コンパクトでリーズナブル。しかし心地よい音場を生み出すRay
Sonos Rayはテレビに接続して使うサウンドバーという製品だ。薄型テレビはスピーカーに使える容量が小さいため音質を高めることが難しい。そこでサウンドバーの登場となるが、ソノスはこれまで一貫して「音楽再生の質」にこだわってきた。
なぜならソノスが提供しているシステムは、自律的に(つまりスマホなどの助けなく)家庭内LAN内にある音楽データ、さまざまな音楽ストリーミングサービス、インターネットラジオなどに接続、再生する能力を持っているからだ。
これはBluetoothスピーカーなどと全く異なるポイント。一方でRayには、Bluetoothは搭載されていない。スマートフォンからの再生はWiFi経由でAirPlay 2の再生、あるいはアプリを使って登録してあるストリーミングサービスを利用することになる。
ソノスの製品価値は、この音楽サービスとの親和性やスマホからの独立したインテリジェントな動作にあるため、何より「音楽再生した時の質」を重視している。この辺りは、テレビとのペアリングに重きを置く多くの製品との違いと言えるかもしれない。その「音質」に関しては後述するが、ソノスのラインナップにはドルビーATMOSにも対応したARC、BEAM2といい製品もあり、Rayはその中で最も安価な製品という設定だ。
日本では年内発売で調整されておりまだ発売日が決まっていないようだが、米国では279ドルで6月7日に発売する。そのほか欧州などの主要地域、一部アジアなどでも6月7日に発売される。円安の昨今だが、3万5000円前後に収まっていればリーズナブルと言えるだろう。559×95×71mmというコンパクトサイズと1.95kgの軽さで、常識的に考えれば音質にはあまり期待できそうにない。
しかし、血を這うような低音がとどろいたりはしないが(それはサブウーファーの領域だ)、心地よく大きな音場を生み出し、何より音楽ならばヴォーカル、映画などのサラウンド音声ならばセリフが明瞭かつシャープで聞き取りやすい。また小型スピーカーにありがちな、うわずった声質ではなく、しっかりと低い声が重みを持ってそのセリフの表情を伝えてくる。
音楽を聴いても映像を楽しんでも、どちらでも納得感のある音質はとてもエントリークラスとは思えない。もちろん、上位にはARCとBEAM 2があり、それぞれRayよりも再生帯域が広く、対応する音声フォーマットも多い。
しかしエントリークラスだからと言って、音の質感に手を抜くことはなく、しっかりと再生帯域内のエネルギーバランスを取り、位相特性も合わせ込んである。価格は安くとも信号処理や設計の工夫で質を高められることを、しっかりやり抜いているという印象だ。