オンラインバンキング不正アクセスを阻止する不正検知プラットフォームの現在
セブン銀行 執行役員 西井健二朗氏×カウリス 代表取締役CEO 島津敦好氏
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犯罪かどうかの境目を見分けられる強み
──両社のパートナーシップの強みはどこにあると考えますか。
島津 犯罪かどうかの分岐点、もっと広げて言えば正しい行為と不正な行為との境目を、両社の協業によって見極めることができるのが最も大きなメリットであり強みでもあると認識しています。特に不正アクセスというのは毎年大きく手口が変わってきますから、新たな手口について協議させてもらえるのはありがたいですね。「何かありましたか?」と尋ねれば、「今朝こういうことがあった」などすぐに教えていただいたりと、活発で頻繁なやり取りができる関係を築けたのは本当に大きな成果だと実感しています。
西井 カウリスさんおよび関西電力さんと2019年3月から6月にかけて、経済産業省の「新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)」を活用して不正な銀行口座の開設を未然に防ぐことを目的にした実証実験を行いました。これは金融と電力のデータを組み合わせる国内初の試みです。もし正式に銀行の情報と電力会社の情報をマッチングしていいとなれば、提携している金融機関にも展開できるようになり、全国26000台のATMのセキュリティにも大いに貢献できるはずです。自前だけなら電力事業者の情報にアクセスまではしませんから、そこはカウリスさんとの協業が鍵となってくると期待しています。
島津 マイナンバーカードもまだ十分に普及していない中にあって、本人確認書類というのはオンラインだと偽造されるリスクも生じてきます。国がそこを担保しきれないのであれば、ある意味、セブン銀行さんが担うこともできるのではないでしょうか。セブン銀行さんのATMから他の銀行の口座開設もできるとなってくれば、セキュリティを軸にした各銀行共通の本人確認プロセスというのも実現できるはずなので、ぜひ我々がそこを手掛けたいと考えています。
“怪しさ度合い”の格付けサービスの展開も
──最後に、今後の展開について現時点での構想などお聞かせください。
島津 まずは不正を検知する精度を上げていきたいですね。銀行もクレジットカード会社も悪質利用者に関する情報を個々に持ってはいますが、業界全体の情報を流通するプラットフォームを作らない限り、ガバナンスとセキュリティに係るコストが上がり続けてしまい、それは利用者にとってもよくありませんから。
我々の競合は「不正を行う人」だと考えているので、悪質な行為やユーザーなどの情報を企業や業界間の垣根を越えて少しでも多く集めることで、良い悪いの判断がより的確にできるようにしていきたいです。
西井 これまでの不正検知に関するデータをもう1回集約して、この3月から“怪しさ度合い”の格付けを行うシステムを開始しています。こうしたアプローチを進めていくと、またカウリスさんと協力していけるのではと期待しています。
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