まずは「エンタープライズ」「パートナー協業」の2点に注力、福岡・那覇へのPoP新設も発表
Cloudflareが日本市場でビジネス本格化、新社長・佐藤氏が語る
2022年03月16日 07時00分更新
米Cloudflareの日本法人であるクラウドフレア・ジャパンは2022年3月15日、今年1月に社長就任した佐藤知成氏が出席する記者説明会を開催した。佐藤氏は「日本法人設立から約2年を迎え、あらためて本格的にビジネスを推進していく体制を急速に整えている」と語り、「エンタープライズビジネスの強化」「パートナー企業との協業を拡充」といった注力ポイントを掲げた。目標として「今後3年以内に日本市場を、米国を除く世界トップの市場に成長させる」としている。
100カ国/250都市以上のエッジ拠点をベースにサービスを展開
2009年に米国で設立されたCloudflareは、グローバル100カ国以上/250都市以上に展開するPOP/データセンターをサービス基盤として、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)、DDoS攻撃対策、負荷分散、WAF、SASE/CASB、ゼロトラストネットワークアクセス、エッジコンピューティングなどのインターネットサービスを提供している。
Cloudflareの共同創設者で社長兼COOを務めるミシェル・ザトリン氏は、同社は「インターネットをより安全で、より速く、より信頼できるものにする(Safer, Faster, More Reliable)」ことを支援していると説明する。1日あたり860億件のサイバー攻撃を顧客ネットワークへの到達前にブロックしているほか、世界のオンラインサイトの約20%が同社サービスを利用しており、顧客サービスがダウンしないよう信頼性向上にも貢献している。
「創業から10年以上にわたって構築してきたネットワークがあるからこそ、こうしたことが実現している。Cloudflareでは何千万ドルもの投資によって、インターネット上の95%のユーザーから50ミリ秒以内でアクセスできるグローバルネットワークのフットプリントを構築してきた。現在でもそれはトッププライオリティとする取り組みの1つである」(ザトリン氏)
さらにザトリン氏は、日本市場がCloudflareにとって重要な市場であることも強調した。同社では、創業から10カ月後の2010年に東京にPoPを構築して、日本へのネットワーク展開を始めている。現在は東京と大阪にPoPを設置しており、日本の顧客企業においては1日あたり19億件のサイバー攻撃をブロックしている。
「3年以内に日本市場をCloudflareのトップカントリーへ」
続いて佐藤氏が、日本市場におけるビジネス展開の方向性を説明した。
現在、日本の企業や社会を取り巻く環境は大きく変化している。2018年に政府が「クラウド・バイ・デフォルト原則」を宣言し、昨年にはデジタル庁が発足するなど、官民そろってDX加速に大きく舵を切ったところだ。また社会生活においては、コロナ禍の体験から「どこからでも働ける環境(リモート/ハイブリッドワーク環境)」が求められるようになり、日常生活のあらゆる場面でデジタル活用が一気に加速している。
デジタル化が進んだことで、サイバー攻撃の脅威はさらに影響の大きなものとなっている。昨年末の「Log4j」ゼロデイ脆弱性発見では、その影響の大きさがあらためて認識された。加えて、国家間でのサイバー攻撃も常態化しており、現在起きているロシアの軍事侵攻のような事象が発生すれば、サイバー攻撃(サイバー戦争)も活発化することになる。経済産業省、金融庁では今年2月に「昨今の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について注意喚起を行います」とする文書を公開している。
佐藤氏は、こうした状況下において「Cloudflareは非常に大きな責任を持っていると認識している」と語る。「より良いインターネットの構築を手助けする」という企業ミッションのもと、特に日本市場においては「あらゆる産業のDXをリードする」ことで「日本社会全体を次のステージに引き上げていく役割」を担っていく。
そのうえで、Cloudflareが展開する各国の中での日本の位置づけを「3年以内に、米国を除く世界トップのカントリーに成長させる」ことが目標だと述べた。現状での日本市場の位置づけ、順位については明らかにしなかったが、本社からの大規模な投資を得て一気に成長を図る戦略のようだ。
「日本単体で見た場合、ほかの国と比べて相当なジャンプアップが必要だと考えている。(後述する)事業活動方針や日本への投資については、本社からのコミットメントを得ており、ほかの国と比べると格段に大きな投資を得て、ビジネスの新たなスタートを切る。他国に引けを取らない、さらにはそれを超えていくサービスへと急速に成長させていきたい」(佐藤氏)
PoP/データセンターを福岡と那覇にも新設へ
佐藤氏は「これからのCloudflare Japan」として、今年はまずエンタープライズビジネスの強化、パートナー企業協業の拡充という2点に注力していくことを説明した。
まずはエンタープライズビジネスの強化だ。日本法人設立(2020年7月)からおよそ2年が経過し、同社ではあらためて今年、本格的にビジネスを推進していく体制を整えている。丸の内に新オフィスを構えたほか、セールスやオペレーションの人材確保を進めている。また、これまで“縁の下の力持ち”的存在だったCloudflareだが、どんな支援を提供する会社なのかを積極的に伝えるブランディング活動も開始した。
一方、パートナー企業との協業拡充においては、共同マーケティングの実施や、認定トレーニングの展開などを進める。さらに、CDNの有力ベンダーとしてだけでなく、ゼロトラストネットワークアクセスやSASEといったセキュリティサービス、さらに強みを持つエッジコンピューティングサービスについても、パートナーと一体となって顧客への展開を進めると語る。
こうした取り組みを通じて、グローバルの最新技術やベストプラクティスを日本の顧客にいち早く紹介し、その反対に、日本国内でアレンジしたものがグローバルの“模範”となる事例になるよう、ビジネスを推進していきたいと抱負を述べた。また、日本はインダストリーごとに特徴を持つ市場であるため、インダストリー別のアプローチも展開していくという。
また日本市場に対する投資の観点では、現在の東京、大阪に加えて、年内の早い時期には福岡と那覇にもPoP/データセンターを新設する予定だと明らかにした。
なお、グローバルで展開を進めている社会貢献プログラムを日本でも展開していく。これまでグローバルで1500以上のNGOやNPOに対してサイバー攻撃保護サービスを無償提供してきた「Project Galileo」、新型コロナワクチン接種の予約サイトを大量アクセスから守る「Project Fairshot」の展開を本格化する。
なお後者のProject Fairshotについては、クラスメソッドが2021年3月から国内の自治体や医療機関、協力企業向けに提供を開始している。今回、両社はあらためて戦略的協業を強化することを発表し、クラスメソッドでは2022年4月からCloudflare Galileoの提供支援も行うとした。
なおCloudflareでは今週、オンラインイベント「Security Week 2022」を開催しており、新サービスや機能拡張を連日発表している。米国時間3月14日には、Area 1 Security社の買収に伴うメールセキュリティサービス拡張のロードマップを発表した。翌日には、インパクトが大きい脆弱性に対するWAFの保護機能をすべてのCloudflareプランに対して追加費用なしで提供することも発表している。