前回はインテルのInvestor Meetingの内容から、主にプロセスの話題のみをまとめて説明したので、今回は製品の話題を取り上げたい。ほとんどはCPUの話だが、若干GPUの話も入る。
2024年にArrow LakeとLunar Lakeを投入
Raptor LakeはLGA1700で供給
まずクライアント向けから。下の画像は先週も示したが、2024年にArrow Lakeが投入されることが明らかになった。

Arrow Lake。このスライド、左側が重要である。売上の伸びそのものは1桁%台の前半、というのは市場が成熟化しているのと、AMDとの争いの激化は今後も続く(ので売上を伸ばすのは容易ではない)と判断している結果と思われる
クライアント向けにはさらにLunar Lakeが2024年以降(現実問題としては2025年以降だろう)が予定されていることがスライドから明らかになった。
おもしろいのはMeteor LakeとArrow Lakeで、Meteor LakeがIntel 4、Arrow LakeがIntel 20Aであるが、ここに“External N3”が入っていることだ。つまりIntel 4に関してはともかく、Intel 20Aに関しては場合によっては量産時期が後ろにスリップする、あるいは歩留まりの問題などで十分に供給できない可能性があることを認めたうえで、Arrow LakeはTSMC N3で製造する可能性がある(少なくとも現時点ではそのオプションを予定している)ことが明らかになった。
同様にLunar Lakeないしその先の製品に関しては、Intel 18Aないし外部(TSMC N2あたりだろうか?)をオプションとして想定するとしている。こちらについては、Intel 18Aが遅れる/歩留まりが低い場合、というケースは当然あるだろうが、それ以外にIntel 18AのIFS(Intel Foundry Service)での要求が高すぎて供給が間に合わない、という可能性もあるのかもしれない。
それはともかくとして、今回Raptor Lakeに関してもう少し情報が公開された。Raptor LakeとAlder Lakeの互換性に関しては連載649回でインタビューの形で確認したが、今回明確にSocket Compatibleと言明されたのは、現在LGA1700マザーボードを保有するユーザー(含筆者)には一安心である。
まだRator Lakeの詳細は明らかではないが、“Up to 24 cores & 32 threads”ということは、P-Core×8+E-Core×16で、E-Coreは引き続きシングルスレッド構成だと思われる。
謎なのが“AI M.2 Module”である。額面通りに受け取れば、SSD用とは別に、AIアクセラレーター用のM.2モジュールが提供されるということになる。
インテルは2016年にMovidiusを買収、Neural Compute Stickと呼ばれるUSB Stickタイプのアクセラレーターをリリースしており、この新バージョンは現在も発売中であるが、ここに搭載されるMyriad X VPU(Vision Processing Unit)も引き続き生産中である。
PC用というよりは組み込み用途に広く使われており、そのためにはむしろM.2の方が使いやすいということで、パートナー企業のAAEONからAI Core XM 2280という製品がリリースされ、これがけっこう広く使われている。インテルが改めてM.2タイプの製品を出すのか、それともAAEONから仕入れて提供するのかはわからないが、現時点で一番可能性が高いのはこのMyriad X VPUベースということになる。
もっともインテルはIce Lakeの世代から独自のGNAというAIプロセッサーを搭載しており、この後も引き続き改良を行っていたはずだが、性能向上の頭打ちがあったのか、それともアーキテクチャーを統合するつもりなのか。いずれにせよRaptor Lakeの世代でこのあたりに変更があるようだ。

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