効率化・省人化だけじゃない、デジタル活用による宿泊業の新しい価値を提案
HCJ2022の注目企画「宿泊業のスマート化研究会」
提供: 日本能率協会
2022年2月15日(火)~18日(金)、ホスピタリティとフードサービスの商談専門展「HCJ2022」が東京ビッグサイトで開催される。注目は、先端技術を活用した宿泊業の在り方を考える産学連携のプロジェクト「宿泊業のスマート化研究会」の企画展示だ。2020年の研究会発足以降、実際の宿泊施設でのさまざまな実証実験を経て、ブースでは多様な技術での活用シーンが体験できる内容となっている。本企画を立ち上げた一般社団法人日本能率協会の川口 剛生氏、研究会ファシリテーターを務める東洋大学准教授 徳江 順一郎氏、宿泊業代表として東急リゾーツ&ステイ株式会社の石橋 剛氏、メーカー代表としてソニーマーケティング株式会社 光成 和真氏の4名に、研究会の取り組みについて伺った。
宿泊業とメーカー、両方の立場から新しいソリューションを考える 「宿泊業のスマート化研究会」
HCJは、国際ホテル・レストラン・ショー、フード・ケータリングショー、厨房設備機器展の3つの展示会を合わせて、業界の情報交換・交流促進を目的として毎年開催されている。コロナ禍でサービス産業が落ち込むなか、従来からの人手不足や生産性向上に加えて、非接触という新たな課題が発生し、解決するためのデジタル活用は必須だ。
今回のHCJ2022では、これらの問題解決へ向けたソリューション提案として、産学連携プロジェクト「宿泊業のスマート化研究会」のブースを出展する。企画を立ち上げた川口氏に、研究会を発足した背景と展示の見どころを聞いた。(以下、本文敬称略)
川口 2019年にHCJで人手不足・生産性向上がテーマの「サービス産業向け次世代技術EXPO」という企画展示をスタートしたのが背景にあります。当時は、調理ロボット、配膳ロボットなど、ロボティクスの活用をテーマにした展示が中心でした。
2020年2月以降はコロナの影響もあり、宿泊のオペレーションや運用にデジタル活用のニーズが急拡大したものの、現場からは「どこから始めればいいのかわからない」という声が多く聞かれました。他方でメーカー側も個社での販路開拓には限界があると感じており、現場の課題と各メーカーのソリューションを組み合わせて、「宿泊業の本質的な課題を見直す機会を持つべきでは」と2020年9月に「宿泊業のスマート化研究会」を発足しました。研究会スタイルとし、より幅広い知見を得るため、東洋大学の徳江先生にファシリテーターをお願いしました。
川口 2021年2月のHCJでは初の展示を行い、各メーカーのソリューションを現場に近い形で見せることができたのでは、と感じています。4月には新メンバーも加わり、月1回の研究会、無人経営のホテルなどフィールドワークでスマート化の先端事例の視察を行い、サービスの価値向上へどのような技術が生かせるかの議論や実証実験を重ねていきました。今回のHCJ2022では、研究会から生まれた新しいソリューションや商品も展示する予定です。
宿泊業・飲食業は、コロナ禍で大きな打撃を受けている一方で、これを機に新しい挑戦を深めていこうという企業も多くいます。特にスマート化はユーザーが求める声が大きいので、異業種から新規参入も増えてきました。ユーザーのニーズも多様化し、個社のソリューションでは解決できない課題に対しては、例えばシステム系の企業とトレーラーハウスがタイアップするなど、複数社でコラボする例も生まれています。
従来の業界におけるデジタル活用は、省人化、省力化、生産性向上といった文脈が大半を占めていましたが、観光庁は観光業の高付加価値化を推進しており、マイナス要素を減らすのではなく、プラス要素を増やしていくソリューション展開へと変化してきています。加えて、2022年4月から施行されるプラスチック資源循環促進法に対するSDGs関連のソリューション、2025年の大阪万博へ向けて、インバウンド対応のソリューションなどへと広がっていくと予想しています。事例を世に発信できる基地として、宿泊業とメーカーとの新しい出会いのコミュニティとしても運用していきたいです。