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クラウドDWH+Tableauを展開、3000ものダッシュボードで「現場従業員のやりがい」向上も

「データは社内コミュニケーションの大切な道具」グッデイ・柳瀬社長に聞く

2022年01月20日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「会社を成長させるためには、およそ1500人いる従業員全体の行動を変えていかなければなりません。それを実現する『コミュニケーションの道具』として、データは大切なものだと感じています」(グッデイ 柳瀬隆志氏)

 九州北部を中心にホームセンター64店舗を展開するグッデイ(GooDay)。同社社長の柳瀬隆志氏は、クラウドデータウェアハウス(DWH)とBIツール「Tableau」で構成されるデータ分析環境を導入したことで、データに基づく意思決定の実現だけでなく「ビジネスコミュニケーションの改善」や「現場従業員のやる気向上」といった効果も得られたと語る。

 “データに基づいて話す”ことで会社や従業員はどう変わりうるのか。グッデイの柳瀬氏とTableauカントリーマネージャーの佐藤豊氏に話をうかがった。

グッデイは九州北部地域を中心に展開するホームセンターだ(写真は久留米野中店)

(左)グッデイ 代表取締役社長の柳瀬隆志氏。グループ親会社である嘉穂無線ホールディングスの代表取締役社長も務める。(右)Tableauカントリーマネージャーの佐藤豊氏

データに基づいて「誰が見ても正しい意思決定」がしたい

 福岡市に本社を置くグッデイは、福岡県、大分県、佐賀県、熊本県、山口県に64店舗を展開するホームセンターチェーンだ。DIY用品やインテリア/エクステリア製品、園芸用品や植物、カー用品など幅広い商品を取り扱っており、年間売上高は約324億円(2020年3月)、従業員数はパートスタッフを含めおよそ1500名に及ぶ。

 前述したデータ分析環境をグッデイが構築したのは2015年のことだ。実は、それ以前の同社では「データは大量にあるものの、データ活用はできない状態だった」と柳瀬氏は振り返る。

 「弊社では1990年代にPOSを導入し、そのデータを蓄積するデータベースは自社構築しています。ただし、それを分析したい場合はまずシステム部にデータ抽出作業を依頼する必要があり、フレキシブルなデータ分析ができる環境ではありませんでした」

 全店舗、店舗ごと、商品部門ごとの売上データを集計した定型レポートは、システム部が組んだExcelマクロを使って日次で提供されていた。しかし、この定型以外の分析をしようとすると、個別にデータ抽出作業が必要だった。自身でデータ分析したいと考えた柳瀬氏が「こういうデータが欲しい」と依頼したところ、「準備が必要なので3週間ください」と言われたこともあったという。

 「しかも『必要なデータの集計期間や、日次、週次、月次といった粒度を先に指定してほしい』と言われました。その理由はわかるのですが、どういう切り口で見れば答えが出るかわからないからまずデータを分析したいのに、矛盾してますよね(笑)。じゃあいいです……とやる気をなくしてしまいます」

グッデイ 柳瀬氏

 さらに、定型レポートも大量の数字だけが表形式で並ぶ「数字の羅列」であり、これも円滑なビジネスコミュニケーションを妨げる課題だった。見慣れていないスタッフは表のどこを見ればよいのかもわからないし、見方がわかるスタッフでも、ある項目の数字が前期比で上がった、下がったという程度の理解しかできない。

 たとえば毎月の店長会議では、全店舗ぶんのデータを含む100枚以上のレポートが紙資料として配付されていたが、「すべての数字はとても見られませんし、データの『意味』をつかめていませんでした」と柳瀬氏は語る。

 「こうなると、せっかくデータを示しても結局は『社長がこう考えているから』『商品部長がこう言っているから』などと“誰かの意見”として社内に伝わってしまいます。そうではなく、データというファクトに基づいて『誰が見ても正しい判断』ができるようにしたいと考えていました」

クラウドDWH+Tableauを導入、社内勉強会を経て全社展開

 転機となったのは、システム部がクラウドDWHの「Amazon Redshift」を試行的に導入したことだ。POSなどの業務システムと切り離した分析環境を用意したことで、業務システムの稼働に影響を与えることなくデータ分析ができるようになった。ここからDWHに接続して分析を実行するBIツールの検討を進め、複数の製品の中からTableau Desktopを選択、2015年4月に導入した。

 「Tableauというツールがあるという話を聞き、自分で試用版をダウンロードして使ってみました。正直、慣れないうちはとっつきにくい感じもしましたが、幅広く使えそうだという感触が得られたので、わたしと経営企画部やシステム部のメンバー5名ほどで分析チームを作り、データ分析の社内勉強会を始めました」

 勉強会ではTableauの扱い方を習得するだけでなく、高度なデータ分析もできるように統計やSQL、Python、Rなどの書籍を読み込み、たとえば「このサンプルプログラムを応用すればやりたいことができる」「Rを使えばバスケット分析が簡単にできる」といったことをひとつずつ学んでいったという。

 その後1年間ほどかけて、さまざまな部署のメンバーおよそ10名でTableauを使い込み、グッデイの持つデータで分析ができるのか、スピードや使い勝手は十分かといったことを検証。問題ないと判断し、2年目からはバイヤーや店長などにも公開して、本格的にデータ分析と活用をスタートさせた。社内全体へのダッシュボードの共有には、安価に使えるSaaS版の「Tableau Online」も利用している。

 柳瀬氏は「Tableauを導入して衝撃的だったのが、これまでデータ分析だと思っていたことが、実は分析ではなかったこと」だと語る。

 「これまで自分が『分析』だと考え、多くの時間を割いていたデータの収集や集計といった作業は、Tableauを使えば一瞬で終わってしまいます。そして、そのデータをいろいろな角度から柔軟に見ることができるようになる。いつの間にかそんな時代になっていたことに、すごく衝撃を受けました」

 また、社内展開の当初は「これまでのExcelのほうが慣れている」という声もあったが、移動合計によるトレンド変化の把握などExcelでは実現が難しいことがTableauでは簡単にできることを実際に見せ、納得してもらうことに努めたという。

 「最初の段階から、Tableauやデータ分析に詳しい人材を各部署に作っておいたのも良かったと思います。各部署で分析したいデータがあれば、システム部に任せるのではなく部署内の詳しい人に相談し、ダッシュボードのプロトタイプを作ってみる。その数字が正確かどうかを検証しつつ、部署内で共有する。現在はそういう流れができています」

 こうして各部署での自発的な活用が進んだ結果、グッデイ全体では現在、およそ3000ものダッシュボードが共有されているという。なお、2020年9月にはクラウドDWHをAmazon Redshiftから「Google BigQuery」に移行し、現在はBigQuery+Tableauという構成になっている。

グッデイが構築したデータ分析環境の概要。社内のデータだけでなく外部データもクラウドDWHに収集、蓄積、集計し、Tableauで一元的に分析できるようにしている

ビジネスコミュニケーションをデータで改善する工夫

 データを“数字の羅列”ではなくビジュアライズして示すことで、誰でも簡単に「データの持つ意味」がつかめるようになったと柳瀬氏は語る。

 「『誰が見ても正しい判断』をしたいと言いましたが、Tableauを使ってみて、結局それは『データの可視化』をすることだったのだと気づきました。考えていることを言葉で説明するよりも、データを視覚化して見せたほうが伝わりやすく、ビジネスコミュニケーションを改善する効果は大きいと感じます。さらに、会議の場で議論をしながらTableauでスピーディに集計や分析ができるので、データが不十分だからといって『今日はいったん持ち帰ります』ということもなくなります」

 2019年末からのパンデミックによって消費者行動が大きく変化した際にも、こうしたデータ分析環境を整えていたことで変化の「意味」を読み解くことができた。

 「お客様は状況の変化にとても敏感です。商品部門別の売上変化を見ると、たとえば2020年の2月には『ティッシュペーパーがなくなる』といううわさが流れて日用品が急激に売れていますし、ゴールデンウィークの5月ごろにはレジャー用品のほか、ステイホームのための園芸用品、工具などが売上を伸ばしました。このように、データからは日々変化するお客様の動きが具体的に見えてきます」

パンデミック後の商品部門売上変化。社会の状況変化に応じて売上は大きく変化する

 店舗所在地の自治体が発表している感染者数データをTableauに取り込み、来店者数推移との比較も行ってみたという。その結果、地域の感染者数が増えれば来店者数が減るという影響が明らかになったため、現在は店長会議で最新の感染者数データやワクチン接種率データ、繁華街の人流データなどを共有するようにしている。

 「(POSや来店者数といった)店頭のデータだけを見ていても、そうした変化の理由はわかりません。世の中のデータも取り込んで一緒に分析することで、その理由が見えてきます」

 同社ではGoogle Workspaceも導入しており、こうしたデータ分析結果に対して現場で感じる変化についても各店舗からフィードバック/共有してもらい、データの意味をより具体的に理解していくことに努めている。

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