気持ちいい業務はデジタルになっている コープさっぽろ長谷川氏がメルカリで感じたDXのカギ
おしえてDX!これを聞けば社内でDXが正しくはじまる DXってほんとに必要? 協同組合もIT企業もバッサリ斬る! | NoMaps Conference 2021
2021年10月に開催された「NoMaps2021」より「さくらインターネット Presents おしえてDX!これを聞けば社内でDXが正しくはじまる DXってほんとに必要? 協同組合もIT企業もバッサリ斬る!」と題して開催されたカンファレンスについてお伝えする。
本カンファレンスでは、生活協同組合コープさっぽろ CIOの長谷川秀樹氏と、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長/最高経営責任者の田中邦裕氏が登壇し、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関して議論が交わされた。モデレーターはNoMaps事務局の佐藤みつひろ氏が担当した。
まずはじめに、今回参加した両社にオンラインメディアプラットフォームのNoteで展開しているDXに関する投稿について、その意図が尋ねられた。
田中氏は、「ITの導入段階を勝手に雑く3段階に分けてみた」と題した記事を投稿しており、一時大きな話題となった。この投稿を田中氏が行おうと思ったきっかけは、DXという言葉が流行り始めた頃に、DXをはき違えている人が多かったからだという。
「DXがバズったときに、文書をPDFにしようとか電子メール使おうということが言われていて、そういうのはDXとは違いますよ、という印象がありました。そういうのは第1段階目で、今求められているのは、API連携などによって、デジタルでなければできないことを進めることであって、アナログだったものをデジタル化するだけのでデジタライゼーションではない、そういうことを伝えたかったんです。」(田中氏)
例えばANA(全日本空輸)では、API連携で変動制運賃の航空券とホテルをその場で組み合わせて販売するというシステムを稼働させているが、これこそデジタルでなければできない新しいビジネスであり、本当のDXの姿であると田中氏は指摘しつつ、「DXが出てきた頃、全ての企業がIT企業になる、というようなことが言われていた。その本質は、IT企業のエンジニアリング組織のようなものが全業界に伝搬していくようなものだと思う。DXとは、楽しく、しかしながら効率的な働き方にしよう、そういうものだと思う」と述べた。
同様に長谷川氏も、NoteにコープさっぽろDXを始めた経緯について投稿している。この意図について長谷川氏は、「DXの話をすると、あなたのところだからできるんでしょ、ベンチャーだからできるんでしょ、と言われる。でも、コープさっぽろのような3000億円企業で歴史が50年ほどある企業でも変われる、ということを伝えたいために、記事掲載を始めた」と説明した。
長谷川氏は、コープさっぽろのCIOに就任する前はメルカリの執行役員として働いていた。そのメルカリにおいて長谷川氏は、入社して内部で働き、退社するまでの全てのプロセスが、とても合理的で気持ちがいい、ということに気が付いたという。そして、そういったことはエンタープライズ企業でもできると考えて、コープさっぽろに加わった。
コープさっぽろでは、SlackやGoogleワークスペースなどを広く活用しているそうだが、それは気持ちよく業務をこなすためにはどうすればいいかを考えて使っているという。「気持ちのいい業務はどういうものかと考えると自然にデジタルになっている。気持ちよく生産性良く働く環境を実現することが優先で、デジタルはその次」(長谷川氏)であるとし、単に文書などをデジタル化するだけだったり、デジタルツールを使うことが目的になってはいけない、と指摘した。