマートフォンなどの情報系ガジェットと大きく異なるところだ。
Rayの場合で言うと、もちろんコストを下げるための工夫、いや割り切っているポイントをいくつか見つけることができる。前述したBluetooth非対応もその一つだろうが、ほかにもHDMI端子を備えていない。つまりテレビのARC(オーディオリターンチャンネル)機能を用いての音声接続は行えない。
これでは「テレビとの連動ができずに不便では?」と思うだろうが、その代わりにRayはTOS-Link(いわゆる光オーディオケーブル)で音声をつなぎ、テレビとの連動は赤外線リモコンで行う方式を採用している。
光端子からは一般的なデジタル音声以外にも、ドルビーデジタルやDTSは受けることが可能だが、ロスレスサラウンドやドルビーATMOSといった音声フォーマットには対応していない。が、この辺りは本格的なシアターシステムでなければ、非対応が問題になることはない。
また、無線LANは2.4GHz 802.11/b/g/n対応のみで5GHz帯はつながらないなど、安価であることの理由はある。しかし、一方でコンパクトながらも音はいい。
本機にはツイーターとミッドバス(中低域)ユニットが搭載され、低域は共鳴管を用いて強化しているようだ。このやり方では低域の位相遅れなどが感じられ、仮想サラウンドなどで、少しばかり違和感を覚えることもある。しかし、近年の発達したデジタル信号処理のおかげで、決して重低音と言えるような音域まで出るわけではないが、音楽と映像作品を楽しむ上で十分な帯域をバランスよく、位相のねじれを感じさせずに聞かせる。
このあたりは「開発時の工夫やチューニング」でカバーできるところ。つまりコストは抑えているが、「質」の部分にはこだわって作り込みをしている。オーディオ製品としての開発コンセプトを感じさせる部分だ。