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クラウドDWH+Tableauを展開、3000ものダッシュボードで「現場従業員のやりがい」向上も

「データは社内コミュニケーションの大切な道具」グッデイ・柳瀬社長に聞く

2022年01月20日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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データは現場従業員の「やる気向上」にもつながる

 もうひとつの効果が「現場従業員のモチベーション向上」だ。

 冒頭でも引用したとおり、柳瀬氏は、グッデイを成長させるためには現場従業員の「行動」を変えなければならないと考えている。しかし、行動を変化させた成果が具体的に個々の従業員に見えなければ、行動を変えるモチベーションも長続きしないだろう。

 「全店舗をまとめた数字しかなければ、従業員個人が努力した成果までは見えず、手応えがありませんよね。しかし現在はデータ分析環境があり、店舗単位、部門単位、商品単位まで数字が見られ、何かやってみた成果はどうだったのか、目標を達成できたかどうかも一目瞭然です。データが従業員の行動を変える、業務を変革する力になっています」

 ダッシュボードの中には、Googleマップ上の各店舗に対する評価や口コミコメントのデータを収集し、可視化するものもある。このデータからは、来店客の多くが特に「品揃え」や「店員の接客態度」などを重視していることがわかり、現場従業員が行動を変えていくモチベーションにもつながっているという。

 「こうしてお客様の評価やコメントを可視化することで、従業員の側にも『お客様はちゃんと見ている』という意識が働くようになり、接客などの行動が変わります。それによって実際に各店舗の評価スコアも少しずつ改善されて、さらなるモチベーション向上につながっています。わたしが『お客様には親切にしましょう!』と繰り返し言うよりも、こうして実際のデータで示したほうがずっと改善効果は高いでしょうね(笑)」

 ちなみにグッデイではこの2年間ほど、小売業の平均を上回る好調な業績を達成できているという。柳瀬氏は「こうした成果は、現場でのちょっとした工夫と改善の積み重ねから生まれたとしか考えられません」と笑顔を見せる。

Googleマップ上でついた口コミコメントも収集、分析、可視化を行い、各店舗における業務改善に活用している

パンデミックを通じてあらわになった企業間の格差

 Tableauでは2021年10月、日本を含む9カ国を対象としたビジネスリーダーの意識調査結果を発表している。同調査によると、パンデミックがコミュニケーションに与えた影響を好意的にとらえているリーダーは、グローバルでは37%に達した。その一方で、日本のリーダーでそう考える回答者は26%にとどまっている。

 さらに日本企業の中でも意識差が生じている。パンデミックを機に社内でのデータ活用を増やしたリーダー(55%)は、増やしていないリーダー(16%)の3倍以上、「コミュニケーションの肯定的な改善」を認識しているという。

 この調査結果について、Tableauの佐藤氏は、パンデミックを通じて企業間の“格差”があらわになったものだと指摘する。

 「Web会議などのオンラインコラボレーション環境があるか、データ分析の基盤やツールが整っているか、そしてリーダーがデータに対する知見/知識/信念を持っているかどうか――。こうした違いによって、パンデミック下でも質の高いコミュニケーションができているかどうかに大きな格差が出ています」

Tableau 佐藤氏

 先の見通せない不確実な時代となった現在、データに基づく意思決定が重要であることを認識する企業は増えていると、佐藤氏は語る。「残念ながら日本ではまだ、データに基づいて議論し、意思決定するカルチャーになっていない企業が多い。ただし、それを変えなければならないという風潮は出てきています」。

 グッデイ柳瀬氏が指摘したデータを可視化することの重要性について、佐藤氏は「データだけではなかなかストーリーが見えない。データをビジュアル化することでストーリーが見えてきます」と述べ、ストーリーが見えることで従業員が興味を持ち、新しい行動につながることを説明した。

 「多くの企業で、データを当たり前のスキル、当たり前の知識にしたいという話が出てくるようになりました。組織内で“当たり前”のレベルになれば、データを活用したコミュニケーションももっとスムーズに、インパクトフルに、効率的に行えるようになるはずです」

* * *

 柳瀬氏は、グッデイが「いつの間にかデータドリブンなカルチャーになっていました」と述べる。それは、以前の社風からは考えられない「すごく意外な」変化だという。

 「TableauやGoogle Workspaceを導入する以前の弊社は、社内からWebも見られない、メールもあまり使わないような環境で、むしろ変化には抵抗する雰囲気が強かったように思います。それが今では変化に対して前向きな雰囲気になり、『データ分析に興味あります』という従業員も出てきて、それぞれの立場で積極的に分析を始めています。会社がここまで変わるものかと、すごく意外に思っています」

 その変化にはさまざまな要因があると考えられるが、筆者はトップ自身が「データを使って話す」ことを心がけ、実践していることが大きく影響しているのではないかと感じる。

 インタビュー中、柳瀬氏は「自分は精神論のような言葉の力で会社を引っ張っていくのが苦手なので、データの力を借りています」と笑っていたが、データ=ファクトを重視するその姿勢が、従業員からの会社や経営層に対する信頼や、自分の働きが公平に評価されるという期待を高める結果につながっているはずだ。とかく「データドリブンなビジネス」というと「正しい経営意思決定に資する」という点だけに注目が集まりがちだが、それ以外にも大きなメリットがあることを実感した取材だった。

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