第4回 and SORACOM
あらゆるアウトドアスポーツをエンタメに そしてデータドリブンな競技を
水上スポーツのリアルタイムな位置表示を実現する「HAWKCAST」とSORACOM
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水上スポーツにおいて精度の高い位置情報をリアルタイムにトラッキングできるN-sports tracking Labの「HAWKCAST」。ウィンドサーフィンを上達したいという思いでセンサーデバイスとサービスを作った創業者の横井愼也氏に、起業に至るまでの経緯とHAWKCASTの開発背景について聞いた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)
ウィンドサーフィン上達のために作ったトレーニングセンサー
HAWKCASTはおもに水上スポーツ大会において、選手の位置情報を収集するためのサービスだ。選手には専用デバイスを装着してもらい、位置データをリアルタイムに収集。そのデータを元に、肉眼ではわかりにくい水上スポーツのレース状況を大型モニターに放映し、観戦を盛り上げることができるという。
N-sports tracking Labの横井愼也氏がこうしたサービスを作り始めたのは、もともとは自らの趣味であるウィンドサーフィンを上達させるためだった。知人からボードを譲り受けたのをきっかけに、横井氏がウィンドサーフィンを始めたのは、東日本大震災後に転勤で鎌倉に移り住んでから。昔からマリンスポーツ好きで、船舶免許も持っているくらいの横井氏だが、譲り受けたボードが上級者向けだったこともあり、ウィンドスポートに関してはコーチについて習うことにしたという。
しかし、ウィンドサーフィンの指導はアナログで、昭和の雰囲気が抜けないもの。IT企業勤務の横井氏には合わなかったという。「コーチからは『マストを立てて、引き込め!』とか言われるんですけど、どこまで立てて、どの程度引き込めばいいのかわからなかった。だから、正しい乗り方をデータや数値から導き出せないかと思っていました」と横井氏は振り返る。
こうした経緯から今から約5年前に生まれたのが、帆の動きやスピード、針路などのデータを収集するトレーニングセンサーとデータを可視化するアプリだ。ウィンドサーフィンを始めた直後に大きな事故を起こし、首頸椎ヘルニアで左半身が麻痺していたときに作ったという。「陸上にいながら、なんとかウィンドサーフィン上達できないかなあと考えて作ったのがこのデバイス」(横井氏)とのことで、すごい執念だ。
ウィンドサーフィンは中級者でも50km/h、ギネス記録だと100km/hという速度が出るようなスピード競技。そして、スピードを出す選手のプレイを見てみると、帆がほとんど動いていないという特徴があるという。「プロの選手の動画を見てみると、安定した状態で速度を上げているんです。だから、安定する傾きがどの程度かわかれば、正解となるポジションに近づけるトレーニングができると考えました」(横井氏)と語る。
実際、横井氏は自ら作ったセンサーでトレーニングを重ねた結果、平均で40km/hだった速度が50km/h後半にまで上がったとのこと。「ウィンドサーフィンで10km/h上がるのって、80km/hだった車が200km/hで走るくらいのインパクトなんです。風の力だけで風よりも速く走れるわけで、感動も大きかった」と横井氏は振り返る。
ウィンドサーフィンで位置トラッキングを実現する難易度とSORACOM採用の背景
こうして、あくまで「個人の趣味の延長上」でウィンドサーフィンのトレーニング専用センサーを作っていた横井氏だが、その後、日本ウィンドサーフィン協会が製品化前提で応援してくれることになった。また、当時勤務していた大手メーカーにおいても、イノベーションの創出が大きなテーマとなっており、IoTソリューションとして事業化への道が開けた。
転機になったのが、横須賀の津久井浜で2017年から継続開催されていたウィンドサーフィンのワールドカップだ。ANAや京浜急行など大手企業がサポートにつき、しかも5年間に渡って開催される大きな大会だが、観戦には大きな課題があったという。「陸地から見えないくらい沖で競技をやるので、初年度は運営メンバーすら試合の状態を把握できていませんでした。そこで2年目に選手の位置情報をなんとかリアルタイムに把握できないかという話がウィンドサーフィン協会から来たんです」と横井氏は語る。
ウィンドサーフィンはその競技の性格上、位置トラッキングの難易度がきわめて高い。風や波によって、スタートやゴール位置、開始時間まで刻一刻と変わっていくからだ。「風の状態によっては、いつまで経ってもレースが始まらないし、場合によってはレース開始してからコースや距離が変わることがあります。時間も位置もコースもすべてが変数」と横井氏は語る。既存のスポーツとはずいぶん性格を異なっているのだ。
めまぐるしく変わる競技で利用できる位置トラッキングソリューションとして再設計すべく、必要になったのがSORACOMの通信機能だった。最初に使ったのは通信デバイスの「WioLTE」で、計測したデータをクラウド上にアップロードしている。デバイスのファームウェアに通信先の情報を格納するためにはSORACOM Beamを使っており、プロトコルの差異が吸収されるため、大会ごとに異なる仕様でも迅速に対応できるという。
SORACOMを選択した理由を聞くと、「やはりネームバリューです。交換機の機能をクラウドで実装したSORACOMのことを聞いて、当時とても驚きました。コストもリーズナブルだし、1台から始められるし、エンジニアのブログもよかったので、困ったときにいろいろ教えてくれそうだなと思いました」(横井氏)。SIMだけではなく、ソラコム自体のトータルの技術力の高さが印象的で、将来的に困りそうなところが障壁にならない予感があった。特に評価している点を聞くと、「SIMを送ってくるのがとても早いところ(笑)」というコメントだった。
現在利用しているグローバルSIMは基本料の請求を止めておけるというのがメリットだという。「われわれのような超短期利用のスタイルだと、大会があるまではSIMはお休みしたい。大会が決まったらオンにすればよいので、維持費がかからないのがありがたいです」と横井氏は語る。
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