ITとデザインの視点でフードロス削減を考えるアイデアソン<イノラボ×多摩美>

文●石井英男、ASCII編集部

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競争ではなく共創のアイデアソン

 アイデアソンのテーマは「2025年に実現するフードロス削減のためのアイデア」。本番に先立ち、アイデアソンに参加する多摩美術大学の学生を対象に、2回事前レクチャーが行なわれている。

 1回目は「背景とフードロスの現状について」というテーマで、イノラボや多摩美術大学、フードエコロジーセンターの高橋氏によって講義が行なわれた。続いて2回目は、「フードロスや廃棄への意識調査、賞味期限について」というテーマで大正大学の岡山教授が、「フードロス削減対策と実態、海外との比較について」というテーマで帝京大学の渡辺教授が、それぞれ講義を行なっている。

フードエコロジーセンター 高橋巧一CEO

大正大学 岡山朋子教授

 アイデアソン参加者は、多摩美術大学の学生20名とISID(イノラボ、UXデザインセンター(UXDC)、エンタープライズxRセンター(EXRC))メンバー11名。高橋氏、大正大学の岡山教授、帝京大学の渡辺教授、イノラボ藤木氏がメンターとなり、アドバイスを行なった。

 一般的なアイデアソンでは、一つのテーマに対し、メンバー各自がそれぞれアイデアを考え、競争のように発表する形式が多いが(途中でチームビルディングをする場合もある)、今回のアイデアソンは、フードロスで重要となる「市民化」「過剰」「継承」「期限」「調達」という5つの切り口でアイデアを募る形。いわば共創的な形式を提案したのは多摩美術大学側だったという。

 事前レクチャーの際にアイデアシートが学生に配布され、当日までにアイデアを考えてくるという「宿題」も出されていた。その際、自分はどの切り口でアイデアを考えるかというグループに分けられており、当日は各自が持ち寄ったアイデアをグループ内で共有、ディスカッションして、1つの切り口に対して有望なアイデア2つに絞り込み、そのアイデアにITの視点を組み込んだり、メンターによるアドバイスを受けながら資料を作成し、チームごとにプレゼンテーションをするという流れとなっていた。

 今回、プロジェクトオーナーとして活動を推進し、アイデアソンにも参加したISIDオープンイノベーションラボの安崎郁生氏は、今回のアイデアソンの手応えについて、次のように語った。

 「今回は参加者が事前に考えてきたアイデアを持ち寄る形式にしました。これにより、”なんとなく思いついた”アイデアではなく、参加者の課題感にしっかりと紐づいたアイデアが集まりました。私たち『過剰』チームでは、例えば『過剰品質を求める私たちの意識を変えられないか?』や、『コンビニの棚を商品で全部埋めなくちゃ! という意識が過剰仕入れにつながっているのでは?』など、人の深層心理を考慮した上でアイデアを出すことができました。1日という限られた時間でそこまで深掘りできたのは良かったです」(ISIDオープンイノベーションラボ安崎氏)

ISIDオープンイノベーションラボ安崎氏

 そして、イノラボで数多くのプロジェクトでUI/UXを担当し、多摩美大学出身同学であり同学の「すてるデザイン」プロジェクトを最初に企画した澤畑氏も、「デザイン系の方々には、アイデアを飛躍させることができるという期待を持っています。今回のアイデアソンのやり方は、事前に考えたアイデアを持ってきていただいて、そこからのスタートという手法をとりました。その時点で、わりと「おっ」と思う、我々では出てこないようなアイデアがいくつか出てきていて、それを集約して議論をしています。そういった意味では、IT技術といったところもありながら、突飛なアイデアとの結びつきは、今回初めて得られたかなと思っています」と語った。

 メンター役として参加していたイノラボの藤木氏は、多摩美術大学とのアイデアソンについて少し懸念もあったという。

 「アイデアにIT要素が含まれるのか少し心配していましたが、出てくるアイデアを見ると、みんなITの活用を想定しており、うまく融合されているので、非常によかったと感じています。あと、今回、メンターにフードロスに関する専門知識を持たれた方々に参加をいただいてますけど、フードロスという現実課題を起点として、未来思考であるテクノロジーが結びついていた発想が生まれてきたので、その点もデザイン思考が効果的に作用していると感じました」(イノラボ藤木氏)

グループごとに2つのアイデアを発表

 各グループは学生4名+ISIDのメンバー2名の計5チームで編成された。それぞれのグループは、大きな紙にポストイットを貼ったり、絵を描いたり、Macを使ったり、さまざまな方法で活発なディスカッションを繰り広げた。午前中にアイデアを2案に絞り込み、昼食後はメンターによるアドバイスを含めたブラッシュアップに時間が費やされた。プレゼンテーションが行なわれたのは夕方16時25分からだ。

 プレゼンテーションに与えられた時間は各グループ10分程度。その後メンターが講評を行なった。

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