2022年1月、「ハリウッド外国人映画記者協会」の会員投票によって選定される、年初の大型映画アワード「第79回ゴールデングローブ賞(以下、GG賞)」において、濱口竜介監督作『ドライブ・マイ・カー』が非英語(外国語)映画賞に輝いた。同賞を日本映画が受賞したのは、実に62年ぶりの快挙となる。同作は、2021年の「カンヌ国際映画祭」で日本映画史上初の脚本賞を受賞し、『おくりびと』以来14年ぶりの「アカデミー賞」外国語映画作品賞も見えてきた。そこで今回は、Rakuten TVで配信中の、過去に海外映画賞・映画祭を沸かせたおすすめ日本関連映画7選を紹介!
GG賞は、第二次大戦中の1944年に第1回が開催された。日本人の初ノミネートは1957年、京マチ子がダニエル・マン監督の『八月十五夜の茶屋』で主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)の候補に上がったことによって実現。彼女は1960年に外国語映画賞を受賞した市川崑監督の『鍵』でも主演を務めた。そんなGG賞関連では、以下の4作品をおすすめ。
2003年に渡辺謙が助演男優賞にノミネートした、エドワード・ズウィック監督『ラスト サムライ』。まさに“国際派俳優、ケン・ワタナベ”誕生の現場に立ち会っているような気分になる作品だ。英語は後年の方がはるかに流ちょうであるように聞こえるが、そのセリフ回しは“アメリカからやってきた元・国軍士官の間に、不思議な友情を少しずつ築いていく寡黙な領袖”というイメージにぴったり。
そして、2007年に外国語映画賞を受賞したクリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』。日本敗戦にまた一歩近づいた出来事を、米映画界のアイコンであるクリント・イーストウッドが映画化。彼が“ケンカ両成敗”という言葉を知っているかは不明だが、どちらの国の映画ファンの気持ちも考えつつ、非常に注意深く描かれた作品との印象を受ける。
また、2019年には外国語映画賞に是枝裕和監督『万引き家族』、アニメーション映画賞に細田守監督の『未来のミライ』がそれぞれノミネート。いずれも“常に次回作が待たれる”日本映画界有数のヒットメーカーによる名作だ。
2月になると、映画ファンの視線はアメリカ西海岸からドイツへ。国際映画製作者連盟(FIAPF)公認「ベルリン国際映画祭」が始まる。来場者数50万人、上映本数は400本にものぼる、世界最大級の映画フェス。2021年には濱口監督が『偶然と想像』で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した。こちらは次の3作品を紹介する。
1959年に銀熊賞(監督賞)を受賞した黒澤明監督『隠し砦の三悪人』。ダイナミズムみなぎる描写、太陽光を巧みに用いたモノクロ画面が約140分を一気に魅せる。決して職人肌ではない三船敏郎、達者な千秋実が勢いをみなぎらせ、短期間で第一線を退いた上原美佐の生硬さも光り輝く。
その他、寺島しのぶが若松孝二監督『キャタピラー』(2010年)で、黒木華が山田洋次監督『小さいおうち』(2014年)で銀熊賞(女優賞)を受賞している。円熟の境地に達した監督が第二次世界大戦中の日本人家庭に題材を取り、(『キャタピラー』は不随で帰ってきた“軍神”とその妻とセックス、『小さいおうち』は戦前戦中/現在の対比+不倫)、それが我が国の枢軸国仲間の一つであったドイツで入賞したことは偶然とは思えない。
ラスト近くに狂気の大笑いを見せる寺島、後ろ髪ひかれる思いでそっと奉公先を去る黒木。戦時中、肉体的に死んだのは男性が多かったのかもしれないが、よほど精神的に何度も殺されたのは女性ではなかったか、と思いをめぐらせた。
いずれもRakuten TVで配信中なので、2月10日(木)開幕の「第72回ベルリン国際映画祭」、そして3月28日(月)の「第94回アカデミー賞授賞式」へ向けておさらいしてみては?